2013.04.29

「こんな婆ちゃんがいたら大迷惑じゃないですか!登場人物を殺すという事。夏希はなぜ健二にキスを?の三本立て」

サマーウォーズ

監督:細田守 / 脚本:奥寺佐渡子

70

数学が得意だが気弱な高校生・健二。憧れの先輩・夏希からバイトに誘われ、夏希の本家・陣内家で過ごすことになる。そんな中、健二はネット上の仮想空間OZで起きた事件に巻き込まれ、その事件が現実世界にも影響し始める。現実世界に訪れる危機に、健二と夏希、そして陣内家が立ち向かう。

監督に細田守、脚本・奥寺佐渡子、キャラクターデザイン・貞本義行など『時をかける少女』のスタッフが制作を手がける。

以下は核心部分を含みます

2014.04.08 加筆

「三丁目の夕日」的な古き良き日本という事なのでしょうか。懐古主義的な大家族の素晴らしさなのでしょうか。個人的に好きにはなれないはずの作品。しかし何度見ても面白いと思える不思議さ。そしてこのブログを始めたときに、最初にレビューを書いた作品。この作品の点数を基準にするつもりでしたが、基準となるこの作品が69点と70点を行ったり来たり。点数を確定させるためにも再度考察いたします。

<初回鑑賞時>
細田守監督の「時をかける少女」が非常に良かったので、公開が始まったときに必ず見ようと思っていた作品。個人的には奥寺佐渡子ファンでもあるので、見ないという選択肢はなかったと思います。ただ家族物かな?という先入観もあり、少しばかり抵抗感がありました。あまり期待していなかった事もあり、それなりに楽しめました。

ただ、栄おばあちゃんの設定が、どう頑張っても受け入れる事が出来なかった。警視総監に電話したり、救急専用回線を使ったりと、そんな事したら現場はめちゃめちゃじゃないですか。それにいったいどういった根拠があって関係各所に指示(実際はハッパをかけているだけだが)を出しているのか?非常時によかれと思って専門家でもない、一民間人が無責任にこんな事をしたら大問題です。それに陣内家の人々が、大学に納品予定のスパコンや自衛隊のアンテナモジュールを勝手に持ち出してきたりして、この家族はなんなんだろう?と疑問が残りました。

<1年後ぐらいに2回目鑑賞>
初回鑑賞時の疑問点(上記)が、それを通り越して不快に感じた。それに登場人物を安易に殺して、作品を盛り上げるというのはどうなのか?という作り手への怒りも湧いてきます。

(栄お婆ちゃんの死。この事に関しては、表面をなぞるだけではなく、この作品の本質的な部分が分かれば、作り手の素晴らしさが分かります。頭が悪い僕はそれを理解できていませんでした。詳しくは「登場人物を殺すという事」で解説します。)

<2011年から3回目以降鑑賞>
人工衛星が原子力発電所に落下するという設定。坊主憎けりゃ袈裟までなんちゃらでして、たかがそれくらいでと鼻で笑っていました。しかし3.11の震災があり、これがどれだけ大変な事なのかが分かりました。むしろ登場人物の緊迫感が足りないと感じるぐらいです。とはいいつつも、3.11以前は僕も鼻で笑っているぐらいですので、これぐらいの方がリアリティーがあるかもしれないです。

<まとめ>
まるでつまらない作品のように書きましたが、良作です。王道とも言えるストーリーで、こんなシナリオを書けてしまうというのはさすがだと思います。個人的には栄おばあちゃんの設定を始め、納得出来ない点が沢山あります。低い点数をつけてやりたいのですが、見れば見るほど良くできています。この作品を69点以下にした場合、70点以上の作品が減ると予想され、悔しいですが70点で確定させます。

< 物語に関して >

まず全体の概要。主人公は「健二」です。もしかして健二と夏希の二人?家族?などとも思ったのですが、全体構成を見てみると間違いなく「健二」です。ただテーマが若干悩みました。「人と人とつながり」としないと、主人公・健二と陣内家の関係をテーマと結びつけられない?そのようにも思ったのですが「家族の絆」が正解だと思います。

根拠は第二幕前半の前半・健二の台詞、「父が単身赴任で、母も仕事が〜家ではたいてい一人です。〜こんなに賑やかなのは初めてで。嬉しくて」です。つまり健二は陣内家に家族を見たのです。健二と陣内家を通して、人と人のつながりを描こうとしたのではなく、健二と陣内家のつながりを通して、家族を描きたかったのだと思います。

