2013.05.06

「青春?恋愛?SF?この物語、簡潔にまとめると何の話なのだろうか?そして時間軸考察と魔女おばさんについて」

時をかける少女

監督:細田守 / 脚本:奥寺佐渡子

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高校生の真琴は、踏切事故にあった事をきっかけに、時間を過去にさかのぼりやり直せる力を手に入れる。手に入れた能力を使い日常を楽しむ真琴だったが、恋愛の騒動をきっかけに運命の歯車が少しずつ狂い始める。

原作は過去に何度も映画化された、筒井康隆の同名の小説。その原作を下敷きに次世代の物語として映画化。監督は細田守。脚本は相米慎二監督の「お引っ越し」などを手掛けた奥寺佐渡子。

以下は核心部分を含みます

2014.11.18 大規模な加筆
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まだ東京で働いていた頃。公開当時、職場でかなり話題になっていた作品。普段アニメなんか絶対に見ないだろう女性陣が、きゃっきゃきゃっきゃと話をしていたのを覚えています。その時僕は思った。こんな作品は絶対見ないと。大体何回目の映画化だよ。

そしてある日の事。引越しをしてインターネットを申し込もうと、新宿へ。そして家電量販店に入ると、販売の女の子が「奥華子さんがCMの曲歌ってるんですよ」とTEPCO光を進めて来た。どっかで聞いたことある名前だと思っていたら「時をかける少女の主題歌歌ってる人ですよ。私、あの映画大好きなんですよね」と続ける。何かの運命を感じ、後日申し込みに来ると名刺だけもらい、上映館を探し見に行く。

見てよかった。非常にいい作品だった。感想を伝えようと、後日名刺を手に足を運んだが、その女の子は見当たらなかった。仕方なく、小太りのおっさんに契約をしてもらった。

Time waits for no one です。

<初回鑑賞時>
ただの焼き直しだと思っていましたが、原作を下敷きにしたオリジナル作品といった方が正確かもしれません。しかし案の定だったのですが、千昭の未来から来たという設定がどうも腑に落ちませんでした。これは「時をかける少女」である以上はどうしようもないことなのですが……

<2回目鑑賞時以降>
改めて見ると、設定や展開に結構突っ込みどころがあることに気づきます。しかし、それを気にさせないぐらいの疾走感。そして真琴がふしぶしで発する「は!」。所々ニュアンスがおかしいはずなのに、感情豊かな仲里依紗さんの台詞回しが響いてきます。

などなど。

あちらこちらと部分部分を切り取り、ここはこういう事、ここはこういう意味などと、素人目線で述べるのは簡単です。しかし全体を通してどういう物語なのか、そして構成はどうなっているのかを考えた時、かなり難しいです。僕は素人なので、この台詞が格好いいとか、このシーンが面白い的な事を考えてしまいます。しかしプロの人は、物語全体の何に軸を置き、どう構成していくかという事を、理論立てて組み立てているはずです。簡潔に言えば、プロってすごいなーと、見る度に思ったという事です。

<大幅な追記・修正に関して>
このブログで二本目の記事。読み返してみると、どうでもいい感想がずらずらと書いてあるだけで、肝心な事にはほとんど触れていませんでした。今回の修正では、ある程度しっかりした考察をしていくつもりです。

< 物語に関して >

迷うことなくこの物語の主人公は真琴です。そしてテーマは劇中幾度となく登場する「Time waits for no one」ではないのか?と仮説を立てました。ただその場合、ストーリーを一言で表すとどんな話になるのか、難しい所があります。タイムリープ軸でも千昭軸でも、もちろん真琴軸でも考える事が出来ます。

とりあえず上記したテーマも感覚的な物で、ストーリーも完結にまとめるとどうなるのか、まだ明確に答える事が出来ません。そのため、まず話の流れを図にまとめ、全体像を把握したいと思います。

概略と分岐点

時をかける少女 パラダイム

(画像はクリックで拡大出来ます)

書き出して気づきました。何度もタイムリープをはさんでいるため複雑に感じたのですが、第一幕にしっかりと設定が詰め込まれ、各登場人物が持つ劇的欲求が、第二幕で真琴の行動に変化をあたえ、第三幕で真琴がその全てを解決する、というシンプルかつ完璧な構成になっています。

(図を文章にしただけですが)簡単に解説。

主人公は誰か、また物語の状況設定や登場人物紹介は、第一幕前半(前半1/3)に詰め込まれています。そして第一幕中盤で主人公に焦点を絞り、この物語のカギになる「タイムリープ」という設定が描かれます。

