2015.04.12

「分からなくても物語に影響はありませんが、風水用語を拾ってみます」

カウボーイビバップ 第21話ブギ・ウギ・フンシェイ

絵コンテ:潮乱太 (本郷みつる) / 演出:佐藤育郎 / 脚本:村井さだゆき・渡辺信一郎

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古い知り合いのパオからジェットに一通のメールが届く。ジェットはその意味を知ろうとパオの墓へと向かうのだが、そこにはパオの娘メイファの姿が。そして二人は何者かに狙われる。

第21話の主要スタッフ。絵コンテ・潮乱太(本郷みつる)。演出・佐藤育郎。脚本は村井さだゆき・渡辺信一郎。作画監督・竹内浩志。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

個人的に大好きな風水がらみの故事を一つ。

その昔、ある国の王様が尉繚(うつりょう)という人に「風水占いの通り戦えば連戦連勝のはずだよね」などと質問しました。それに対し尉繚は下記のように答えます。

今、城あり、東西より攻むれども取ることあたわず。南北より攻むれども取ることあたわず。四方にあに時に順いこれに乗ずる者なからんや。しかれども取ることあたわざるは、城高く池深く、兵器備具し、財穀多く積み、豪士、謀を一にすればなり。

「ここに城があります。風水では東西南北のどれかは必ず吉であるはずなのに、東西から攻めても、南北から攻めても城は落ちませんでした。なぜだと思いますか?それは城の守りが堅かったからです」と身も蓋もない返答をするという話です。

書いておいてなんですが、これ以上話の広がりは全くありません。尉繚子の天官編に載っている話を、大分はっしょって書きました。要するに僕は、占いをあまり信じていないと言いたかったのです。

< 第21話に関して >

今回の主人公はジェットです。また今話で登場する風水用語は可能な限り拾っていきますが、いつも以上になんちゃっての解説ですので、話半分で読み進めて下さい。

主人公

「ジェット・ブラック」

ストーリー

「パオからのメールを受けっとったジェットは、パオの居場所を探し出しメイファをパオの元に届ける」

分岐点と概略

第一幕概略 「ジェットにパオからのメールが届く」
第二幕への転換点(6m30s) 「メイファに太陽石探しを頼まれる」
第二幕前半概略 「太陽石を探す」
中間点(12m00s) 「パオが生きている事を知る」
第二幕後半概略 「パオの居場所を探す」
第三幕への転換点(17m30s) 「パオの位置を特定する」
第三幕概略 「パオの元にメイファを届ける」

第21話を分解

カウボーイビバップ 第21話 パラダイム

A.ジェット「その文面はたったこれだけだった」
パオから送られてきたメール。中盤でメイファが謎解きをしますので、なんとなく意味は分かるのですが、細かい部分も含め後述します。

1.メイファ「裏鬼門より訪ねくる者。天の声を受け汝を太陽石に導かん」
不明な点は裏鬼門だけだと思います。簡単に解説。まず鬼門とは北東の方角です。一説には北東から匈奴が度々侵攻して来たため、縁起の悪い方角となったらしいです。そして物事には表があれば裏があると考えますので、裏鬼門とは鬼門の反対側、南西の方角になります。同じように縁起が良くない方角ですが、物語の中では単に方角を表しているだけだと思います。とりあえず意訳。

南西の方角からジェットが来る。パオの言葉を手がかりにメイファを太陽石の所へ導く。

となります。そして、その後の台詞は「八卦の託宣通り」です。託宣は簡単に言うとお告げです。

2.メイファ「地の気」
地の気は風水にある天・地・人の気の一つです。この後、メイファがアイスを食べながら説明しますが少し補足。天の気は天体の動きなど、人の気は生まれた年などです。そして地の気は説明通り、山川などの大地から湧き出る物です。逃走中のメイファは川から地の気を感じ取り、川に飛び込んだという流れになります。

