2014.07.01

「ある時期から突然降って湧いてきたビバップ疑似家族論。そもそも疑似家族って何?」

カウボーイビバップ 第9話ジャミング・ウィズ・エドワード

絵コンテ:渡辺信一郎 / 演出:佐藤育郎 / 脚本:佐藤大

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地球に落書きをしたハッカーにかかった、800万の賞金を追うビバップ号のメンバー。それを知ったエドは、ハッキングをしかけビバップ号との接触をはかる。そして、落書はハッカーの仕業ではない事が明かされる。

第9話の主要スタッフ。絵コンテ・渡辺信一郎。演出は佐藤育郎。脚本は佐藤大。作画監督・小森高博。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

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最近は見なくなりましたが、子供の頃のテレビでよくUFOの特集をやっていました。ロズウェル事件とかマジェスティック12とかキャトルミューティレーションとか。そんな中、ものすごく記憶に残っているのがエリア51の話。いつものごとくUFOの秘密を追っていると、エリア51にUFOが隠されているという情報にたどり着く訳です。そして番組スタッフがエリア51に近づくと、軍に尾行され始め、エリア51に近づく前に軍に止められてしまう。そして「これ以上の取材は命の危険を感じたため、これ以上の潜入取材はやめた」的なナレーションで番組終了。

大人になって考えてみると、例え機密扱いになっていない所だとしても、軍施設の周りをううろしていたら尾行がついて追い出されるのは、当然と言えば当然です。しかも時代は冷戦の真っ直中。制作者もその事が分からないはずはないのに、こんな番組が許されるというのは、なんともおおらかな時代だったのかもしれません。

ちなみにそのエリア51。最近まで米軍が存在を認めていなかった、有名な空軍基地です。グレーム湖に面している事から、グレーム・レイク空軍基地が正式名称です。湾岸戦争で登場したF-117とかのテスト飛行を行っていた基地ではないかとも言われています。そこに近づこうとすれば止められて当然だと思います。

昔はこういう馬鹿馬鹿しい話はたくさんあったのですが、陰謀論という単語はあまり聞かなかったような気がします。第9話でも、キャスター「秘密結社ですか……」と言っていますし、いつから陰謀論という単語が出てきたのでしょうか。

陰謀論と言えば、ルーズベルトが真珠湾攻撃を知っていたという事も、今では陰謀論的な扱いになっているらしいです。高校の先生が「実はアメリカが暗号解読をしていて〜」などと言っていたのですが、時代は変わる物です。またこの戦争、きっかけとなったハルノートの原案、ホワイト試案を書いたハリー・ホワイトがソ連のスパイだったりと、陰謀論的な出来事が盛りだくさんです。

あまりにも本題からそれたので、陰謀論はこれぐらいにしておきます。今回は久しぶりの更新ですが、無意味な雑談が多めになっております。

< 第9話に関して >

今回からエドが仲間になります。主人公に関してはスパイクとも思ったのですが、やはりストーリー全体で変化があり、そのストーリー上で一番影響を受けるのはビバップ号のメンバーであるため、主人公はビバップ号のメンバーであると考えました。

そして表題に書きました疑似家族の件。ほぼリアルタイムでカウボーイビバップを見たのですが、この頃に「ビバップは疑似家族だ」等という考察は聞いたことがありません。しかしいつの頃からか、まことしやかに「ビバップ=疑似家族」などという考察が聞かれるようになります。僕の脳みそが足りないかったのか?僕の周りには読解力がない人しかいなかったのか?そもそも疑似家族とは何なのか?僕自身、ビバップ号のメンバーに家族などという雰囲気を微塵も感じる事が出来ませんでした。

結論はまだ先送りにするとして、第9話時点で読み解ける事を後述いたします。

主人公

「ビバップ号のメンバー」

ストーリー

「ビバップ号が、エドの協力で落書き犯を捕まえ、そのお礼としてエドを仲間に加える」

分岐点と概略

第一幕概略 「ビバップ号が落書き犯に賞金がかかっている事を知る」
第二幕への転換点(6m00s) 「地球に到着」
第二幕前半概略 「ハッカーを捜すジェットとフェイ」
中間点(13m30s) 「エドから落書き犯の正体を聞く」
第二幕後半概略 「スパイクが加わり、んっぴゅーの確保に向かう」
第三幕への転換点(19m30s) 「んぴゅーのデータをコピーする」
第三幕概略 「エドが仲間になる」