それを受け第二幕への転換点。ここで「真琴がタイムリープの能力に気づく」という物語上の問題が起きます。なぜこれが問題なのか。それは物語の解決として「今と向き合いしっかりと生きる」という選択をしなければならない真琴が、Time waits for no one という大前提を覆し、決断をいつまでも先延ばしにする力があるという事を知ってしまったからです。これがいわゆる、解決へ向かう主人公の前に立ちはだかる壁、となっている訳です。そしてこの転換点以降、前提状況を巻き込みながら物語が転がり出します。

若干話はそれますが、この第二幕への転換点に何を持ってくるかで、いかようにもストーリーを展開にする事が出来ます。例えばここで、千昭が未来から来たという事を明かし、お前にもその能力があるんだと告げるようなシーンにすれば、アメコミ的な物語に。もしくはもう一度踏切事故のタイムリープに遭遇し、同じ時間から抜け出せなくなるといった、SFホラーにすることも出来ます。例えは安直ですが、こういう事が構成の面白さなのかもしれません。

そして第二幕。後ろ向きに同じ時間を繰り返しているにも関わらず、「ずっと三人でいられる気がした」関係が微妙に変化していき、第二幕中間点で、その関係は壊れてしまいます。

この中間点に関しては「千昭と友梨が付き合う」とも考えられるのですが、まだこの段階では友梨と付き合いながらも、三人の関係を優先する可能性が残っています。明確に三人の関係が崩れたと分かる出来事は、いつものキャッチボールに千昭が来ない事です。そのため中間点は「千昭がグランドに来ない」にしました。

同じようように、第三幕への導入点。ここに関しても「タイムリープの回数が戻る」という出来事を受け第三幕へ入った、とも考えられます。しかし第三幕の「今と向き合い決意をする」という流れは、真琴の後悔から来ています。つまりこの「後悔」が第三幕の起点であり、それに対する第二幕終盤にある第三幕への導入点は「千昭がいなくなった」という出来事だと思います。

最後に第三幕。真琴の後悔から始まり、状況は取り返しのつかない状態になっています。しかしここで、タイムリープの回数が戻り、現実と向き合う事を妨げていた能力が、現実と向き合うために使われるという、大転換が行われます。そして物語の解決へと帰結します。

それではそれを踏まえて、全体の概略。

第一幕概略 「漫然と日常を過ごしていた真琴が、」
第二幕への転換点(23min) 「タイムリープが出来るという事を知る」
第二幕前半概略 「いつもの日常に変化が起きる」
中間点(44min) 「千昭がグランドに来ない」
第二幕後半概略 「いつもの日常がめちゃくちゃになる」
第三幕への転換点(69min) 「千昭がいなくなる」
第三幕概略 「後悔をして、前を向いて生きようと決意する」

ちなみに『漠然と毎日を過ごしていた』という部分ですが、冒頭の真琴と友梨の会話「先のことは分かんないもん」「果てしないよねー」から取っています。

そして概略を受けてのストーリーとテーマの考察。

この物語をまとめれば、一度しかない今に対してどう向き合うか、という事が軸になっています。そう考えた時に、この物語は恋愛でもSFでもなく、いつまでも続くと思われた学生時代が終わりを迎え、将来への決断を迫られるという、誰もがぶつかる思春期を描いた青春映画だと言えるのではないでしょうか。

またテーマですが、「Time waits for no one」ではなく、それに対する真琴が出した答え、言葉にするとありきたりで薄っぺらくなってしまいますが、『一度きりの人生、しっかり前を見て生きる』というのが、テーマになるかと思います。また、今に向き合わなかった場合、ストーリー展開が良くない方向に転がっていく事を考えると、本作のテーマを『前を向いてしっかり生きなければならない』とより断定的な、強いニュアンスでまとめてもいいのかもしれません。

そしてこの真琴が出した答え、裏付けしておきます。真琴がタイムリープをする際に現れる時空間。基本的に真琴はタイムリープをする際、その時空間を後ろ向きで落ちていきます。しかし、最後のタイムリープ(千昭の回数を戻すためのタイムリープ)では、真琴は後ろ向きで落下していく状態から振り返り、前を向いて未来(物語上過去ですが)へ向かいます。このシーンこそ「Time waits for no one」に対する真琴の答えを表しているのではないでしょうか。

なおテーマに関しては、第一幕・自転車事故で、おばさん「目がなんで前についてるか分かる?ちゃんと前見て歩くためよ!」、第三幕・功介「前見て走れ!」など、所々で登場人物が真琴を導くための台詞を発しています。