主人公

「健二」

テーマ

「家族のつながりは何よりも強い」

ストーリー

「気弱な高校生・健二が、陣内家という大家族に助けられ、世界を救う」

概略と分岐点

サマーウォーズ パラダイム

(画像はクリックで拡大出来ます)

第一幕概略 「気弱な高校生・健二が、」
第二幕への転換点(23min) 「謎のメールの暗号を解く」
第二幕前半概略 「OZの混乱に巻き込まれる」
中間点(60min) 「栄おばあちゃんの死」
第二幕後半概略 「ラブマシーンに挑むが負ける」
第三幕への転換点(89min) 「遺言に従い皆で飯を食べ団結」
第三幕概略 「ラブマシーンを倒し世界を救う」

ラブマシーンとの対決は、テーマにも関係してくるので簡単な考察を載せておきます。対決は全て、各幕直前の転換点を受けて二幕前半・二幕後半・三幕と三回あります。

一度目の対決は二幕前半。直接の対決ではなく、OZシステムの混乱を通しての対決になります。簡潔に言えば栄おばあちゃんという、絶対的存在をもって危機を乗り切ります。栄おばあちゃんに励まされる形で、公職に就いている家族が混乱に対処。また連れ戻された健二は、関係各所を励ましている栄おばあちゃんの姿を見て、自分に出来る方法で混乱に立ち向かいます。

二度目の対決の前に中間点の補足。中間点で陣内家は、栄おばあちゃんという家族団結の象徴を失います。家族の輪から外れ、直前で去った侘助は除くとしても、戦う事を決意する健二と男性陣、思い悩む夏希、葬式の準備を始める女性陣と、陣内家各々が別々の方向を向いてしまいます。

そして迎える二幕後半・二度目の対決。結論を言えばこの戦いは負けなければいけません。なぜならば、勝利は三幕(物語の解決)で描かれなければいけないからです。そして家族をテーマにしている以上、最後は家族の力で敵に勝たなければいけません。そう考えると状況は完璧です。すでに中間点を挟んで、戦う前から家族各々はバラバラの方向を向いているからです。

この状況で男性陣は、何を武器に戦うのか?構成を考えれば簡単です。「家族の力 → 勝つ」の逆、「○○の力 → 負ける」、その○○が高スペックマシンです。たぶんですが、この高スペックマシンで戦って負けるという設定は、(かなり初期の段階だと思いますが)結末から逆算で導き出したような気がします。またこのシーン、方法によっては機械の力で勝てたと言うのは無粋です。家族の力を描こうとしたこの作品では、絶対に物の力で勝ってはいけないのです。

そして三幕・三回目の対決。三幕への転換点で健二・陣内家は、遺言に従い団結をします。栄おばあちゃんが遺言という形で皆に力を与え、ラブマシーンに勝つことによって、健二と陣内家の面々はその死を乗り越えたのという事ではないでしょうか。

上記の補足。(まとめて書くとぐちゃぐちゃになるので分けました)

もう一つ、ラブマシーンとの対決の過程で、人と人とのつながりということも描かれています。一回目の対決では(非常に納得のいかない設定ではありますが)栄おばあちゃんのつながりで、関係各所が励まされ奮闘します。しかし二回目の対決では、栄おばあちゃんがいないために負けてしまいます。そして三回目の対決。栄おばあちゃんの変わりに、OZシステムを介して世界中の人々が夏希を助けます。ネットも現実世界も人と人とのつながりで出来ている。ネットが発達した時代でも、昔と変わらず人と人のつながりは大切だ、と言いたかったのでしょう。
 

登場人物を殺すという事

全体の中間点で、栄おばあちゃんの死という出来事が起こり、物語が大きく舵を切る。感想でも書いたのだが、登場人物をご都合主義で殺して、物語を盛り上げる事には批判が多い。その人物が、なぜ死ななければならなかったのか?本当に死ななければならなかったのか?必然性はあるのか?そのように理屈っぽく考える人は少なからずいると思う。僕もその一人だ。

しかしよく考えてみると、どこかおかしな話でもある。現実の世界で人が死ぬとき、そこに意味や目的、まして必然性などない。身も蓋もない言い方かもしれないが、死ぬから死ぬのである。それ以上でもそれ以下でもない。

