2015.03.23

「この回の主人公は誰なのか考察。あとゲート事故関連時系列の簡単なおさらいなど」

カウボーイビバップ 第18話スピーク・ライク・ア・チャイルド

絵コンテ:佐藤順一 / 演出:武井良幸 / 脚本:稲荷昭彦

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ビバップ号に突然フェイ宛の小包が着払いで届く。スパイクが小包を開けると、中には一本のビデオテープが入っていた。フェイが金を払わずどこかに行ってしまったため、スパイクとジェットはテープを店で売り払おうとするのだが……

第18話の主要スタッフ。絵コンテ・佐藤順一。演出・武井良幸。脚本は稲荷昭彦。作画監督・菅野宏紀。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

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今回の舞台は秋葉原です。個人的な事ですが、東京で働いていた時、二年ほど秋葉原の関連会社に行かされていました。その頃はまだスマートフォンも世に出ていなかったため、昼休みにはポケットサイズの地図を見ながら秋葉原をブラブラしていました。その時必ず基準にしていたのが、第18話中盤でソードフィッシュのナビ画面にも写っている、十字の形をした秋葉原駅です。

そんな秋葉原で働いていたある日の思い出。いつも通り働いていると、どこからともなく焦げ臭いにおいがしてきました。というより入り口から灰色の煙が入って来ました。何事かと思い中央通りまで出てみると、ヤマギワのソフト館がゴウゴウと燃えているのです。そして通りにはあふれる程の野次馬。しばらくその風景を眺めていると、偶然にも会社の営業さんを見つけました。向こうも僕の姿に気づいたのか、こちらに近づいてきます。そしてせきを切ったように話始めます。

「となりのミスドで休んでいたら火事に遭遇した。最初に行った時には一階エスカレータの脇が燃えてるだけだった。それがここまで燃え広がった」などと得意気に話しています。その時僕は思いました、「この人は荻窪・国分寺エリアの担当なのになんで秋葉原にいるんだろう?」と。

その疑問は胸にしまい会社に戻ると、社内も仕事どころではなく、なぜか犯人探しが始まっていました。なんでも同僚の話では、ヤマギワソフト館の建物を某電気店が再三買収しようとしていた。しかしヤマギワ側は全くそれに応じない。そのため業を煮やした某電気店が火をつけたのだろう。などと根も葉もない話で盛り上がっていました。

一応補足してきますが、この噂に上がった某電気店はソフマップではないです。なぜならばこの火事が起きる大分前に、ヤマギワソフトはソフマップの子会社になっているからです。噂に上がった某電気店とは秋葉原に拠点を置く、もっとローカルな企業です。もう一点付け加えると、この電気店が火をつけたなどという事実は(たぶん)ありません。

ソードフィッシュの画面に映った秋葉原の地図を見て、そんな事を思い出しました。

< 第18話に関して >

この話、物語の軸をどこに置くかで、主人公が変わってくるかと思います。全26話の中で考えた場合、第18話でのフェイの感情の動きはかなり重要な部分になってきます。しかしこの話を単独で考えた場合は、行動し物語を動かしているのはスパイクとジェットです。感情の動きを主軸と取るか、行動自体を主軸と取るか、かなり解釈が難しい所です。とりあえず両方のパターンを考えて見ます。

まず、スパイク・ジェットを主人公として考えた場合。

第一幕概略 「ベータのテープが届く」
第二幕への転換点 「テープを売りに行く」
第二幕前半概略 「店主とモメて中身を確認出来ない」
中間点 「電気博物館にデッキがあることを知る」
第二幕後半概略 「デッキを持ってくるがVHSのデッキで見れない」
第三幕への転換点 「宅配業者からデッキが届く」
第三幕概略 「中身を確認」

流れとしては特に不自然な形ではないかと思います。しかしこれを軸と考えた場合、フェイにとって重要であるはずの、過去の映像を見るという事に起因する感情の変化が脇に追いやられ、第18話が身も蓋もないただの馬鹿話という事になっていまします。

そこで次案、フェイを主人公とした場合。

実際の所フェイの登場シーンは少なく、ベータテープをめぐる馬鹿話の合間合間に登場するだけです。しかし流れを追っていくと、借金の取り立てと思いビバップ号から逃げる → スパイク達が地球に向かい、自分が置いて行かれたと思う → スパイク達が自分の事を心配してると聞き、やはりビバップ号が居場所だと感じる → しかし誰も心配はしていない → ビデオを見て自分には帰るべき場所がある事を知る、という流れになるかと思います。感情の変化がキレイに構成されているため、フェイを主人公とする方が、しっくり来るような気がします。

根拠はもう一つあるのですが、それに関しては後述します。

またこの「過去のビデオを見る」という出来事をはさみ、全体を通してのフェイの劇的欲求が、過去を探すという漠然とした物から、このビデオに写っている場所を探すというより具体的な物に変わっていくと思われます。

以下結論。

主人公

「フェイ・ヴァレンタイン」

ストーリー

「ビバップ号にビデオテープが届き、フェイは自分が存在していた過去を知る」

分岐点と概略

第一幕概略 「ビバップ号にビデオテープが届く」
第二幕への転換点(4m00s) 「フェイがビバップ号から逃げる」
第二幕前半概略 「犬でもうける」
中間点(11m30s) 「ビバップ号がフェイを置いて地球に向かった事を知る」
第二幕後半概略 「犬で金を失う」
第三幕への転換点(18m00s) 「二人が心配していると勘違い」
第三幕概略 「ビバップ号に戻り、フェイが過去の自分を見る」

