2014.04.23

「ゲーテとチャーリー・パーカーは有名ですけど、ポーカー・アリスって誰?」

カウボーイビバップ 第3話ホンキィ・トンク・ウィメン

絵コンテ:赤根和樹 / 演出:森邦宏 / 脚本:山口亮太・信本敬子

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一攫千金を狙ってカジノにやって来たスパイクとジェット。そこでスパイクは謎めいた女ディーラー・フェイと出会う。しかし手にした一枚のチップをめぐる人違いから、カジノで行われていた裏取引に巻き込まれしまう。

第3話の主要スタッフ。絵コンテは赤根和樹、演出は森邦宏。脚本は山口亮太・信本敬子。作画監督・本橋秀之、メカ作画監督・後藤雅巳。

以下は核心部分を含みます

ゲーテは大体の人は知っているはずです。一度聞いたら忘れられないタイトル「植物変態論」の著者です。チャーリー・パーカーはモダンジャズの創始者、いわゆる「ビバップ」の生みの親です。この二人は有名なので、特に問題はないと思います。しかし、第3話の台詞で登場する最初の人物「ポーカー・アリス」とは誰でしょうか?

その前にちょっと昔話。僕が本格的に映画を見始めた頃、カート・ラッセルという役者にはまっていた時期があります。「遊星からの物体X」のカート・ラッセルです。その流れで「トゥームストーン」という映画を見て、これまた西部開拓史にちょっとだけはまった事があります。その時に何かで見た記憶があるのです。映画だったのか、本だったのか、はたまたテレ東のお昼のロードショウだったのか。確かに見たのです、女ギャンブラーが出てくる話を。

どんなに頑張っても思い出せなかったので、IMDbで探してみたらあっさり見つかりました。エリザベス・テイラー主演の「Poker Alice」というTVドラマが。

http://www.imdb.com/title/tt0093755/(外部リンク)

ただ僕の記憶だと、これじゃないんです。なんというか、いかにも西部劇というような作品だった気がします。しかし今となっては確認のしようがありません。ちなみに上記作品、IMDbではエリザベス・テイラーの役名が「Alice Moffit」となっていますが、実在するポーカー・アリスの本名は「アリス・アイバース / Alice Ivers」です。(ポーカー・アリスの人物紹介は後述します)

今回は、用語解説が中心になってしまいそうです。

< 第3話に関して >

今回も主人公はスパイクです。そしてフェイが初登場。また今回、昔ジェットがISSPにいた事が明かされます。ただISSPが何であるかの情報は出ません。そして、第2話で拾ってきた犬にアインという名前をつけた事が、ジェットの台詞で分かります。

主人公

「スパイク・スピーゲル」

ストーリー

「カジノにやってきたスパイクが、裏取引に巻き込まれて、わらしべ長者を試みるが失敗」

分岐点と概略

第一幕概略 「カジノにやってきたスパイクが」
第二幕への転換点(6m30s) 「裏取引の相手と間違われる」
第二幕前半概略 「裏取引に巻き込まれ追われる」
中間点(12m00s) 「カジノから逃げ出しビバップ号に戻る」
第二幕後半概略 「マイクロチップの裏取引だと気づく」
第三幕への転換点(18m00s) 「チップの取引に向かう」
第三幕概略 「取引に失敗し再びカジノに向かう」

第3話を分解

カウボーイビバップ 第3話 パラダイム

1.店主「明眸皓歯」
フェイと店主の四字熟語のかけあい。「眉目秀麗」「一攫千金」「千客万来」「先制攻撃」この四つは簡単に聞き取れます。しかし「眉目秀麗」に対する店主の返答。流れから考えれば「容姿端麗」的な意味合いの言葉のはずなのですが、「メイボーコーシー」と中国語のような台詞を発しています。しかしこれは日本語で「明眸皓歯(めいぼうこうし)」です。目が明るくて歯が白いといった美人への褒め言葉。中国語だと「ミンモウハオチィー(míng móu hào chǐ)」です。

2.フェイ「彼女が生きていれば219歳よ」
「ポーカー・アリスが生きていたとは」と言われたフェイは、上記の台詞で答えます。ポーカー・アリスことアリス・アイバースは1851年生まれ。そう考えるとカウボーイビバップの時代設定は西暦2070年(もしくは2071年)である事が分かります。ただこのやりとり、ポーカー・アリスが実在の人物だと分からないと、何かフェイに関する大きな伏線であるかのようにミスリードされてしまいます。

