2014.05.07

「スペードの意味についてと回想シーンの解説。それとアニーの写真での個人的勘違い」

カウボーイビバップ 第5話堕天使たちのバラッド

絵コンテ:渡辺信一郎 / 演出:渡辺哲哉 / 脚本:横手美智子

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2800万の賞金がかけられている、レッドドラゴンの幹部マオ・イェンライ。ジェットの忠告を聞かず、マオを追うスパイク。しかしそれはスパイクを殺すために仕掛けられた罠だった。

第5話の主要スタッフ。絵コンテ・渡辺信一郎、演出・渡辺哲哉。脚本は横手美智子。作画監督・川元利浩。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

2018.11.29 修正

評価の高い第5話。僕は第4話からはまりましたが、周囲ではこの第5話からはまったという声が大きいような気がします。僕もこの話は好きです。好きなのですが、個人的な感想を一つ。

ビシャスに関してなのですが、どうもこういうキャラクターが好きになれません。もちろんビシャスの性格のことではなく、見た目や台詞に関してです。長い髪の毛もそうですし、カラスを肩に乗せたり、武器が刀だったりとか、ちょっと仰々しい台詞とかもろもろ受け付けないんです。キャラクターを立たせるという意味で、こういう設定だということは理解できるのです。そして決して悪くはないのです。むしろ良い設定だと感心するぐらいです。ただ生理的に受け付けないのです。なんというか「そんなやついないだろ……」と思ってしまうのです。

また今回書きたいことが一つ。それは初見時に大きな勘違いをして、伏線だと思ってしまった部分があります。この解釈を友人にした際には、読解力のない馬鹿呼ばわりされてしまいました。しかしきっと僕だけではなかったはず。もし共感できる方がいれば嬉しいです。

< 第5話に関して >

第5話でスパイクがレッドドラゴンのメンバーであったことが明かされます。そして初めてビシャスが登場。「ジュピター・ジャズ」「ザ・リアル・フォークブルース」へと続くスパイクの物語・第二幕への転換点となっています。ただ今回は第5話の解説がメインになりますので、本筋に関わるスパイク・ジュリア・ビシャスの解説は軽くふれるだけにしておきたいと思います。

主人公

「スパイク・スピーゲル」

ストーリー

「マオを追っていたスパイクが、ビシャスにマオが殺されたことを知り、敵討ちに行くが引き分けてしまう」

分岐点と概略

第一幕概略 「賞金首のマオを追うスパイクが」
第二幕への転換点(5m10s) 「ジェットの静止を振り切り出発する」
第二幕前半概略 「情報収集」
中間点(11m00s) 「マオの死が明らかになる」
第二幕後半概略 「渡世の仁義を貫こうとする」
第三幕への転換点(14m00s) 「教会に乗り込む」
第三幕概略 「ビシャスと対決し引き分ける」

上記の補足。中間点でマオの死が明らかになるが、各々の情報源は違っています。スパイクはアニーから、ジェットはネット(DEEP SPACE というサーチエンジンです)から、フェイは目視となっています。

第5話を分解

カウボーイビバップ 第5話 パラダイム

1.契約書に血判を押すマオ
RED DRAGON,INC. の下に毛恩来の文字。マオは漢字で書くと「毛恩来」です。多分、毛沢東と周恩来が合体した名前でしょう。そしてその隣、契約を交わした相手は、WHITE TIGER,INC. の カルロス(Carlos)です。(読めなかったのでエンドクレジットで確認)

2.フェイ「敵対組織幹部の殺人容疑で、2800万の賞金」
そのままなのですが、受け流してしまいそうな情報なので補足。敵対組織の殺害というのは、冒頭のマフィア幹部の飛行機が爆破されたシーンのこと。マオが死んだことは公にされておらず、敵対組織の幹部を殺したのはマオということになっている。

★.フェイが床に落ちたトランプを拾う(クリックで移動)
スペードのエース。フェイが拾ったトランプには「SPACE」と印字されています。くだらない豆知識を一つ。昔イギリスではトランプに税金がかかりました。そしてこのスペードのエースに税金を納めた証明印を押しました。その名残が今も続いているため、フェイが拾ったスペードのエースにも会社名が印字されていたのではないでしょうか。

横道にそれましたが、スペードのエースが暗示する内容の考察は後述します。

3.マオについて調べるジェット
セキュリティーのロックを解除した際、画面に表示される英文。まず原文を下記に引用します。

MAO_YENRAI
One of the Executive of the Red-Dragon.
Concerned with Disputes against the W.T. in 2065.
Recently changed his line to the moderates,
and Maked the project of cooperation with the W.T..
But….
AND ARTICLE CONCERNED.

