2014.05.14

「スパイクが過去の記憶の中で葛藤する、全体・第二幕始点としての考察」

カウボーイビバップ 第6話悪魔を憐れむ歌

絵コンテ:岡村天斎 / 演出:佐藤育郎 / 脚本:信本敬子

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300万の賞金首ジラフをスパイクは追っていたが、そのジラフは何者かに殺されてしまう。その時ジラフは「あいつを助けてくれ」とスパイクに最後の言葉を残す。調査を開始したスパイクは、ジラフが探していたゼブラという車椅子の男に辿り着くのだが。

第6話の主要スタッフ。絵コンテ・岡村天斎、演出・佐藤育郎。脚本は信本敬子。作画監督・竹内浩志。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

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突然ですが、今敏監督の「東京ゴッドファーザーズ」という映画がすごく好きです。そして「東京ゴッドファーザーズ」の脚本は「カウボーイビバップ」シリーズ構成の信本敬子さんです。

話を戻します。第6話の脚本も信本敬子さんなのですが、正直言うと信本さんが脚本を担当した回の考察がかなり難しいです。第1話の時も思ったのですが、なんというか単純な事を頭でっかちに解釈してしまい、罠にはまっているような感じもするのです。実際は格好いいからという理由で、その台詞や行動があるというだけかもしれません。しかし、これだけ力がある人がそんな素人みたいな作り方をするのだろうか?そんな事ををして作品が崩れないのか?それにスタッフ・キャストなど多数のプロが、格好いいだけなどという理由に納得するだろうか?という疑問も残るのです。それともキャラクターの書き分けがしっかりと出来ているため、その何気ない一言で僕が勝手に想像を膨らませているだけなのだろうか?

そんなことは作り手側にしか分からない事ですが、今回も考察を書き連ねていきたいと思います。

< 第6話に関して >

今回の主人公もスパイクです。そしてこの回から全体の二幕目に入ります。詳しくは後述します。まず、いつもの通り物語の構成。

主人公

「スパイク・スピーゲル」

ストーリー

「追っていた賞金首のジラフを殺されたスパイクが、真相を知り、ウェンを倒す」

分岐点と概略

第一幕概略 「賞金首のジラフを追うスパイク」
第二幕への転換点(6m40s) 「ジラフが死ぬ」
第二幕前半概略 「ゼブラからウェンを救いに行く」
中間点(11m40s) 「ウェンの正体が分かる」
第二幕後半概略 「ジラフの言葉の意味が分かる」
第三幕への転換点(18m00s) 「石を銃弾にする」
第三幕概略 「ウェンを倒す」

 

全体・第二幕始点としての考察

一話完結の物語としては上記の通りです。ただどうしても考えてしまうのです。なぜこの話を信本さんが担当したのかと。そこで、この第6話を全体の中で考えてみたいと思います。(A〜Eの場所は下記分解ポイント図に載せておきます)

全体の幕間構成は、改めてまとめで解説をしたいと思いますが、第6話を解説する上で必要になるのでザックリと書き出します。第一幕「状況設定・スパイクの過去の紹介」、第二幕「その過去にしばられ葛藤する」、第三幕「過去との対決」となっています。第5話が二幕目への転換点となっているため、第6話はそれを受けた第二幕目のスタートとなっています。

それではキーになるポイントを解説します。

A.手術台に横たわるスパイク
冒頭、スパイクは悪夢にうなされます。毎回このタイトル前の部分で、今回は何の話であるかが紹介されます。今回はジラフとゼブラの友情がメインストーリーとも考えられるのですが、その話は出てきません。描かれるのはスパイクとウェン、つまり今回は二人の対決がメインストーリーとなります。それではなぜここにスパイクの回想(悪夢)が差し込まれたのでしょうか?

B.スパイク「気に食わねんだ。気に食わねんだよ」
スパイクがウェンとの対決に向かうときの台詞。この時スパイクは何が気に食わなかったのか?

(b)の部分。ジェットに傷の手当てをしてもらっているスパイクは「葬式出す金ねーんだからな」といった軽口に、何か別の事に気を取られているように「すまん」とだけ答えます。この時点でスパイクは何か引っかかる出来事、つまり「気に食わない」元になる出来事に遭遇してきたのだと思います。

ここまででスパイクが知り得ている情報は、ウェンがゼブラの自由を奪い、自分の「父親」にした事です。そしてその後、ゼブラにアルファキャッチをつけ、助けに来たジラフをウェンが殺した事を知ります。スパイクは、二人の友情を引き裂いたウェンの事が気に入らなかったのです。当然今回はそういう話なので、この事に疑問の余地はないと思います。

そしてこれがどういう意味を持っているかというと、「こっちへ来い」と言ったジラフに対し、ゼブラの自由を奪い、二人の友情を引き裂いたウェンに、ジュリアとスパイクの仲を引き裂いたビシャスを重ねたという事ではないでしょうか。

またそれか、と思われるのもあれなので、その事を踏まえて改めて考察していきます。

<冒頭の悪夢>
冒頭に悪夢を挿入させた理由は、第6話はスパイクが過去の悪夢の中で葛藤する、という事の前置きではなかったのか。

<ウェンとの対決>
冒頭でウェンのブルースハープに悪夢を見せられます。つまりこのブルースハープの音色は、過去の悪夢の象徴ではないのか。スパイクがウェンを倒した後にブルースハープを吹いた時、音は鳴りませんでした。つまり、ビシャスに邪魔された事によって、ジュリアとの駆け落ちに失敗したという悪夢を、ビシャスと同じ事をしていたウェンを倒すことによって、振り払ったという事ではないでしょうか。