3.ジェット「お前はやるなよ。目が良すぎるんだからな」
スパイクの強さを考えると、額面通り目がいいという意味ぐらいにしか考えていませんでした。しかし、片方の目が義眼である事を考えると、もしかしたらその義眼の性能なのかもしれません。そう考えるとスパイクの人並み外れた動体視力も理解出来ます。ただし根拠はないので間違いの可能性もあります。

4.チップを飲み込むスパイク
序盤、カジノに向かうエレベーターでスパイクはタバコを飲み込みます。そしてカジノに着き、飲み込んだタバコを吸い殻入れに捨てます。この説明があるため、チップを飲み込んでも後ではき出せることが分かります。しかしスパイクのこの特技、第3話以外で登場することはなく、ましてや生かされる事もありません。この特技は必要だったのか若干の疑問が残ります。

5.フェイ「私たちの一族は愛を求めて放浪するロマニーなの」
フェイの生い立ちとは全く関係ありません。後付で解釈する事は出来ますが、多分これは作り手側が「ゴールジュ」という単語、そして、フェイ「ハイ、ゴールジュ」スパイク「よう、ロマニー」というかけ合いをやりたかったから、使ったのではないかと勘ぐってしまいます。

しかし好意的に解釈をすれば、生い立ちが分からないフェイは、帰る場所もなく各地を旅するロマ族のような生き方に、自分自身を投影していたのかもしれません。そして自分のルーツはロマ族にあるのではないかと、思い込むようになったのではないでしょうか。そう考えると、全体終盤でのフェイの気持ちの変化が、かなり深みを持ってきます。

ちなみにロマニーとゴールジュに関しては第15話のトピックスで解説しています。

6.スパイク「オキドキ」
意味が分からなくともニュアンス的にはOKと分かります。そして実際この言葉も「Okey-Dokey」で「了解」の古典的なスラングです。ただ実際はあまり耳にする事はないような気がします。

7.スパイクを回収にくるビバップ号
スパイクが取り引きに向かう時、天地が逆になる演出があったので、当然ながらビバップ号の甲板が頭上に来ています。考えてみれば無重力状態では上下の決まりはないので、当然こういう形もありえます。この演出になるほどと感心してしまいました。

8.男「チャフをまきやがった」
チャフ。なぜか映画ではあまり聞いたことがないのですが、SFアニメではよく聞きます。一応説明。電波を反射させてレーダーを妨害するために使います。自衛隊や米軍が訓練でパラパラパラとまき散らしているやつです。ただバシャーと火の塊をまき散らすのは、フレアといって別物です(違いの説明が下手ですいません)。チャフは電波の妨害、フレアは熱検知の妨害と効果が違います。
 

台詞で登場した実在の人物

ポーカー・アリス(アリス・アイバース / Alice Ivers)
1851年イギリス生まれの実在のギャンブラー。幼少期にアメリカに移住、20歳で鉱山技師と結婚。しかし数年後に夫を事故で亡くし、生活のためポーカーを始めます。賭場ではあまり見かけない女性ということで、旧西部(今のコロラド近辺)で注目を集めます。そして各地でディーラーを務め「ポーカー・アリス」として名をはせるわけです。その腕前は(台詞にもありましたが)79歳で亡くなるまで一度も負けることはなかったそうです。

葉巻をくわえ、懐に38口径リボルバーを忍ばせる女性ギャンブラー。男装の麗人のようなイメージでしたが、写真を見る限りでは、ぼくとつで剛胆な感じの人です。史実でも自分の賭場を荒らされた際、暴れていた男達を38口径リボルバーで撃ち殺したりしています。

チャーリー・パーカー
アメリカのサックス吹き。というか歴史に名を残すジャズの巨人です。上記しましたが、ビバップの生みの親。「カウボーイビバップ」のビバップです。どんな人物だったか知りたい場合は、クリント・イーストウッドの「バード」という映画がおすすめです。ちなみにこの映画、重いです。見れば分かるのですが、とにかく重いです。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
ワイマール公国宰相。ナポレオンのお気に入り「若きウェルテルの悩み」の作者。ちなみにナポレオンが会った時に、「ウェルテルは7回も読みました」と言ったとか言わなかったとか。

以上。

ポーカー・アリス以外はウィキペディアに載っています。詳しくはウィキペディア等で調べた方が早いと思います。

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参照・引用(外部リンク)

百度百科 - 明眸皓歯 http://baike.baidu.com/view/269472.htm
Famous Frontier Gambler - Poker Alice http://www.legendsofamerica.com/we-pokeralice.html

「カウボーイビバップ」各話の考察

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