それでは訳します。

マオ・イェンライ
レッドドラゴンの幹部の一人。
2065年の W.T. との紛争に関与。
最近、穏健派へと立ち位置を変更し、
WTとの共同プロジェクトを手掛けていた。
しかし……
関連記事(正確にはAND CONCERNED ARTICLE(s). のような気が……)

ここで出てくる W.T. とは冒頭でマオと契約を交わしたマフィアの団体名です。W.T. の幹部殺害で賞金がかかっているマオ。しかしジェットはマオが争いを止めたとの情報を目にします。このことを不自然に思い、色々と調べていく過程で、ジェットはマオが殺されていることに気づいたのではないでしょうか。

なお、ジェットが「賞金がかかっているのは、さすがにガセじゃなさそうだな」とこの画面を見た後つぶやきますが、これは画面の情報を見たからではなく、プロテクトがかかっていたからだと思います。

4.オペラハウスに流れるアヴェマリア
映画などによく使われる「アヴェマリア」ですが、このアヴェマリアを聞くまで色々なバージョンがあることを知りませんでした。しかし、どうしても「アヴェマリア=ギャング映画の曲」というイメージが抜けきれないです。

A・B・Cの連携で個人的な勘違い(クリックで移動)
とりあえず正解と思われる解釈を書き出します。間違った思い込みは後述いたします。

A.マオと写るアニーの写真
中央にマオ、右側にアニー、そして左側に写る謎の男性。順当に考えればこの男性はアニーの夫です。そしてこれが正解だと思います。(んなわけないな……)
B.アニー「随分人に探させていたんだよ。きっと生きてるはずだって」
マオはスパイクに戻って欲しかったため、探していたという単純な話です。
C.ジェット「まさかお前、マオの」
「敵討ちに行くつもりか」とつながります。

<A部分の追記>
やはり気になる写真左下に写る謎の人物。全24話何度見返しても何の情報も見つかりません。ただ意味ありげにインサートされる演出から考えれば、アニーの旦那であるはずはないかと。

もうこれは消去法の推測ですが、演出面から考えれば『スパイクの父親』というのが妥当な線ではないでしょうか。これならスパイクが「昔世話になった」という台詞も納得がいきます。またスパイクが「アナスタシア」と呼んだ際に、アニーが「あたしをその名前で呼んでいいのは、二人しかいないんだから」と言った部分も、マオとスパイクの父親、という解釈で納得がいく説明が出来るかと思います。

5.スパイク「渡世の仁義ってやつさ」
これに関してはあまり良い台詞だとは思わなかったのですが、渡世とは直訳で世渡りのことです。しかし一般的には渡世人、つまり「ヤクザ」という意味です。高倉健の映画に「なんの恨みもありませんが、渡世の義理でお命頂戴します」みたいな決め台詞があったような気がします。「からじしぼ〜た〜んー」って作品だったと思います。(違う作品だったらごめんなさい)

6.スパイク「おれはただ醒めない夢を見てるだけさ」
あまりここで詳しく解説すると、最終話前に考察が終わってしまうのでちょっとだけ。ジュリアと自由気ままに生きることを望んだスパイク。しかしそうはなりませんでした。自由気ままな日常、しかしジュリアはいない。これが繰り返し出てくる、醒めない夢をみているような感覚だったはずです。スパイクはジュリアと一緒にいる時だけにしか、生きていると感じることが出来なかったのだと思います。(ちょとだけ補足すると、ジュリア=本当に生きている女=俺がなくした俺の片割れ=俺が欲しかったかけら、から考えてます)(ちょっと書いてある意味が分からない……そんな面倒くさい話なのだろうか?)