という事で以下が概略まとめ。

主人公

「真琴」

テーマ

「一度きりの人生、しっかり前を向いて生きなければいけない」

ストーリー

「漠然と毎日を過ごしていた真琴が、タイムリープを繰り返す事によって今と向き合い、将来をどうするか決める」

以上が全体の流れになりますが、最後に一点だけ補足しておきます。

実はこの物語、今と向き合う中で葛藤をしている人物が他にもいます。それは友梨・果穂・千昭の三人。友梨と果穂に関しては、告白するかしないか、そして結果もそのままですので、解説は省きたいと思います。しかし千昭に関しては、真琴と同じように今と向き合う事を避け、決断を先送りにしているという事や、真琴の変化にも密に絡んでくるため、物語を通してどう変わっていったのかを追ってみたいと思います。

基本情報。千昭が未来からこの時代にやって来た理由というのは、失われた絵を見るためです。そして物語の中で千昭が悩み、先送りにしていた事は、未来に戻るという選択になります。

まず第一幕中盤、真琴の「千昭は(将来)どうすんの?」を受けて、千昭「俺?」と考えます。この時、ボールをキャッチしそこねた理由は、ぼーっとしていた訳ではなく、この後の第二幕前半で「考えながら投げらんね」という台詞があるように、千昭の性質によるものです。千昭も真琴と同じように、何も考えていないように見えますが、実際にはどうすべきか悩んでいます。

また第一幕・第二幕。千昭はどの時間軸でも、13日の夕方に博物館を訪れています。しかしこの日は注意書のみで、絵を見る事は出来ません。

そして第三幕ラスト。千昭は「どうしても見たい絵」があって、この時代にやって来たにもかかわらず、なぜその絵を見ることなく帰ってしまったのか?

「時をかける少女」の設定として、過去の住人に秘密を打ち明けた場合、その時点でその人の前から姿を消さなければならない。実際このルールに従い戻る事になった訳ですが、それでは身も蓋もないため、テーマに照らし合わせて考えてみます。

千昭は未来に帰らなかった理由を「おまえらといるのがあんまり楽しくて」と言っています。この楽しい時間が、絵を見に来たはずの千昭の気持ちを変化させ、向き合わなければいけない今から目をそむけさせた。千昭の中で絵を見るという事の重要度は下がり、むしろ修復が終わらない事を、未来へ戻らない言い訳として使っていたのではないでしょうか。そう考えた時、千昭が絵を見る事なく、未来に帰るという選択が、納得がいく流れになると思います。

(この河原のシーンに関しては、「物語の分解12」で、もう少し細かく見ていきます)
 

真琴の時間軸

書くべきかどうか迷いました。しかし前後のつながりを確認するために必ず、こういった資料は作っていると思います。という訳で一応出しておきます。

時をかける少女 時間軸

(画像はクリックで拡大出来ます)

拡大しないと見づらいです。拡大しても見づらいかもしれません。時間軸の確認に必要な情報以外は載せておりません。丸い矢印はタイムリープ、黒丸は時間軸上の出来事、点線は同時刻での出来事(点線上に丸がない場合はその出来事との遭遇なし)としています。

日時の基本情報。物語のメインとなるナイスな日・7月13日は木曜日です。そしてオープニングやラスト、また真琴がタイムリープをした際に登場するデジタル数字の羅列には、現在の時刻が表示されています。ただし真琴がプリンを食べる時の居間、テレビが「7月12日火曜日」と言っているのですが、この情報は完全に無視します。7月12日は水曜日です。

出来事と日付に関して。劇中の台詞から考えると、11日から14日までの出来事は、上図で間違いないと思います。ただそれ以降は確実な情報がなく、土日祝もはさんでいるため、一番可能性が高い日付でまとめています。(15日以降は「7月15日以降の考察」で解説していきます)

結末を先に持って来ますが、結局真琴がたどる時間軸は、タイムリープを行う前と同じ状態になります。しかし若干の違いも生じます。友梨が千昭の事を、果穂が功介の事を好きだという気持ち、また高瀬がキレるとやばい奴だ、という事を知っています。ただこの事は物語上での解決があるため、大きな問題にはならない思います。しかし少なくない影響として、真琴がこの後の模試の問題を知っている、という事実があります。さすがにわざと間違う事はないと思いますので、元に戻った時間軸でも、真琴は良い成績を出してしまうのではないでしょうか。