そう考えて、栄おばあちゃんが死ぬシーンをもう一度見てみる。もし、盛り上げるためだけであるならば、明確にラブマシーンのせいで死んだという設定にするだろう。しかし、万作の「いや寿命だろう」という台詞で含みを持たせている。OZのトラブルでデータが送られて来なかったとは言っているが、脚本家はどちらにしても助からなかったと考えていたのではないか。

90歳まで生きて、栄は家族全員に見守られて旅立つ。そして次のシーンへのつなぎ。(前のシーン) 栄のアップ → (次のシーン) 子供に母乳をやる由美、となっている。作り手側は決してご都合主義ではなく、年寄りが死に、赤ん坊が生まれる。命はこうやって受け継がれていくという、明確な意志を持ってこのシーンを描いている。この部分には本当に作り手の素晴らしさが現れていると思う。

物語を分解

(画像はクリックで拡大出来ます)

1.夏希「ねえバイトしない?」
もしかしたら最初から健二を「バイト」に誘いたかった?とも考えました。しかし「ねえバイトしない?」と部屋に飛び込んで来た夏希に対して、佐久間は「いまバイト中ですけど」と答える。その後、夏希は「バイト?」と聞き返す。この時の夏希の目線。「ねえバイトしない」と「バイト?」の目線に変化がありません。夏希の性格を考えれば、健二を誘いたいならば、部屋に入ったとき、もしくは「ねえバイトしない」の後に健二に目線が移っているはずです。そして佐久間が「バイト中〜」と答えたので、いたの?という感じで佐久間に目線を移す。こういった動作がなかったという事は、二人を見て話していたという事。つまりどちらでもよかったのだと思われます。

その後、夏希「募集人員一名なの」という台詞。この時の仕草が非常にアニメっぽいのですが、不思議とかわいいく思えてしまいます。物語の導入としても分かりやすいです。また、夏希はこの時に竹刀入れを背負っていますが、健二は栄に会った際「夏希先輩とは高校の物理部で一緒に〜」と自己紹介しています。夏希は剣道部(まさか長刀部という事はないはず)と兼部しているという設定なのでしょう。

ちなみに物理部入口の扉には、物理部の張り紙があり、その下にオタク部、その上に訂正線。そしてその下にPC部とある。たぶんこの部室の遍歴です。

2.夏希「じゃあさっそくこれ持って」
ありがちな荷物がいっぱいという表現ですが、よく見るとウクレレがあり、お婆ちゃんの誕生会で使う物と理解できます。この少し後に回収される、健二「なんでもやりますよ」という台詞もここで登場。また陣内家にたどり着く前に、このオープニング部分で健二・栄おばあちゃん・陣内家の基本情報紹介を終わらせています。ただキングカズマの情報はかなり分かりにくいです。ちなみに健二を待つ夏希の携帯に、夏希のアバターもちゃんと写っています。

3.テレビ画面を見る健二。健二が犯罪者のように報道されている。
このシーンから第二幕が始まる訳なのですが、55人も暗号を解いた人物がいるのに、なぜ健二だけが報道されるのか?まして何の容疑もかかっていない、未成年である健二の顔写真が(目線入りであるとはいえ)ニュースで流れる事はないと思います。仮に容疑者であったとしても、少年法61条には、

"家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない"

とあります。初見時はこういうリアリティーのなさが、若干気持ち悪く感じました。

4.佐久間「キングカズマ!」
第二幕の序盤・キングカズマの登場。この作品最初の盛り上がり。しかしすでにオープニングでキングカズマは登場しています。OZのゲーム内で新記録を出したカットがあり、電車内で「OZ Martial Arts Championship」の文字が一瞬写る。もしかしたらオープニングで、有名なアバターという設定に気づいた人もいたかもしれない。

そしてこのキングカズマの登場部分。登場シーンを盛り上げる際によく使われる、王道のカット割り。(1) 倒される敵 → (2) 敵のアップ → (3) 登場する人物の後姿(今回はもう一度蹴りが入り足元からの後ろ姿) → (4) 脇役がその名前を言う → (5) 登場する人物の顔、という部分です。映画でも漫画でもよく見かける流れです。覚えておくと「あっ、あの流れだ」と自己満足に浸れます。