3.メイファ「案山より聖獣を〜」
ジェットが印刷したメールをメイファに見せます。この時、印刷した紙の右下には「AUG 18 3:16 PM」の文字があります。話の流れから考えると、あらかじめ印刷していたとは考えにくいため、このシーンが8月18日であるということが分かります。そしてジェットは、メールが三日前に送られて来たと説明し、メイファも三日前は事件の直前と答えています。そこからパオが位相差空間に閉じ込められたのは、8月15日であると推測できます。(余談。他に日付が出てきた回は第16話の7月7日です。)

B.メイファ「案山とはおそらくここ。マウンテンホテルビルの事」
なぜマウンテンホテルビルを案山だと思ったのかは分かりません。この部分もAと合わせて後述します。

4.ジェット「老酒(ラオチュー)一本。グラスはいらねー」
一応拾っておきます。当然の事ながら、ジェットは飲むために老酒を頼んだのではなく、老酒の瓶を武器として使うために頼みました。そのためグラスはいらないと言っています。

5.ジェット「パオは組織のコンサルタントをしていた」
当然コンサルタントをしていたのはブルースネイクという組織です。ちなみにレッドドラゴン以外では、第5話でホワイトタイガーという組織が登場しています。

そしてこの時、ジェットはパオとの写真をメイファに見せます。その写真の下にある言葉。

With my friend Pao and his daughter at his home.
(友人のパオとその娘と彼の家で)
1.15 2061

前半でジェットが語った、パオは十年前の知り合いであり、メイファとは小さい頃に会った事がある、という情報の裏付けになります。ここからパオは、すでに十年前の段階で組織を抜けたがっていたという事が分かります。

6.スパイク「さしずめ七人の小人ってとこか」
このシーンでのスパイクの一連の台詞は、グリム童話からの引用です。七人の小人は白雪姫に登場する小人達、その前の台詞「王女の夢をかなえる妖精さん」はシンデレラを助ける妖精の事を指していると思います。ただしオリジナルの「灰かぶり姫」で願いをかなえるのは、妖精さんではなく小鳥さんになっています。

元ネタから考え、ニュアンスは下記のような感じになるかと思います。

「王女の夢をかなえる妖精さんって訳だ」
当然ながらシンデレラはメイファです。シンデレラが王子様と出会えるように色々と手を貸してくれる妖精はスパイクです。そして王子様がパオという形になります。

「さしずめ七人の小人ってとこか」
白雪姫を守る七人の小人。ここではパオが白雪姫という事になります。そして無人機が、そのパオに会うことを妨げるように登場するため、七人の小人に例えたのではないでしょうか。ちなみにスパイクは無人機を七人の小人と言いましたが、無人機は全部で八機います。

7.時空の歪みに吸い込まれる無人機
飛び立った無人機のゆくえ。

一機目:ソードフィッシュで撃墜。
二機目:次カット、レッドテイルの攻撃を避け壁にぶつかり大破。
三機目:ジェットから連絡を受けながら、スパイクがソードフィッシュで撃墜。
四機目:レッドテイルのミサイルで撃墜。
五機・六機目:時空の歪みに吸い込まれる(先カット)
七機・八機目:時空の歪みに吸い込まれる(後カット)

登場した八機は全滅しています。

8.メイファ「パパ……」
これがパオへの最後の台詞になりますが、その前に通信は途切れてしまいます。つまりパオが最後に聞いた台詞は「ずっとあなたの事恨んでた。ずっとあなたが憎かった。それなのに」です。パオの視点で考えると、あまりスッキリしない状態で通信が途切れてしまったような気がします。

しかしパオは、メイファにひと目会いたかっただけであり、決して和解を望んでいた訳ではないと思います。しかしジェットから、メイファが自分の意志で来たと聞いたことや、メイファの表情や行間からも和解できたということは読み取れると思います。さらにパオ自身が、優れた風水師であることを考えれば、二人が和解できるという結果も予想出来ていたのかもしれません。
 