タイムリープの回数

劇中で描かれる真琴のタイムリープ回数は26回。しかし、チャージされた回数が26よりも多い場合、回数を増やせる可能性があるのは、※A〜※D関連の四カ所以外はありえないかと思います。

それではその四カ所を考察します。

※A.真琴、早めの登校
ここでタイムリープをした描写はありません。しかしその後、魔女おばさんに「朝も二度寝、三度寝出来るし」とあるので、ここでタイムリープした可能性は残ります。

※B.カラオケでの回数
劇中で確認できる情報は、3回のタイムリープ(4回のカラオケ)、そして「10時間ぐらい」滞在していたという事です。そして、真琴が理科実験室にノートを置きにいったのが、14時という事を考えると、この時刻以前に授業は終わっています。その後真琴が家に到着した時間は、夕飯の準備状況から18時15分以降です。そしてカラオケの室内には「ひる18:00まで」とポスターがあります。そこから考えられる2案。

(a) 劇中に登場した通り4回 (2.5時間 x 4)
(b) 2時間半以下 x 5回以上

真琴「(野球は)カラオケの後でいいじゃん」という台詞があります。カラオケの後に野球、という流れもゼロではないのですが、最後に家に帰りカラオケの話しかしていない事を考えると、素直にカラオケを繰り返していたという事でよいと思います。上記の台詞はタイムリープを使い、カラオケの後に野球をやるという意味だと思います。

そして、このカラオケ店のシステムを室内ポスターから考えた場合、昼は18時までのフリータイム制と考えられます。18時までカラオケをしていたと考えた時、問題になるのは入店時間。最初の時間軸で、真琴が電車事故に遭う前から、街に出て野球をやっていた事を考えると、16時のだいぶ前には入店が出来そうです。そう考えると、ここは(a)案の2.5時間を4回が正解だと思います。

※C.野球での回数
劇中で描かれるタイムリープは捕球で2回、バッティングで3回です。そこから逆算するとタイムリープの必要回数は5回。しかしこれが全てかどうかは、他に判断材料がないため、何とも言えません。ここで言える事は最低5回という事だけです。

※D.魔女おばさんとの台詞より
※Aで解説した魔女おばさんとの会話では「二度寝、三度寝」の他に「お小遣い」や「忘れ物」「90分食べ放題」が出てきます。しかしこの時点では13日までを繰り返しているだけなので、忘れ物をする可能性や、夕食時に焼き肉を食べに戻った事を考えると、食べ放題に行く可能性などは低いと思います。お小遣いに関しても、使う前に戻ればお金も戻るため、わざわざお小遣い日に戻るという事はないと思います。ここで真琴が話している事は、あくまでも例えであると推測されます。

7月15日以降の考察

台詞での説明や画面上の情報がほとんどありません。そのためこれ以降の時間軸考察は、かなり難解になってきます。しかしその少ない情報から、なんとか考察しいきたいと思います。

順序が逆になりますが、※Eを考察する前に、必要上まず※Fを確定させます。

※F.模試の日付
インサートで模試の日程が書いてある黒板が写り、20日河合ゼミ、23日代ゼミとあります。そしてその後、職員室の黒板には、21日・22日は面談あり、23日・24日が面談なしとなっています。

これは演出面からですが、黒板に書いてある日付以外に模試が行われるのであれば、このインサートカットは必要なく、23日の代ゼミ模試が真琴の受けたものであるならば、もう終わってしまった面談のインサートカットも必要ありません。そう考えると真琴が受けた模試の日付は、20日で間違いないと思います。

※E.15日から19日の考察
この期間を確定させるための主軸は「高瀬が消化器を投げたのは何日か?」という事です。そして7月15日以降の大前提は15日土曜日、16日日曜日、17日海の日と土日祝をはさんでいる事になります。(17日の祝日に関しては保健室に映るカレンダーから確認出来ます。)

それでは高瀬が消化器を投げた日付の考察。

まずこれは模試前の、15日〜19日のいずれかで起きた出来事です。そして学校での出来事であるため、16日と17日は消えます。そしてこの後、グランド → 帰宅・夜 → 教室 → グランド → 博物館・夕方 → 模試とシーンが続きます。この一連の流れで、確実に二回は日付をまたいでいるため、消化器を投げた日付が19日という可能性も消えます。そうすると「高瀬が消化器を投げた」のは15日土曜日、もしくは18日火曜日のどちらかになります。