第9話を分解

カウボーイビバップ 第9話 パラダイム

1.ケラーマン「はい、ユーリ・ケラーマンです」
ユーリ・ケラーマン。この頃ユリ・ゲラーが何度目かのブーム?を巻き起こしていました。その記憶があったため、この名前を聞いたとき、なんと安直なと思った記憶があります。

また第9話で度々登場する「ハッカー」。本来はクラッカーが正しい用語です。Crime Hacking = cracking、そしてそれを行う人はクラッカーとなるはずなのですが、まだパソコンが普及するずっと前から、ハッカーが誤って用いられています。

2.アナウンサー「解説のアムジャットさん」
アムジャッドさん、インド人です。正確に言えばターバンを巻いてヒゲを生やしているので、シク教徒だと思われます。

また最近はそれほど聞かなくなりましたが、この放送があった頃、インド人は IT に強いというイメージがありました。理由は二桁の九九をするなど、数学に力を入れているからなどと言われています。しかしそれは結果論であって、そうなった理由は、カースト制度でなれる職業が決められているため、低いカースト出身者が、カーストで規定のない IT を目差したという事です。また東京で働いているときに、IT関係の人によく聞いたのですが、アメリカの反対側にあるため、アメリカ人が寝ている時にインド人が働き、インド人が働いてるときにアメリカ人が働く。これで24時間の体制を取れるため、インドのプログラマーが重宝されていると言っていました。そして英語が通じるというのも大きいらしいです。しかしもう何年も前の話ですので、現在はどうなっているのかは分かりません。

またここでは、第6話に登場した月のゲート爆発によって、地球がどのような環境になっているのかが分かります。そして地球ではネットが人と繋がるため必要不可欠であり、それが優秀なハッカーを育てる一因になっているなど、かなりしっかりとした状況設定の説明があります。環境状況が特定産業の発展に直結する、インドのお話とかなり似ています。

3.エド「ウイーーーーン」
警察に踏み込まれる前、エドはプロペラがついている模型で遊んでいます。この時エドが操っているのはビバップ号の模型ではないでしょうか?根拠は形が似ているというだけですが、この前のカットが大気圏に突入するビバップ号。そしてその後に続くのが、エドのアップではなく、この模型のアップになります。また後半でも、ビバップ号の写真と一緒にこの模型が登場します。非常に分かりにくいですが、ラストでビバップ号を操る伏線をはっているのだと思います。

4.子供「情報料の替わりにこれ買ってくれよ」
どうでもいい情報。ここで子供が説明したのは、名菓ひよ子だけですが、手に持っているのは三つです。上から、名菓ひよ子・御福餅・マカダミアナッツとなっています。

5.フェイ「そんな事はどうでもいいわ」
この第9話、前半はハッカーのエドを探すというのが主な流れになっています。そしてジェットの報告で、フェイもラディカル・エドワードというハッカーがあやしいという情報を聞いています。その流れで(犯人ではないのかもしれませんが)探していたエドが目の前にいるのに、そんな事はどうでもいいと受け流せるのでしょうか?実際フェイが(というより林原めぐみさんが)なんとも言えない台詞回しで上記の台詞を言っています。

6.エド「みーんな知ってるよ」
この時エドの部屋?には、ビバップ号の写真がいたる所に張ってあります。そして、前半に登場した
ビバップ号の模型もあります。ラストでは突然ビバップ号を操ったように感じてしまいましたが、あのラストにたどり着くために(若干分かりにくいですが)細かい布石をしっかりと打っています。

7.スパイク「ECMか」
ECM。とりあえずいつものように用語解説。Electronic Counter Measuresの略です。第3話で登場したチャフも、このECMの一種です。ただこのシーンで言われているECMは、ミサイルの誘導センサーを妨害するジャミング的な意味で使われています。もちろんジャミングもECMの一種です。