パオから送られてきたメールの内容

書き下し文はジェットの台詞を参照します。まず全文を引用。

在案山里把聖獣找出来(案山より聖獣を見い出せ)
我在四神相応的地方(我、四神相応にあり)

それでは用語を拾っていきます。聖獣とは四神(青龍・白虎・玄武・朱雀)のことです。そして相応とは、つりあいがとれているという意味です。これは四神相応(しじんそうおう)で一つの言葉です。

次に案山。案山とは朱雀側にある山(丘?)の事らしい(これに関しては後半でもう少し補足します)です。メイファが「案山とはマウンテンホテルビルのこと」と説明していますので、パオのお告げ通りにメイファはビルに登り、四神の方角を確かめます。

確認した四神の相対的方角。右を指さし青龍、その後ろを振り向き白虎。そこから右を向き玄武、そして真後ろを振り返り朱雀。この順番で確認していきます(作中では四神に似た形の建物が配置されています)。北に玄武を配し、東西南北に四神が座する形になります。そしてその四神を結んだ十字の中心・四神相応の地に都市を築くのが、メイファがつぶやいた「十字天心の法」になります。平安京などがこの四神相応の地とされています。

しかし案山は四神の位置、もしくは四神相応の地から定義されている物がほとんどで、案山の位置から四神、四神相応の地を導き出すという考え方は見当たりませんでした。そのためメイファが、なぜ案山を見つけられたのかは分かりません。

後半はそのまま、私(太陽石)は四神相応の地にあるという意味です。

それではパオの文面を意訳します。

マウンテンホテルビルから青龍・白虎・玄武・朱雀を探せ
太陽石は、四神相応の地にある

以上。そして追加の補足。

朱雀側にある案山。案山の後ろにそれよりも高い山・朝山があるというのが風水上の地形と書いてある物を見つけました。少しややこしい(というか意味が分からない)のですが、四神相応の地から見れば案山・朝山自体が「朱雀」になる場合もあるそうです。その説に照らし合わせると物語上は朱雀が朝山という事になるのかと思います。しかし平安京などの解説を見ると、開けた土地が朱雀となっていて、案山・朝山の説明は見当たりません。それどころか山がありません。(天王山・大山崎があるとそれらしい事が書いてある本もあるのですが……)

基本的には案山・朝山に関してはネット情報ですが、一次ソースの文献が全く分からなかったため、この案山がらみのことに関してはよく分からず終いでした。そのため説明もかなりあやしげです……

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参照・引用(外部リンク)

『グリムの昔話 1』 フェリクス・ホフマン 編 / 大塚勇三 訳 / 福音館書店 / 2002
『グリムの昔話 2』 フェリクス・ホフマン 編 / 大塚勇三 訳 / 福音館書店 / 2002
『風水学入門』 島村知里 著 / 棋苑図書 / 2008
『本当の方位学・気学教えます』 柴山壽子 著 / 幻冬舎ルネッサンス / 2011
『京都式風水であなたの家が生まれ変わる』 ほへと 著 / ワニマガジン社 / 2011
『平安京の不思議―古都に眠る歴史の謎を訪ねて』森浩一 編 / PHP研究所 / 1994
『平安京―その歴史と構造 』 北村優季 著 / 吉川弘文館 / 1995
Wikipedia - 鬼門http://ja.wikipedia.org/wiki/鬼門
伝統風水師 秀山 - 地理風水http://syuzan.weebly.com/22320297023908027700.html
伝統風水師 秀山 - パワースポットには大きく分けて5つのパターンがあります。
http://ameblo.jp/td-fengshui/entry-11381871051.html
福岡の伝統風水 オフィス大渓水 - 案山でみる風水パワースポットhttp://ameblo.jp/daikeisui/entry-11065031302.html

「カウボーイビバップ」各話の考察

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