しかし15日土曜日案の場合、若干の疑問が出て来ます。

疑問1.土曜日に授業はあるのか?
そもそも論です。はっきり言えばないです。補講的な物はあるかもしれません。しかし昼休みがあり、全校生徒が登校している(ように見える)事を考えると、普通に授業が行われていると思われます。ただ私立の進学校では、土曜授業を行っていた所もあったので、その可能性も捨て切れません。また黒板にあった面談表、土曜日の22日も14時からとなっていたため、土曜授業を完全に否定するのは難しいかもしれません。

それでは別の角度から考えてみます。

疑問2.夕食時の真琴・父
「高瀬が消化器を投げた」日の夕食。真琴の父親が「ただいま」と帰ってきます。その後、ワイシャツ・ネクタイ姿で食卓に座っている事から、仕事帰りである事が分かります。父親の職業は明かされないため、推測になりますが、背広で出社し9時〜18時の仕事と考えた場合、一般企業・もしくは公務員などの職業で、土日は休みと考えてもよいのではないでしょうか。

上記二点の情報から15日案ではなく、18日案を通したいと思います。

ただ18日案の場合、友梨からメールを受け取ったシーンの後、3日間という開きがあるにもかかわらず、すぐ教室の友梨のアップにつながるのは不自然な気もします。しかしこの部分に関しては、何日後かを分からせるよりも、千昭と友梨の関係の変化を見せる方が重要であるため、この演出で間違いないのだと思います。それに実際に画面に写っている事と、演出上の不自然さを同列で論じることは出来ません。

結論。消去法ではありますが「高瀬が消化器を投げた」のは、18日・火曜日です。

※G.模試後、職員室の日付
見逃しがちですが、職員室のカットに移る前カット(模試の日)に、14時半過ぎの時計が入ります。そしてその後、職員室の時計は13時手前を指しています。また模試の終了時刻が16時という事を考えれば、ここで日付をまたいでいると考えて間違いないと思います。

そして職員室には、三者面談のための父母が確認出来ます。そのためこの日は21日金曜日、もしくは22日土曜日であるとも推測できます。しかしこれは別学年(三年生)の面談のであり、真琴とは関係のない事だという可能性も残ります。(真琴が二年生だということは、理科室に運んだ提出用ノートで確認出来ます)

そこでここも別の角度から。

まず根本的な部分を考察してみたいと思います。それはこのシーンが「真琴と担任の面談であるかどうか?」です。黒板に映る面談の時間は、21日・22日とも1時40分からになっています。そして、担任の後ろに映る時計は、12時55分を指し示しています。つまり、このシーンが面談であるという根拠は何一つありません。そう考えた時、これは進路希望書を出していない真琴が、担任に呼び出されたシーンと考えるのが妥当ではないでしょうか。担任は面談前に進路希望書を出すように求めるはずであり、そうした場合に推測出来るのは21日以外はありえないと思います。

このシーンが面談でないため、真琴が職員室を出た後に、模試結果の紙を持っていないと考えられます。つまり、ただその場で見せただけという解釈です。

ただこの職員室で疑問が一つだけ残ります。それはこの時に真琴が持っている紙です。流れから考えると、模試の結果で間違いと思います。しかし現実問題として、模試の判定が数日で出るなどという事はありえません。少々強引に解釈をすれば、自己採点をした結果の紙であるとか、面談ではないため、担任に渡された進路希望を書く紙などと考える事も可能かもしれません。

しかし上記の考察もむなしく、作り手側はこのシーンを確実に真琴と担任の面談として描いています。そしてもちろん真琴が手に持っていたのも、模試の結果である事は疑いないと思います。ただこのもろもろの疑問点が残ったとしても、この職員室の日付が21日であるという可能性は高いと思います。

15日以降のまとめ
このシナリオですが、学校週5日制という中での土曜日、また海の日をはさんだ連休という物を、あまり意識していません。推測ですが、準備稿・改定稿の段階では、日付が確定していなかったのではないでしょうか。実際に休みをはさまずに考えると、ストーリーが非常にスムーズな流れになります。しかし、すり合わせをしながら決定稿を作成する際に、7月13日・ナイスな日というアイデアが出て、それ合わせで日付をはめていったような気がします。

今回は上図のような流れにしましたが、物語上15日以降の日付を確実に割り出す描写はなく、全て可能性の中での考察です。また今回は土曜日授業なし説を取りましたが、もし土曜日授業ありの高校であった場合、もろもろの日付、特に※Eの部分が変わってくるかと思います。

物語を分解

時をかける少女 物語を分解のパラダイム

(画像はクリックで拡大出来ます)

テーマ・本編構成に関連している事は「物語に関して」、時間軸に関連する出来事は「真琴の時間軸」、魔女おばさん関連の事に関しては「魔女おばさんとは誰か?」内の「魔女おばさんの考察」で解説しています。