ちなみにその脇役の佐久間君。全編を通して説明台詞満載で、完璧な狂言回しを演じきっています。

5.栄、関係各所に電話をかける。
上記感想でも触れましたが、このシーンで一気に冷めました。しかし、構成上はしっかりと考えられていて、何の問題はない。結局は好みの問題だと思います。

6.ニュース「これによる死傷者は奇跡的におらず〜」
この作品の良さでもあり、問題でもある部分。ラブマシーンの騒動で死者がいないという事が、二幕前半・三幕の騒動の後に説明されています。つまり今回の騒動で命を落としたのは、栄おばあちゃん一人(直接の原因ではないと思うが)だけである。

またこの直前にも、健二が暗号解読に失敗しているという台詞があり、主人公が犯罪に荷担していないことが、言い訳的に説明されている。この二点に関しては、人によって判断が分かれる部分であると思う。作り手の計算された配慮だととらえるか、教科書通りの良い子ちゃん的な作りだととらえるかで、この作品の評価が変わってくる。

7.カズマ「ネットの世界は広いし、気づいている人は行動を起こしているよ」
いかにも子供が言いそうな台詞である。そしてここで垣間見えるのが、ネットの世界も(この作品の)現実世界と同じように、善で構成されているという思想。たぶん「ネット=悪」という認識に、一石を投じたかったのかもしれないが、いささか単純過ぎるのではないか。現実世界にも個々人の中にも善と悪は混在し、そんなに単純なものではないはずです。

8.号泣する夏希
栄おばあちゃんに夏希を託されたとき、健二は「まだ僕は自分に自信が持てません」と答えます。しかし栄の死、そしてこの時の夏希を見て、健二はラブマシーンと戦う事を決意します。夏希に関しては、「夏希はなぜ健二にキスを?」でまとめて考察いたします。

9.合戦の準備を始める陣内家。
陣内家の人々がいろいろ物を持ってきます。イカ釣り漁船はいいとしても、大学に納品予定のスパコンや自衛隊のアンテナモジュールを勝手に持ってくるというのはどうなんですかね?ちなみにそろえた装備のすごさを、ここでも佐久間君が台詞で説明しています。

10.夏希「何が起こってるか何にも知らないくせに!」
この台詞に関してはこうだったらという希望があります。

まず、ここのまでの夏希の動き。
a) 陣内家全員が集まり会議。しかし夏希はいない。
b) 侘助のロックされたiPhoneを見る夏希。
c) 女性陣と一緒に遺品整理(遺書を見つける)

二幕後半の、a) 、 b) の時点で夏希は家族の輪に加わっていません。しかし、c) では女性陣と一緒に遺品整理を行っています。ここまでは同じです。

そしてここからが、個人的な案。夏希は、b) 、 c) の間でiPhoneのパスを解き、侘助 → 栄の気持ちが分かる。「それなのにどうしてこんな事になったのだろう」という気持ちで遺品の整理に加わり、栄の遺書を見つける。夏希は遺書を読み、栄 → 侘助の気持ちが分かる。

もしこの流れで「何にも知らないくせに!」という台詞が来たら、侘助が思っていたの同じように、栄も侘助の事を思っていたんだよ、とより深い意味になりませんか?どうでしょうか?

作品では遺書が初めて開封されるのは、侘助への連絡後。そしてiPhoneのパス解読も、健二の「諦めたら解けない」という台詞を受け、廊下に飛び出し(侘助と話をしてる時の、ロックを解除するインサートカットの背景も廊下)パスを解くという形です。そのため「何が起こってるか何にも知らないくせに!」と言う台詞に、栄の死・ラブマシーンの暴走以上の意味は見出しにくくなっています。

ちなみに夏希がiPhoneを入手した場所も「夏希はなぜ健二にキスを?」で解説しています。

11.夏希が花札でラブマシーンに挑む
三幕の山場。栄おばあちゃんと健二が花札をした際、栄「昔はよく家族みんなでやったもんだが〜」という台詞。これを受けて陣内家団結の象徴(陣内家限定で、それ以上の意味は持たせていないと思います)としての花札です。構成的に問題はないのですが、花札で世界の運命を決めるのか、と釈然としない思いがあります。そしてなぜ侘助にすら勝てなかった夏希を出すのか?