<修正>
引っ張る部分ではなかったですね。台詞の意味は話内で完結しています。
まず前後の会話を抜き出します。

ビシャス「天国を追い出された天使は、悪魔になるしかないんだ。そうだろうスパイク」
スパイク「俺はただ覚めない夢を見てるだけさ」
ビシャス「今覚めさせてやる」
〜省略〜
ビシャス「命ごいか」

順にビシャスの台詞から。ざっくり言えば「スパイクは堕天使だ」ということです。もともと天使は神の意思を実行するために作られた存在です。しかし中には神に反する行動をとる天使が現れ、天国を追われてしまいます。これが堕天使(ビシャスの言う悪魔)です。

レッドドラゴンという天国を追われたスパイク(天使)は、レッドドラゴンから追われる身(悪魔)になるしかないという意味で言っています。悪魔は悪さをするというイメージから、レッドドラゴンから追われるではなく、レッドドラゴンに牙を向けるという解釈も浮かびますが、そのあとにビシャスが「命ごいか」と言っているので、追われるで間違いないと思います。

次にスパイクの台詞。結局のところ「夢」が何を意味しているのか定義付けが必要になります。そのためにはまず「夢」という言葉の意味を知らなければいけません。辞書から抜き出します。

① 眠っている時、実際に経験しているかのように思ったり感じたりする現象。
② はかないこと。
③ 実現しそうもない願望。
④ 希望。願望。

上記4つの意味が出てきます。そして「から覚める」という状態を考えた時に、①か③の意味にしぼられます。当然スパイクは眠っているわけではありませんので、ここでの意味は③で間違いないかと思います。つまりスパイクが言っている「覚めない夢」とは「ジュリアと組織を抜けて自由気ままに暮らすという、実現しそうにない願望」ということです。そう考えると、その後に続くビシャスの「今覚めさせてやる」という台詞も、「今お前を殺して、その夢が叶わなかったということを教えてやる」という意味でつじつまが合うかと思います。

補足。夢は「眠っているような感覚」ということで、①とも解釈が出来ますが、その場合夢の中のような現実は、ジュリアがいない世界となってしまいますので、ビシャスの「今覚めさせてやる」という台詞のつじつまが合わなくなるかと思います。

ただし、スパイクは「実現しそうにない願望」と本気で言っていたのか、自傷的に「実現しそうにない願望」とビシャスに返したのか、判断の分かれるところです。このシーン的にはビシャスの仰々しい例えに「だけさ」と返しているので、心理的には後者の考えに近いような気がします。

7.切りすぎた盆栽の枝を見つめるジェット
ジェットは「知らん!」と通信機を切るが、結局はスパイクを迎えに行きます。この時の上記のカット。切りすぎた枝を元に戻すことが出来ないように、もしスパイクが殺されてしまったら、と考えて救出に向かったのではないでしょうか。

8.ステンドグラスを突き破り落下するスパイク
分解8は明らかに間違っている部分が何ヶ所かあります。ただフォローは全話まとめで行います
第1話冒頭につながるスパイクの回想シーン。当然のことながら、過去を見ている左目のアップから入ります。このシーン、回想に回想がミックスされ、ジュリアに惚れるまでの良い思い出を明るいトーン、駆け落ちに失敗した記憶を暗いトーンと、演出で上手に分けられています。

  • 第1話で登場した駆け落ちするために死にに行く時の回想(キーカラーがブルーのカット)
  • 今回追加されたジュリアに惚れるまでの回想(キーカラーがイエローのカット)

第5話の時点で考察をするのは早いかもしれませんが、時系列順に並べます。先頭の番号はカットの登場順です。

1.悲しそうに窓際に立つジュリア(イエロー)
4.ビシャスに背中をあずけて戦うスパイク(イエロー)
5.ビリヤード場でスパイクとビシャスがジュリアに初めて会う(イエロー)
7.ジュリアに銃を突きつけるビシャス(イエロー)
9.裸でベッドにいるジュリアとビシャス(イエロー)
11.傷ついたスパイクがジュリアの家?の前で倒れる(イエロー)
12.ジュリアに手当をしてもらったスパイク(イエロー)
————
25話.スパイクが墓地で待ってるとメモを渡す(ブルー)
25話.ビシャスに脅されるジュリア(ブルー)
3.窓から雨の降る外へスパイクのメモを破り捨てるジュリア(ブルー)
6.薔薇の花束を持ちタバコを吸うスパイク(ブルー)
8.スパイクが教会へと向かい、銃撃戦(ブルー)
2.薔薇の花束に隠したマシンガンでの銃撃戦(ブルー)
10.銃でやられるスパイクがほほえむ(ブルー)

初見時では(10)の後に(11)が来ているように感じましたが、時系列は上記の通りだと思います。理由はキーカラーの演出。そう考えるとスパイクはジュリアに手当をしてもらった時に惚れた、という解釈で間違いないかと思います。