1.真琴の頭上に落ちる目覚まし
夢のシーンです。三人でのいつものキャッチボールや、身近に起こった、妹にプリンを食べられるという出来事が元になっています。その後、ボールではなく目覚ましが空から降ってきて起床。起床後、妹「(目覚ましを)自分で止めたんじゃん」と言っている事を考えると、真琴が夢の中で聞こえた「何か」とは「目覚ましの音」だと推測出来ます。

2.理科実験室に入る真琴
理科実験室に入った後、イマジナリーラインをまたぐ不自然な視点の切り替えしが入ります。そしてその切り返しの後の真琴の立ち位置も、かなり不自然な場所になっています。つまりこれは、千昭がここでタイムリープを使ったという事ではないでしょうか。カット順に追っていきます。

C1 : ドアノブの寄り(中から物音が聞こえる)
C2 : ドアを開ける真琴
C3 : 室内に入る真琴(引き)
— ここでイマジナリーラインをまたぐ —
C4 : 室内を見渡す真琴(引き / 立ち位置変わり)
C5 : 空かない廊下のドア(寄り)
〜 略 〜
C14 : 理科実験室に入ってくる人影(友梨)

個人的な解釈になりますが、C3で誰かが入って来る事に気づいた千昭は、見つからないように隠れ、タイムリープを行い、理科実験室から抜け出したという事ではないでしょうか。その後、C14で理科実験室に入って来たのは、第二幕後半から考えると、友梨で間違いないと思います。

3.千昭「そんな過密スケジュール、オレはゴメンだね」
真琴の「(野球は)カラオケの後でいいじゃん」を受けての台詞。この台詞を深読みした場合、千昭はどの時間軸でも13日に博物館を訪れています。この日は必ず絵を見に行く予定だったとも考えられます。その場合は、カラオケ → 野球 → 博物館となってしまうため「過密スケジュール」と表現したのかもしれません(真琴が18時台に博物館を訪れているシーンがあるため、物理的にも可能です)。しかし、千昭が13日に博物館を訪れなければならない必然性などが特には見当たらないため、単純に野球をやりたかっただけなのかもしれません。

ちなみに、カラオケで千昭が歌っている曲の歌詞は Time waits for no one。カラオケの画面にも Time waits for no one の表示が繰り返されています。

またこの時の真琴。タイムリープを繰り返した場合でも、喉はかれてしまうのでしょうか。理屈の上ではかれないような気もしますが、もしかしたら精神的な物かもしれません。(あるいは設定ミス)

4.野分「何これ。今日最高じゃん」
占いの中身に関して。若干混乱してしまうので解説。分解図(4a)では、野分「でも最悪って出てんだよ」と言っています。時間軸の考察では同じ13日としましたが、なぜ占いの内容が違うのか。二案。

占い方の違い案
(4a)で、上杉「血液型占いとか、この際関係ないと思う」と言っています。つまり(4a)は血液型占い、そして(4)では星座占いという事です。また(4a)は昼休み、(4)は放課後という違いもあります。

時間軸での違い案
真琴がタイムリープをした際に起こった時間軸のズレ。果穂告白シーンの時間軸での違いは、(4a)と(4c)では告白せず、(4)と(4b)では告白となっています。そう考えると、真琴が元々いる時間軸では、占いの結果が最悪となっていて、告白できない。真琴がタイムリープを使った時間軸では最高の運勢で、告白となります。また各結果は占いによって左右される事はないため、この案の場合、占いによって未来は決まらない、といったニュアンスも出るかと思います。

ただし、正解は「占い方の違い」だと思います。台詞と占い本がそう言っています。

5.二叉路の交通標識。下には「ここから」の文字
暗喩的に登場する標識。単純に考えれば、千昭の告白を受けるか受けないかの選択です。しかししっかりと考えた場合、この分岐点は千昭と付き合う(右の道)か、千昭と付き合わない(左の道)という選択ではないような気がします。ここの分かれ道は、より物語の本質的な意味、それは真琴が判断に迷うような現実に直面した時、それに向き合うか、それとも逃げ出すか、という意味だと思います。そしてこれ以降も真琴は、タイムリープを繰り返し、向き合わなければならない現実から逃げ続けます。