12.太助「OZの守り主が夏希に吉祥のレアアイテムを授けたんだよ」
このOZの守り主。そんなに力があるなら、なぜ最初から出てこなかったのか。変身して強くなるなら、みんなの助けはいらないのではないか。さらに言えば守り主の名前も好きではありません。(名前はストーリー冒頭に登場、あえて触れません)

この直前、夏希にアバターを託す際のメッセージで「私たちの大切な家族を、どうか守って下さい」とあります。ここで「家族」という言葉が出てくるのは若干不自然なのですが、あえて家族を使っています。軽微な理由ではありますが、ここも「人と人のつながり」よりも「家族」が上位のテーマだと考えた理由です。

ここで完全に無意味な余談でありますが、昔東京で働いていたとき、接待で「吉祥」という日本料理屋に行った事があります。常連になると香り付き扇子をくれるお店です。そのため初見時に「え?吉祥のレアアイテム?」と妙な食いつき方をしてしまいました。

13.ニュース「今回の事件による死傷者は幸いにも確認されておりませんが〜」
詳しくは「分解6」で解説しています。二幕前半の騒動終了後とここで登場させ「死傷者はいない」を繰り返し強調しています。

14.夏希、健二の頬にキス。
僕は単純にいいシーンだと思いました。しかし友人に、夏希がキスをするまでにいたる、感情の動きや変化が分からないと言われました。確かによく分かりません。そこで次の項目で、夏希の行動からその感情を考察してみたいと思います。ちなみにこのシーン、翔太が後ろで「健二さん、やめてー」と、さん付けで叫んでます。
 

夏希はなぜ健二にキスを?

本作一番の謎。夏希の気持ちはどこで健二に向いたのか?吊り橋効果の一言で片付けるしかないのでしょうか?読み解くためにも、夏希の情報を時間軸上に書き出してみます。

サマーウォーズ 夏希はなぜ健二にキスを?の考察図

(画像はクリックで拡大出来ます)

初期設定
夏希は健二に対して特別な感情は抱いておりません。「バイト」を引き受けるのは佐久間君でも良かったのです(分解1で解説済み)。しかし健二は夏希の事を気にはなっているようです。その夏希は侘助の事が好きです。また侘助の中で夏希はただの親戚です。

A.健二に恋人演じさせる
健二に恋人を演じてもらう際、夏希は流れで健二の手を握り、健二をその気にさせてしまします。そして最後は「何でもやるって言ったくせに」と無理矢理言うことをきかせます。夏希は健二の事を、いいように使える後輩ぐらいにしか思っていないはずです。

B.侘助の登場
健二は空気になってしまいます。その後、夏希の嘘がばれ、侘助への恋心が全員に知られてしまいます。ここまでは問題ないですが、この後から解釈が少し難しくなってきます。

C.健二が「家ではいつも一人なので陣内家は賑やか、嬉しかった」と栄に伝え、連行される
健二が栄に気持ちを伝えた時、夏希も健二に目をやります。ここで夏希は、健二の家族への思いを初めて知ります。そして健二が連行されるのですが、その時なぜか夏希が走って追っかけてきます。健二に謝ろうとしたのでしょうか?それとも連れ戻そうとしたのでしょうか?この行動の意味は分かりませんが、夏希の感情としては、健二への同情ではないでしょうか。

D.健二が管理棟の暗号解読に挑む
この時の健二の能力を見て、夏希が驚くような表現はありません。そして驚いている翔太に「数学オリンピックの日本代表」と若干誇張して紹介しています。そして暗号解読後、夏希は初めて健二に笑顔を見せます。その後の食事でも、健二は輪に加わることが出来、夏希から友達として受け入れられたのではないでしょうか。

そしてここから、もう一段階解釈が難しくなります。その理由は侘助のiPhoneなのですが、まず基本情報として、このiPhoneをどの段階で夏希が手に入れたか考察します。

X.夏希がiPhone入手場所は?
栄が長刀を振り回す所で、侘助は手からiPhoneを落とします。その後、侘助がiPhoneを拾った描写はないので、紛失場所はここです。そして夏希がiPhoneを回収したタイミングを三案にしぼります。

(甲案) 侘助が去り、家族全員で散らかった部屋の片付けを行います。このタイミングでの入手。そうしないと他の家族が見つけてしまいます。
(乙案) 部屋に戻った夏希が、再び広い居間に戻って見つけたという可能性。ただその場合はそういった短いシーンがあってもよさそうな気がします。
(丙案) 栄の死後に見つけた可能性。このタイミングはないと思いますが、一応可能性として残しておきます。

