2015.02.24

「構成や細部に渡る演出が非常に良く出来たシュチュエーションコメディーです」

カウボーイビバップ 第17話マッシュルーム・サンバ

絵コンテ:渡辺信一郎 / 演出:森邦宏 / 脚本:横手美智子・渡辺信一郎

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食料難とガス欠のビバップ号。慣性の法則でエウロパを目指していたが、当て逃げをされ見知らぬ星に不時着してしまう。当面の食料を調達するためにエドとアインは、町へと向かうのだが……

第17話の主要スタッフ。絵コンテ・渡辺信一郎。演出・森邦宏。脚本は横手美智子・渡辺信一郎。作画監督、しんぼたくろう・中田栄治。メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

2017.05.07 修正

スギヒラタケというキノコがあります。

田舎に行くと、鍋にして普通に食べられているキノコです。分類としては毒キノコではないはずですが、時々食べて亡くなる人も出たり出なかったりです。一応、県や厚労省は食べないようにと注意喚起をしています。ちょっと昔の話ですが、出張である地方に行った時、じーさんばーさんは普通に食べていました。しかし、田舎に行って出てきたら注意して下さい。「大丈夫、大丈夫」とか言われても絶対大丈夫じゃありません。死にます。出されても食べないほうが身のためです。

余談は以上。

今回はあまり深く考える部分も少ないため、本文が非常に薄い内容となっています。

< 第17話に関して >

主人公はエドです。今回も引き続きスパイクの活躍はありません。

第17話は中身がなく、個人的にはあまり好きな話ではなかったのですが、よく見ていくと物語の構成や細部に渡る演出が非常に良く出来ています。ジャンルで言えばシュチュエーションコメディーだと思われます。あまり好きにはなれなかった理由は、個人的にシュチュエーションコメディーが好きではないというのも関係しているかもしれません。

補足。全体の軸になっているのは、ビバップ号の食料難です。これを単に状況設定と解釈する事も出来ますが、これが物語を通して解決されるべき問題であると判断しました。また「エドがドミノに賞金がかけられていることを知る」、これを中間点と考えることも出来るかと思います。実際にそこからエドの行動方向がドミノを追うということに変わります。しかしそう考えた場合、物語の軸は賞金首ということになってしまします。そこで今回は、「ドミノが落としたヤバキノコを手に入れる」という出来事を中間点と判断しました。

<修正>
中間点は「エドがドミノに賞金がかけられていることを知る」のまま。前半は食料その物を探すという流れです。しかし手に入れたキノコは食べられる物ではありませんでした。エドは手詰まりになりますが、ドミノに賞金がかけられていることを知り、今度は賞金で食糧難を解決するという別ルートの行動に移る、という構成です。

主人公

「エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世」

ストーリー

「食料のないビバップ号を助けるべく町に向かったエドが、キノコを持って帰り、皆でキノコを食べる」

分岐点と概略

第一幕概略 「食糧難のビバップ号が当て逃げされ砂漠に不時着」
第二幕への転換点(5m45s) 「食料を求めエドが町へ向かう」
第二幕前半概略 「食料を探す」
中間点(15m00s) 「当て逃げ犯に賞金がかけられていることを知る」
第二幕後半概略 「賞金首を追う」
第三幕への転換点(19m30s) 「賞金首を逃しキノコをもらう」
第三幕概略 「毎日キノコを食べる」

第17話を分解

カウボーイビバップ 第17話 パラダイム

1.机の上に置かれた空の箱
フェイが食べたものは何だったのか?結論から言えば何も分からなかったのですが、気になったので箱を見てます。箱の側面には英語で、

RATION 10 in 1 (食料 10個で1セット)
10 RATIONS (十個入り)
WT 49 CU 1.5 (重さ 49kg / 体積 1.5L)
MENU #5 (5番目のメニュー)

とあります。ニュアンスは合っていると思いますが若干意訳です。十個入の食料箱であったことは分かりますが、中身が何であったかは分かりません。

2.砂漠に落下するビバップ号
この時、砂漠に立っている看板。この星の名前が書いてあるのかと思ったのですが、分譲区域(DEVELOPMENT TRACT)の売り出し看板でした。エドが町に向かう際も「FOR SALE」など風化した看板が立っており、この星の宅地開発は失敗しているという設定だと思われます。この星がどこであるかは、分解6まで引っ張ります。

3.シャフト「俺がなぜ、空の棺桶を引きずって歩いてるか〜」
この台詞で真っ先に浮かんだのが、横山光輝版三国志の龐徳(ホウトク:ホウが文字化けの可能性あり)。龐徳が忠誠を疑った諸将を黙らせるため、棺桶をひきずって関羽を討ちに向かうというお話です。この話、正史ではなく羅漢中の三国志演義のネタだったと思います。演義は明代に書かれた小説のため、元ネタが別にあるかもしれません。何かの本でこれの元になった話を読んだような気もするのですが……ただし今回・第17話の元ネタは西部劇「続・荒野の用心棒」だと思います。映画でジャンゴという主人公が棺桶を引きずっています。

また腸捻転についても補足。その名の通り、腸がねじれる病気です。ありえない程の腹痛や吐き気などが症状としてあらわれます。ただ腸捻転が生死に関わる病気だったかどうか……もしかしたらここは笑いどころなのかもしれません。

4.スパイク・フェイ・ジェットが見る幻覚
ヤバキノコを食べて三人は幻覚を見ます。その中身に関して。何か意味があるのではないかと必死に考えてみたのですが、全く分かりませんでした。単純にお薬をやった時こんな感じの幻覚を見るという表現、もしくは本人の体験談ということなのでしょうか……?

5.ドミノ「こりゃダメっと」
物語の最後にエドがドミノからバッグをもらいますが、中身はシイタケでした。このシーンでドミノは、売り物にならないキノコをバッグに詰めています。さりげない部分ですが前振りになっています。

6.踏切が降り、貨物列車が横切る
貨物列車の後ろの空には木星が浮かんでいます。ここからこの舞台となった星が、木星の衛星のどれかだということが分かります。その中で人が住める星は四つ。これまでの話で、ガニメデ・エウロパ・カリストは登場していますので、この星はイオという事で間違いないと思います。

ちなみにこのシーンでは、上記カット以外にも進行方向(ドミノが逃げる方向)の反対側が映る時、空に木星が浮かんでいます。

7.アイン「(ありがとう)」
なぜアインと牛は会話が出来たのか?アインの犬種がウェルシュコーギーだという事が関係していると思います。ウェルシュコーギーは、元々羊や牛を追い立てる牧羊犬として繁殖された犬種です。その事から、牛や羊とコミニュケーションがとれる、という設定なのではないでしょうか。

8.キノコを確認する警官
警官の肩にある腕章の文字。「10」と番号が振ってあるのだと思っていましたが、これは「IO(イオ)」であるということに気付きました。この腕章はすでに中盤でも登場しています。そう考えると、背中の「PDI」も「Police Department IO」の略だと思われます。(正確にはIPDとなるのだとは思いますが……)

今回は以上。黄色枠のトピックスもありません。

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参照・引用(外部リンク)

『続・荒野の用心棒』 監督:セルジオ・コルブッチ / 1966

「カウボーイビバップ」各話の考察

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