6.真琴の携帯に友梨からのメール
友梨のメールにあった「すっごいいい事」とは何か?真琴が「なに」とメールを打ちますが、返信はなく、劇中でその内容が語られる事はありません。このシーン前に千昭がメールを打つカットがあるので、千昭からメールがあったということは間違いないと思います。この真琴に話さなかった「いい事」とは、何だったのか?考えられる内容としては「ナイター」や「告白」、もしくは「ただの挨拶」あたりだと思います。しかし、もしかすると「他の何か」という可能性も残ります。

そして次のシーンは、挙動不信な友梨から始まります。告白のタイミングがどこかによって、この友梨の態度の解釈も、若干変わってくると思います。もしかすると、その解釈がメール内容の手がかりになるかもしれません。とりあえず告白のタイミングを三案にしぼり見ていきます。

「すでに告白が終わり二人が付き合っている」案
この場合の友梨の態度は、単純に真琴に気づかれたくなかっただけとなります。元々友梨が、友人である真琴に千昭の事を相談しなかった理由は、真琴も千昭の事が好きなのではないか、と思っていたからです。ただこの場合、ずっと付き合っている事を隠しているつもりなのか?とかなり違和感を覚えます。そこで次案。

「告白済で千昭の返事待ち」案
この場合、友梨が挙動不審な理由は、千昭の返事を待っていたからとなります。この流れの場合、当然ながら友梨はすでに告白を済ませている必要があります。そしてそのタイミングは、真琴にメールを送った前か後という事になります。そう考えた時、これから告白をしようとしている友梨が真琴に「すっごいいい事あった」とメールを送る事は考えにくいですし、ましてや告白の返事を待っている状態でそんなメールをするなどということは、ありえないはずです。

また時間軸の考察で、ここに連休をはさむ、と考えましたので、連休中に告白をしたという可能性も残ります。しかし連休前、友梨「メアドとか知らない」「あんまり話したことない」と言っていた千昭に、いきなりメールで告白をするか、という疑問も残ります(もしかすると今時の高校生の感覚からすればありなのかもしれませんが⋯⋯)。それにもし告白に失敗すれば、友梨の「すっごいいい事」が簡単にひっくり返ってしまいます。そう考えた時、友梨はとりあえずその「いい事」を経験してから告白、という流れで考えるのではないでしょうか。

「これから告白」案
三案出しましたが、これが正解のように思います。真琴へのメール後の教室、千昭と友梨が話をしてるカットもなく、友梨の挙動不審なカットから入る事を考えると、友梨の言っていた「すっごいいい事」とは、昼食を一緒に食べるという約束だったのではないでしょうか。そして、友梨は告白のタイミングをこの時と考えていた。友梨の挙動不審な理由は、そう考えるのが一番しっくりとくると思います。

高瀬の消火器事件後。千昭は友梨がいる保健室に、遠慮なく入って来ます。友梨の事を心配して、とも取れなくはないですが、この千昭の態度は友梨の告白が終わっていたため、ととらえるほうがいいと思います。つまり告白のタイミングは、昼休みと考えて間違いなさそうです。

ただ、千昭が友梨の告白にOKを出したのがどこかは、絞り込みが難しい所です。昼休みに返事をしたのか、保健室の後で返事をしたのか。このどちらかであることは間違いないのですが、どちらで返事をしたかによって、千昭がなぜ友梨と付き合ったのか、という意味合いも変わってくると思います。

それでは続けて、その2つのタイミングで、千昭がなぜ友梨と付き合ったかを考察してみます。

「昼休みに返事をした」案
千昭が真琴を好きだったというのは間違いのない事実です。しかし千昭が住む未来は荒廃してしまった世界。そう考えた時、千昭は同じ世代と若者と、キャッチボールしたりナイターを見に行ったりする、普通の思い出が欲しかったのではないでしょうか。真琴と付き合える可能性が薄くなり、思い出が欲しかった千昭は友梨からの告白を受けた、とも考えられます。第一幕で功介が告白された際、千昭「俺だったら絶対付き合う」と言っていた事も、その裏付けと出来そうです。しかしその場合、ラストでの真琴との別れは何だったのか?という話になり、どこか白けてしまいます。そこで次案。

「保健室、もしくは保健室後に返事をした」案
千昭は正義感が強く、真っ直ぐな性格として描かれています。千昭が告白を受けた理由というのは、その性格からくる同情的なものだったのではないでしょうか。そう考えた時、怪我をして落ち込んでいる友梨の事を思い、このタイミングで告白を受け入れたという事です。この解釈であれば、ラストのモヤモヤも解消されるかと思います。

