2015.03.28

「全26話の中でも屈指の完成度、めずらしく図にしてみます。あと小ネタの回収など」

カウボーイビバップ 第19話ワイルド・ホーセス

絵コンテ:飯田馬之介 / 演出:山田弘和 / 脚本:稲荷昭彦

93 94

スパイクはソードフィッシュのオーバーホールを行うために、ドゥーハンの元を訪れる。一方賞金首を追っていたビバップ号は、返り討ちにあっていた。修理を終えたスパイクはビバップ号と合流し、再び賞金首を追うのだが。

第19話の主要スタッフ。絵コンテ・飯田馬之介。演出・山田弘和。脚本は稲荷昭彦。作画監督・逢坂浩司。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

このエントリーをはてなブックマークに追加

今回スペースシャトルのコロンビア号が登場します。実際にはカウボーイビバップが制作された五年後の2003年、くしくも物語と同じように断熱材の破損により空中分解事故が起こり、現存しておりません。記憶では確かこの事故の後、スペースシャトル側面の影が強調され、Columbiaの文字が識別できないように再編集されたはずです。しかしDVD版・HDリマスター版・北米版で確認してみたのですが、その部分に変更はありませんでした。

でも確かに見たのです。いつ見たのかもどこで見たのかも全く思い出せないのですが、確かに見たのです。何とも狐に化かされたような思いがしてならないのですが、もしそのような加工されている第19話を見たら、コロンビア号の事故の影響だと思って下さい。(もしかしたらそんな物は存在しないのかもしれません)

< 第19話に関して >

主人公はぐるっと一巡をして、今回からスパイクに戻ります。そして第19話はカウボーイビパップの中でも屈指のクオリティーを誇る回だと思います。これといって補足をする部分はないのですが、構成に関しては後述します。

主人公

「スパイク・スピーゲル」

ストーリー

「ソードフィッシュのオーバーホールに向かったスパイクが、修理を終え賞金首を倒すが、帰れなくなりドゥーハンに助けてもらう」

分岐点と概略

第一幕概略 「スパイクがソードフィッシュのオーバーホールに向かう」
第二幕への転換点(5m30s) 「ドゥーハンと合流」
第二幕前半概略 「オーバーホール中にビバップ号がやられる」
中間点(11m10s) 「スパイクがビバップ号に戻る」
第二幕後半概略 「賞金首と再度対決」
第三幕への転換点(17m30s) 「ビバップ号がソードフィッシュ回収に失敗」
第三幕概略 「ドゥーハンがソードフィッシュを回収する」

第19話を分解

カウボーイビバップ 第19話 パラダイム

1.画面に映るスターシップパイレーツのメンバー
ジェットが説明をしている時、画面にジョージ・ハーマン・ルースの三人が映ります。そしてその下に身長などバイオグラフィらしき物が表示されています。しかし、今回は珍しく英語ではなく(たぶん)意味を持たないアルファベットの羅列です。唯一読めるのは名前と身長のみ。一応その情報を抜き出しておきます。

  • GEORGE ジョージ / 5 Feet 11 inch (180cm)
  • HARMAN ハーマン / 5 Feet 11 inch (180cm)
  • RUTH ルース / 6 Feet 00 inch (183cm)

全員デカイです。

2.フェイ「オーバーホールに行ったままちっとも戻ってー」
ちょっとした疑問。オーバーホールと修理はどう違うのか?まずオーバーホールについて引用。

オーバーホール(Overhaul)とは機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のことである。

時計や車が趣味の人には馴染み深いと思いますが、オーバーホールに出して壊れている場所が見つかった場合、修理(もしくは部品交換)をしますか、などと聞かれたりします。オーバーホールは分解検査であり、修理はまた別の工程という事になります。

3.マイルズ「おやじさんが作ったすごいモノレーサーなんだろ」
モノレーサー、たぶん造語です。モノシステムを積んだレース用マシーンという意味だと思います。この後の中盤手前、コーヒーが出来上がるのをスパイクが待っているシーン。この事を補足するように、ソードフィッシュがレースに参加していたと思われる古い写真が寄りでワンカット入ります。そして、このカットでドゥーハンを前の所有者だとにおわせており、終盤の「だてにソードフィッシュを譲った〜」という台詞につながります。

4.ジェット「くそ、エサが悪かった」
初見時に若干混乱してしまったので補足。冒頭でエンジンを停止したレッドテイルが浮かんでいます。それに対して、ジェット「エサは文句を言うもんじゃねー」といいます。まず基本情報として、ジェットはレッドテイルをエサにして、スターシップパイレーツを捕まえようと考えています。

そしてこのシーン。ジェットの「釣れたか?」に対してフェイは「私じゃないわ」と答えます。そして二人はスターシップパイレーツがどこにいるのかを探します。つまり今回襲われたのは、ビバップ号とは全く関係のない船という事です。そう考えると、上記の台詞は額面通り「エサが悪かった = レッドテイルにエサとしての価値がなかった」という意味で間違いないと思います。

5.ドゥーハンがマイルズに壊れた部品を投げつける
そしてスパイクがこの部品を拾い上ます。しかし先がとがっていたため、指に怪我をするという流れです。無意味そうに思えるカットですが、後半でスパイクがソードフィッシュの飛行角度調整を行う際、この部品でメモリを刻んでいます。