* 以下、甲案の可能性もあるのですが、乙案で考察を進めていきます。

E.夏希「来ないで!今いっぱいいっぱいだから」
夏希は、侘助が開発者だという発言、侘助と栄おばあちゃんの仲違い、すべて侘助関係の出来事で「いっぱいいっぱい」になってしまいます。もっと簡単に言えば侘助の事で「いっぱいいっぱい」の状態です。ただ栄と侘助のいざこざもあり、夏希にとって侘助は、家族という気持ちが強くなっていると思います。

*甲案だった場合、夏希は侘助のiPhoneを隠し持ったまま、健二を追い返し部屋に戻ったことになります。その場合は、乙案よりも侘助への恋愛感情が強く残ってしまうような気がします。

F.夏希「止めて、握って」
中間点後の広い居間。ここが後に健二を好きになるきっかけになります(話の流れ的にも、構成的にも、シーンを見たままの感じでも)。しかし侘助の問題が重くのしかかっているため、夏希はその気持ちに気付く事はなかったのだと思います。

ちなみに、ここの夏希は部屋にiPhoneを置いてきています(栄の所に急いで駆けつけ、その流れでこのシーンなので、さすがにポケットには入れていないと思う)。

*丙案の場合は、この後しばらく夏希の姿が見えなくなりますので、この前後でiPhoneを見つけた事になります。その場合、見つけた事を家族に隠して引きこもるという流れになるので、気持ちが侘助寄りのまま進んでしまう印象を受けます。また中間点、栄の死で家族が集まっている時、万助の「侘助はどこだ」の後に続く邦彦?の「10年も家を離れていたんだ。誰も連絡先なんて知らないよ」という長めの台詞。この時ずっと夏希の姿が写されています。実はもう夏希が連絡先を調べる方法を知っていますよ、と観客に暗示した演出ではないのだろうか(これから見つけますよ、という演出にも取れるが、その場合はロックを解除できない夏希の変わりに、iPhoneを見つける夏希を入れるのではないか?)。そのため丙案は消えると思います。

G.朝食を取る陣内家
ここに夏希の姿はない。精神的に参ってしまい、部屋で休んでいるという事だと思います。この時、iPhoneが部屋に置いてあり、ロック解除を試みが解けない。そしてしばらくして夏希が泊まっている部屋に、女性陣が遺品整理にやってくる。という流れだと思います。

ここの夏希は侘助からの連絡を待つという気持ちも、少しはあったのかもしれません。しかしそうすると前後の解釈がおかしくなるので、全くなかった事にします。(しかし仕事の情報が詰め込まれているスマホをなくしたら普通連絡ぐらいしないですか?)

H.夏希が侘助に連絡をする
ここ流れは分解10で解説。そして侘助が戻り、やっぱり家族なんだと夏希は一安心。ここで完全に侘助は、夏希にとって「家族」に成り下がってしまいます。

★.家族全員で食事
そしてここです。いっぱいいっぱいの問題が解決したとき、悲しい時に健二がそばにいてくれた事、栄の「人の役に立て」という言葉通り世の中のために健二が戦っていた事に気付き、健二の事を好きになったのです。全て推論ですが、構成的にもここであるならば、三幕(物語の結論)にもすんなりと移行できます。

I.夏希「やったー!」
花札の勝利後、夏希は健二に抱きつきます。侘助に取っていたようなあからさまな態度を、侘助がいる前で取るということは、完全に夏希の気持ちは健二にしか向いていません。

J.夏希「帰って来なくていいって」
佐久間の台詞を、また夏希は意訳して健二に伝えます。そして「嬉しい」と来て、最後にキスです。夏希は、健二があきらめずに戦い、家族を救った姿を見て、さらに好きになったという事だと思います。身も蓋もない結論で申し訳ないですが、なんとか解釈はつながりましたでしょうか?

以上。

このラストで、家長に認められた人と結ばれるという、日本的な「家」という思想を見出すことも出来ます。しかし、夏希のキャラクターを追ってみると、夏希は「家の絆」という良い部分は残し、「家」が抱える陰の部分にはとらわれない価値観を持っていると思います。そのため僕はこのシーンで、日本的な「家」を連想することはありませんでした。

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