C.ウェンを撃つ際に銃に祈るスパイク
ウェンの銃弾を避けることもせず、ウェンと対峙するスパイク。そして銃を構える前に銃を額につけ祈ります。そんな映画もありました。ただ単純に格好いいからという可能性も残ります。しかしそれだと身も蓋もないので、解釈を一つ。

この時、ウェンの銃弾をよけるということは、スパイクにとって過去から逃げるということを意味し、例え死んだとしてもよける気はなかったのではないかと思います。そして銃に祈ったのは、当たり前ですが、暴発せずウェンを倒せるようにという事です。スパイクはウェンを倒すことによって、過去の呪縛を裁ち切り、もう一度やり直せるかと、この一発にかけたのではないでしょうか。

D.スパイク「分かるかよ」
ウェン「これでやっと死ねるのか。やっと楽になってきた」の後につぶやくスパイクの台詞。この「分かるかよ」は「これでやっと死ねるのか」を受けた台詞。最終話で「100万回生きた猫」の話が出てきます。まだこの時点でのスパイクは、ジュリアという白猫に出会えていないトラ猫であり、やっと死ねるという気持ちは理解できなかったのだと思います。

E.スパイク「バァン」
そしてブルースハープを投げ指で撃つ動作。そしてこの「バァン」は最終話にも登場します。格好いい。すごく格好いい。しかしどれだけ考えても意味が分からない。

スルーするわけにもいかないので、ものすごく自信のない解釈。ブルースハープを撃つ「バァン」は、縛られていた過去を打ち砕いた、もしくは同じように過去を打ち砕いてやるという意味だと思います。そして最終話も今回とそのまま同じ流れなのではないでしょうか。(これについては最終話で解説します。というか自信がないので最終話まで逃げます)

第6話を分解

カウボーイビバップ 第6話 パラダイム

1.手術台に横たわるスパイク
目の手術。このシーン終わりで義眼が右目にズームしていきます。言葉で語られることはありませんが、右目が義眼であることが分かります。

余談。また第5話の続きになってしまいますが、このシーンがスパイクがマオの息子ではないかとさらに勘違いさせる結果となってしまったのです。(そんな事実はありません。詳しくは前回 第5話で説明してます)

2.ジェット「俺はお袋のミルクを吸うにも、ワーブリング効かしてたもんさ」
ワーブリングについて。音が波打つように響き渡る、だから「wavering」です。ワーブリングはハーモニカの音を揺らすビブラートの一種(のはず)です。例えるならギターの横ビブラートみたいな感じでしょうか。縦ビブラートだとちょっと例えが違うかもしれません。演奏方法はハーモニカを横に揺らす感じだと思います、たぶん。

3.ジラフ「そいつを返せ!ゼブラ!」
この部分、アルファキャッチで再現された際はこの後に「そいつを返せ!ゼブラ!こっちへ来るんだ!」とつながります。ミスリードさせるためかなり不自然な切れ目になっています。そのためかなり無理のある台詞回しのはずなのですが、仲木隆司さんが神がかり的な台詞回しで、キレイにつないでいます。

★.ファッティ「ジラフが仕組んだトップ争いの裏切りだろうな」
ここもミスリードさせるための台詞になっています。詳しくは後述します。僕が馬鹿なせいか、三回ぐらい見るまでファッティの情報を真に受けていました。

4.パソコンの画面に映るジラフとゼブラの情報
閲覧している画面にオフラインブラウザの文字。オフライン上で稼働しているようです。そしてどうでもいい情報をもう一つ。ゼブラとジラフ、2044年に株式会社サカイというところを退職しているようです。多分サカイさんはスタッフか関係者の知り合いの方でしょう。

5.月で位相差空間の爆発事故が起きる
しょうがないのですが、爆発があからさまなCGでちょっと引いてしまいました。月ゲートの爆破事故は第9話でも追加の補足情報が出てきます。出てくる情報は起こった時期、今から50年前という設定です。

6.ジェット「大雑把に言えば仮説はこうなんだが、分かるか?」
要するにメラトニンが老化を抑制しているという事らしいです。なぜ死なないのかは不明。あと衒学的な単語が並んだので一つだけ説明。サーカディアンリズム、ザックリ言えば体内時計みたいな意味です。深く考えるほど科学的な理論はないと思いますのでスルーします。
 

ジラフとゼブラの真相

個人的に若干分かりにくかったので枠を設けました。単純な話なのですが、ファッティがあまりにも自信たっぷりに嘘情報を流すので、それを信じてしまいました。まずファッティの情報で事実の部分とウェンの台詞を書き出します。

ファッティ情報
「ジラフとゼブラは10年前、ある施設に領有権を訴え乗り込んだ。数日後ゼブラは行方不明、ジラフは目隠しをされ、へんぴな土地に放置されていた」

ウェン台詞
「ラボ(研究所)に忍び込ん出来たのがこいつの運のつきさ」

要するに、ラボに忍び込んだ二人はウェンにやられた。そしてゼブラはウェンの「父親」にされてしまい、ジラフは放り出されたという事です。そのためジラフはゼブラを取り返そうとしていたのです。決してジラフが仕組んだ裏切りではありません。ジェットが言っていた「男は義理に生きるもんだ」という台詞が正しかったということです。

しかし、個人的には一度は裏切った仲間を助けようとした方が、設定としては深みがあって、もっと好きになれたかもしれません。

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「カウボーイビバップ」各話の考察