しかしこのシーンだけで見てしまうと、危険な部品を投げてもマイルズが怪我をしない、つまりドゥーハンがそれだけ器用な人物だという演出にも見えてしまいます。しかしそれは考え過ぎで、そんな演出意図はないはずです。

6.フェイ「バイキンがどうしたこうしたとか」
上記の台詞に対して、ジェット「ウィルスだよ。コンピューターウィルス」と答えます。ウィルスとバイキンを間違うのが何とも野暮ったい印象ですが、北米版ではバイキンを「(some kind of) bacteria」と訳していて、なかなか良い感じに思えました。(単に外国語のニュアンスが分からないだけかもしれませんが……)

7.一人修理を行うマイルズ
どうでもいい情報。この時にマイルズがかぶっているキャップ。イニシャルが「B」となっています。ブルーソックスの「B」なのですが、元になったと思われるレッドソックスのキャップも、ボストンの頭文字で「B」となっています。ちなみに、スターシップパイレーツのルースがかぶっているニット帽は「S」です。現実のMLBではシアトルマリナーズが「S」となっています。基本的にMLBの帽子にある文字は、チーム名ではなく本拠地がある都市の頭文字になります。

8.マイルズ「おやっさん、これ」
小ネタを回収しておきます。このラジオから流れている野球放送。登場する場所は(イ)・(ロ)・(ハ)を含めの四箇所です。抜き出してみます。

イ.最後の打者エド・ウッドが三振に倒れ、ブルーソックス敗北でゲームセット。
—–日付変わり—–
ロ.三遊間を抜けるレフト前ヒットを打たれ、敵のランナーが一人ホームイン。その後も、ピッチャーのブッシュが3ボールノーストライクと追い込まれる。その後なんとかストライクを決める。
—–時間経過—–
ハ.31打席ノーヒットのエルダーソン?(名前は聞き取れず)が打席に立つ。
8.ライトを抜けるヒット。打者が、一塁、二塁と周る。

上記8の中継途中でシーンが変わります。この後のシーンから野球中継の音声は入ってこないため、この当たりがツーベース止まりなのかどうかは分からず終いです。ただ実況の様子からすると、今までの雰囲気を変えるようなヒットだったのは間違いないと思います。そしてこのブルーソックスの反撃を受け継ぐような形で、マイルズの気持ちが高まっていきます。

9.ジェット「今インターセプト◯◯を計算中だ」
聞き取りにくい部分、なんど聞いても「ほうそう」に聞こえます。しかしそれで意味が通じるのかどうか。似たような言葉は何かないのか。推測もふくめ二案。

A案.インターセプト「こうそう(航走?)」
B案.インターセプト「ほうそう(放送?)」

先に北米版でこの部分を確認しておきます。英語では「Interception course」、直訳すれば「途中で捕らえるコース」という意味です。しかしこの部分、日本版ではどう頑張っても「コース」には聞こえません。

そこでまずA案。字面的にはそれっぽいです。そして意味は「途中で捕らえる(ための)走行」という感じかと思います。ただ航路なら分かるのですが、航走では微妙にニュアンスが違うような気がします。もしかして「構想」でしょうか。これでも意味は合うと思いますが、ずいぶん仰々しいニュアンスになってしまいます。それに何度聞いてもジェットは「ほうそう」と言っているのです。

そこでB案。ただ「放送」では全く意味が分かりません。ソードフィッシュや衛星から送られている何らかの電波と考えてもいいのですが、さすがに無理があります。そこで別案。もしかして「包装」か?ソードフィッシュを途中で捕らえ包み込むという若干無理やりな解釈ですが、何となく「放送」よりはイメージが近いかと思います。実際にこの後、ビバップ号が頭上から回収に向かった事を考えると、的外れとも言い切れないかもしれません。

結論としてはよく分からずモヤモヤした感じです。もしかして「方走?」などの造語、もしくはSF用語で何かあるのかもしれません。後は単に僕の耳が悪いだけで、本当は「インターセプトコース」と言っているのかもしれません。

全26話中、屈指の完成度

個人的に第19話は非常に良く出来ている短編のお手本のような回だと感じました。そのため短編にも関わらず、ざっくりと構成を拾ってみたいと思います。(すでに上記で述べた部分は省いてあります)

カウボーイビバップ 第19話 パラダイム

(画像はクリックで拡大出来ます)

いつもの見づらい図、縦書はその情報が登場した位置です。

今回の話は、スパイクとソードフィッシュのエピソードを主軸として、スターシップパイレーツ、ドゥーハン・マイルズの二つの副軸が平行して進み、最後に主軸に帰結するという構成になっています。

細かく見ていくと、一つの出来事が解決して、それをきっかけにまた問題が起こるという事の繰り返しで、それほど斬新な展開ではありません。これを短編で、ましてや三本軸でやった場合、結局何の話か分からない散漫なストーリになってしまうはずです。まさに木を見て森を見ず状態です。しかし主軸がブレずに土台として機能しているため、盛りだくさんにも関わらず、非常に完成度の高い内容になっています。

スポンサードリンク

参照・引用(外部リンク)

Wikipedia - コロンビア号空中分解事故 http://ja.wikipedia.org/wiki/コロンビア号空中分解事故
Wikipedia - オーバーホール http://ja.wikipedia.org/wiki/オーバーホール
このエントリーをはてなブックマークに追加

「カウボーイビバップ」各話の考察