そしてもう一つ重要な考察。スパイクがビシャスの女を奪ったという流れで考えた場合、ビシャスとジュリアが付き合うことになった理由。25話でジュリアに銃を突きつけ「逃げるのか」とビシャスがいうシーンと、(7)は別シーンと考えました。根拠は第5話で追加されたのは、スパイクがジュリアに惚れるまでの回想だけのはずだからです。ここだけ駆け落ちのシーンからカットを引っ張ってくるなどということは、演出上・そして構成上考えにくいです。

時系列順に追えば、(5)ビリヤード場でジュリアとビシャスが出会う、(7)銃を突きつけ俺の女になれと脅す、(9)ビシャスに体を許してしまうジュリア、です。そのため、ベッドにいる二人は幸せそうなカップルという感じではなく、手込めにされたような(上手い言葉が見つからない……)カットになっているのだと思います。(追記:もともと納得がいかなかった部分。たぶん違う)

<追記>
第5話に重点を置いた場合の考察は上記の通りです。しかしその上であえてスルーしたことがあります。上記(7)と25話のシーンで使用されているカットは色違いの全く同じ物です。そしてこれを同じシーンと考えてしまうと上記の流れとは全く違う物になるかと思います。キーカラーは単純に、スパイクが死にに行く雨の日と、それ以外の日に分けたと考えるのが妥当だと思います。その場合、もちろん(7)だけではなく、(11)と(12)の位置もそこで正しいのかという疑念も湧いてきます。これに関しては全体に関わることですので、全話まとめで改めて考察を行いたいと思います。(といいつつ、第13話 ジュピター・ジャズ(後編)でも再度考察を試みてみました)

<さらなる追記>
(5)のカット。あのー……あれ?……もしかして……ビリアード場でジュリアの目線の先にいるのはビシャスですかね……そしたらジュリアが振り返った視線の先には、スパイクしかいなかったことになります。ということは?
 

スペードのエースが意味すること

トランプのマークにはそれぞれの意味があったと思います。(諸説あるので下記の意味でなかった場合、完全に無意味な考察になってしまいます)

  • ハート:愛
  • ダイヤ:金
  • クラブ:智慧
  • そして、スペード:死

フェイはマオを追う際にスペードのエースを引き当ててしまいます。そしてその後、実際にフェイは命の危険にさらされるような事態におちいってしまいます。

そしてラストのシーン。フェイに枕を投げつけられたスパイクは、スペードのエースを引いてしまいます。死ぬはずだったフェイを助けたため、死のカードはフェイからスパイクに移ってしまう。そしてこれがスパイクの死を暗示しているのではないのだろうか?

 
第5話の考察は以上です。それでは以下に僕が勘違いしてしまったことを書き連ねたいと思います。

個人的にしてしまった勘違い

大いなる勘違い。しばらく見続けた時、何かがおかしいことに気づきました。勘違いをするきっかけになったポイントは四つ。

A.マオと写るアニーの写真
右側に写る謎の男性。初見時この写真を見たときに、瞬時にひらめきました。アニーの旦那がマオで、スパイクは二人の息子ではないかと。この写真の人物、髪型や髪の色は違いますが、顔が何となく似ていませんか?

B.アニー「随分人に探させていたんだよ。きっと生きてるはずだって」
この台詞を聞いたときに上記の写真の解釈が正しいのではないかと勘違いが加速。

C.ジェット「まさかお前マオの」
ここで勘違いが確信に変わります。この時のジェットの台詞回し。「まさかお前、マオの息子じゃないだろうな」とジェットの声が僕にははっきりと聞こえました。

そして、第6話の冒頭になりますが、目の手術を受けているスパイク。しかしこれを全身の手術だと勝手に解釈。そのため今と写真の姿が違うのかと妙に納得。

当然のことながら、これ以降にそんな話は出てきません。完全な勘違いなのですが、同じように感じた人はいなかったのでしょうか?僕の周りでこの考えに共感する人は全くいませんでした。あげくの果てに馬鹿呼ばわりです。しかしそれは結末を知っているからであって、この段階ではそんな風に考えても馬鹿ではないと思うのだが……

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参照・引用(外部リンク)

『総図解 よくわかる 聖書とキリスト教』 前島誠 監修 / 新人物往来社 / 2011
『角川 新国語辞典』 山田 俊雄・吉川 泰雄 編 / 角川書店

「カウボーイビバップ」各話の考察

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