8.スパイク「そりゃきっと寂しかったんだろ」
ジェット「なんだってレーザーで地球に落書きなんてこと始めたんだ」を受けて、上記スパイクの台詞。この台詞非常に格好いいのですが、なぜこのような事を言ったのか、理由がすぐに思い浮かびませんでした。そこで根拠のない深読みしてみます。もしかしたらスパイクは、んっぴゅーとレッドドラゴンに身を置いていた時の自分自身を重ねていたのかもしれません。そう考えたとき、レーザーで落書きという行動と対比されるスパイクの行動とは何であるのか?その対比される行動とは、ジュリアと肉体関係を持つという事ではないでしょうか。

9.パンチ「そもそも生命倫理的見地からして〜」
ビッグショットのパンチの説明。地球政府からの発表という形で、非常に衒学的な台詞が並びます。
特に意味もなく、こういった言葉を使う台詞があまり好きにはなれません。もっと単純な台詞でも良かったのではないでしょうか。

★.スパイク「嫌いな物が三つあるって知ってか」
スパイクが嫌いな物として上げた、ガキとケダモノと跳ねっ返りの女。この嫌いな物、この後の展開で伏線になっていたりする訳でも、説明がある訳でもありません。なぜこの三つが嫌いなのか?疑似家族の考察にも絡んでくるので、後述いたします。
 

ビバップは疑似家族なのか?

まずは身も蓋もない推測から(根拠はないです)。

TV放送を考えた際に、元マフィアの男とおっさんとジャズだけでは視聴率は取れない。そこでプロデューサーが視聴率を取れる物として「動物」とか「子供」が出る作品と言ったのではないでしょか。そこで制作側が折衝案として、アインとエドを出した。根拠のない推論ですが、これが(もしくはこれに近い状態が)アインとエドの登場理由のような気がします。

しかしそれでは、あまりにも身も蓋もないので、第9話から考えられる事を書き連ねます。

まずエド。エドがビバップ号に加わった理由が、家族を求めてという事は絶対にありえません。すでに解説しましたが、今回の流れを考えると、ビバップのメンバーというよりは、ビバップ号に乗ることにあこがれていたのだと思います。

そして主人公のスパイク。今回嫌いな物の一つとしてあげた「跳ねっ返りの女」。ここから考えて二案出します。

A.跳ねっ返りの女 = ジュリアの場合
跳ねっ返りの女をジュリアと考えます。そして、犬と子供。ここで上げた三つの物というのは、スパイクが望んでいた未来にあった物だったのではないでしょうか。そう考えると、家族を得られなかったスパイクが、たどり着いたビバップ号で擬似的な家族を演じていたという解釈も成り立ちそうです。しかしです、「カウボーイビバップ」ってそんな話ですか?

そこで次案。

B.跳ねっ返りの女 ≠ ジュリアの場合
跳ねっ返りの女をジュリアと真逆の女性と考えます。そう考えた場合、犬と子供はスパイクが求めていない物になります。スパイクが望んでいた事は、ジュリアと二人きりで自由気ままに生きていくという事、そう考えたとき、スパイクがビバップ号で疑似家族を演じていると解釈するのはいささか不自然ではないでしょうか?

家族を求めていた人間が、本当の家族を得られなかったため、疑似家族を演じるなら分かります。しかし家族を求めていない人間が、自分は死んだと言い、別の場所で疑似家族を演じるなどという設定はありえるのでしょうか?もちろんB案であっても、疑似家族論は可能です。しかし、それでは物語の大筋から大きくそれてしまうような気がするのです。

そもそも何らかの目的の下、人が集まり集団を形成している以上、なんでも疑似家族だと言えてしまうのではないでしょうか。例えば、ヤクザ、ブラック企業、学生寮など上げればキリがありません。疑似家族という言葉を使うと、それっぽく聞こえますが、かなり定義のあいまいな、あまり意味のない定義付けのような気がします。

(しかしフェイについての考察があるので、結論は先送りします)

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「カウボーイビバップ」各話の考察