第18話を分解

カウボーイビバップ 第18話 パラダイム

★.ジェット「土産にと渡されたのが玉手箱」
ジェットがエドに浦島太郎の話をします。これがフェイを主人公と考えた根拠の一つでもあります。詳しくは後述します。

1.エド「亀の玉手箱」
亀の宅急便から荷物が届きます。もちろんこれが浦島太郎の玉手箱という事なのですが、もう一つの童話も絡んでいます。その童話に関しては分解6で解説します。

また宅配便が届く引きのカット。「福」の字が逆さまになった看板が映ります。いわゆる倒福(とうふく)というやつです。初めて見た時は「福が逆さまになってるなんて縁起でもない」と思っていましたが、中華圏では『福が来る』という意味で縁起がいいらしいです。最近中華料理屋の看板などでもよく見かけます。

2.ジェット「月ゲート爆発事故により、2022年以前のデータは消失」
とりあえず合っているのかどうか、今まで登場した情報を洗い出して見ます。

06話 / 50年前に月ゲート事故 (2021年)
09話 / 50年前に月ゲート事故 (2021年)
15話 / フェイが生まれる 現在の3年前の54年前の20年前 (1994年)
15話 / フェイの事故 現在の3年前の54年前 (2014年)
16話 / 現在は2071年

2021年に月ゲート事故が起こっているため、2022年以前のデータが消失しているで合っています。そして第24話でフェイの記憶の中に登場した地球は、まだ普通の状態でした。フェイの事故より月ゲート事故が後なので、この辺の時系列にも問題はないと思います。

3.ビデオマニア「開発してたメーカーの違いでベータとVHSっていう二つの規格が〜」
ソニーと松下電器が争ったいわゆるビデオ戦争というやつです。物心ついた頃にはVHS一色となっていたため、経済史に残るこの争いはリアルタイムでは知りません。その頃の記憶ではベータ規格のテープは、業務用やお金持ちの家庭にしか残っていなかった様な気がします。

4.エド「旧アジアの地下都市、電気博物館」
この時、日本を中心とした東アジアの地図が映ります。一応ここで表示されている電気博物館の住所を拾っておきます。住所は番地ではなくは「AKIHABARA SHINORA BUILDING B28」となっています。このビル名、篠原ともえさんのシノラーから取っている様な気がします。根拠は篠原ともえさん風の人物が登場する第8話・第23話の絵コンテと演出、そして今回第18話の演出が武井良幸さんと共通しているためです。ただ確証はありません。

5.エド「スパイクとジェットがねー」
この後、通信が途切れフェイは落ち込みます。フェイはこの後に「あんな女ほっとけ」的な言葉が続くと考えたのではないでしょうか。そのためフェイは見捨てられたと感じた。そのため、スパイクとジェットが心配していると勘違いをした際、まんざらでもない態度を取ったのだと思います。

6.ジェット「何、またあの女の荷物」
再びフェイ宛の荷物が届きます。この時の配送業者は、一回目と違いウサギの宅配会社(Rabbit Express)です。一回目に来たのが亀の宅急便である事を考えると、ウサギと亀のイソップ童話が元になっていると思われます。送り主が別という可能性もありますが、同じ送り主がテープだけを送ってもしょうがないと考え、亀よりも早く着くようにウサギでデッキを送ったとも推測出来ます。もし先にデッキが着いていたのなら、今回の不毛な展開は起こらなかったはずです。

7.スパイク「しつこい性格の奴だなー」
どうでもいい部分ですが補足。何度も荷物を送ってくる事に対しての台詞ととらえる事も可能ですが、ここは何重にも梱包してある事に対しての台詞だと思われます。だだし両方の意味を持たせている可能性も若干ですが残ります。

8.テレビに映し出される古い映像
フェイがこの映像を記録した時期。制服を着ていること、また第24話の情報からの推測になりますが、ハイスクール時代という事で間違いないような気がします。フェイが1994年生まれという事から逆算すると、2009年から2012年の間と考えられます。ただ未来の自分へ向けてメッセージを撮るという事を加味するとハイスクール卒業間近、つまり2012年(もしくは2013年)と考えるのが妥当ではないでしょうか。

この時代にベータのカメラが残っているかどうかというのは、揚げ足取りになってしまいますのでスルーします。ただ上記しましたが、90年代の感覚として、ベータは金持ちが持っているというイメージがあります。ビバップの製作年から考えれば、資産家の娘である(第24話情報)フェイの家にベータのカメラがあるという設定はありだと思います。

また本来なら第24話で解説するべき部分なのですが、忘れると悪いのでここで回収しておきます。第24話で登場する同級生のサリー・ユー。このビデオにも写っていると思います。場所は全員集合しているカット。一番最後に遅れて入ってきた人物がそうだと思います。根拠は髪の色しかありません。
 

浦島太郎の話と今回の主人公

冒頭で語られる浦島太郎の話。正直効果的なメタファーだとは思えないのですが、この玉手箱が今回のストーリーをそのまま表していると思われます。フェイは亀の宅急便から受け取ったテープによって、浦島太郎状態という現実を知ることになる訳です。

しかしこれはすでに明かされている情報であり、これといった驚きはありません。また亀を助ける部分や、竜宮城に該当するエピソードもなく、電気博物館でジェットが「とんだ竜宮城だぜ」という後付のような台詞があるだけです。そして何よりも玉手箱を開けた際のフェイの感情などは、浦島太郎の物語とは全く違うと思います。

そう考えた時、この浦島太郎がメタファーとして成立しているかどうか、かなりあやしい感じはしますが、この話が冒頭に登場し、それに沿った形で物語が進行して行く事を考えれば、フェイが主人公であるという根拠にはなりえるかと思います。

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「カウボーイビバップ」各話の考察