千昭と友梨が付き合うという出来事。真琴の立場で考えれば、日にちをまたぎ、三人でキャッチボールが出来るぐらいまでに「千昭の気持ち」を整理したにもかかわらず、その千昭が友梨の告白を受け入れたという事は、かなりショックだったと思います。

そしてこの時間軸、その後の流れ。もう一つだけ謎が残っています。それが下記。

千昭と友梨が行くナイターはいつなのか?
もともとこの話題が出てくるのは物語序盤、夏休みをどうするかという話の中です。そう考えると、最初の時間軸で三人がナイターに行くとしたら、夏休みです。

また一回目の高瀬いじめ後の教室のシーン。ここで千昭は、夏休みに花火大会に行きたいと言っていた真琴の言葉に従い、花火大会の特集が載った雑誌を開いています。しかし、真琴に話しかけようとした際、避けられてしまいます。つまりこの時、この時間軸で千昭が夏休みに行く所が、花火大会からナイターに変わり、友梨と行くことになったのだと思います。そう考えた時、夏休み前にはナイターに行っていなかったのではないでしょうか。千昭「俺の趣味を理解してんだよ」との台詞も、真琴は花火大会と言ったのに対し、友梨はナイターと言ったためだと思われます。

なおラスト近く、友梨は「千昭君って休みの日なにやってんのかな?」と、真琴に探りを入れます。この台詞が、ナイターへの布石になっていたとも考えられるのですが、その場合はナイターの話が出る前(登場人物の時間軸ではなく、物語の構成の話です)に、この台詞が必要なはずです。ナイターの後に、この台詞が来たということは、ナイターの話をこの台詞で回収した、と見るのが妥当ではないでしょうか。

余談ですが、この真琴が友梨のメールを受け取るシーン。その後、妹に電話が来ます。その時、妹は「ちょっと待って」と言い、部屋を出ていきます。真琴に聞かれたくない内容、もしくは知られたくない相手だったのでしょうか。もしかしたら彼氏だった可能性というのも考えられます。真相は分かりません。

7.功介「ま、こ、と」
鍵の番号は「724」、そして上記は真琴の自転車の鍵を開ける際の台詞です。つまり「まかた」です。マ行、カ行、タ行なので「724」となります。

8.千昭「俺、未来から来たっていったら、笑う?」
前記しましたが、笑う以前に唐突過ぎて言葉が出てきません。「時をかける少女」である以上、仕方がない事ではあるのですが、前振りもなく「未来から来た」と言われても、笑うとか以前の問題だと思います。この台詞の後、真琴は何か言おうとして口をパクパクさせますが、言葉になりません。いつもの真琴であれば「は?」と言うような気もしますが、言葉が出なかった気持ちもすごく分かります。

9.真琴「いっけー!」
大した事ではないのですが、真琴が着ているTシャツ。この日は7月14日で「01」とデカデカとプリントしてあります。他のシーンでは7月13日「CUBIC」、7月11日・鉄板焼きの日の「碇のマーク」となっています。

10.友梨「真琴、Time waits for no one」
冒頭から度々登場する、黒板に書かれた「Time waits for no one」。物語が問いかけるこの言葉、いったい誰が書いたのか?複数案上げておきます。

まず、可能性の高い二案。

案1.誰でもない
主要な登場人物ではなく、誰か他の生徒が書いたという事です。しかしこれでは、まるで神の啓示のようで、どことなく気持ち悪い。そこで次案。

案2.千昭が書いた
これの可能性が一番高いです。千昭はカラオケでも同様の歌を歌っているので、「Time~」は千昭が書いたと考えていいのではないかと思います。そして問題は「←(゜Д゜)ハァ?」です。順を追って考えた時、真琴や浩介との楽しい時間を終わらせて、いつかは必ず帰らなければいけない千昭。その事を思い、黒板に「time~」と書く。その後、やるせない気持ちがこみ上げ「ハァ?」を書き加えた、という事ではないでしょうか。正解は分かりません。

そして、上記した友梨の台詞です。この台詞、素直にいい台詞だと思ったのですが、よく考えてみると、友梨も千昭の事が好きなはずなのに、真琴視点に立ち過ぎではないでしょうか。そこで別の案。

案3.友梨が書いた
「ハァ?」に関しては千昭が書いたという案を採用して、「Time〜」部分を友梨が書いたという案です。夏休みが近づいた事もあり、友梨は千昭との関係をどうするか思い悩み、「時は待ってはくれない」と自分に言い聞かせるように黒板に書いた。そう考えると、自分に言い聞かせる言葉が、真琴の告白を受けて、そのまま真琴に送る言葉になってもおかしくはありません。つじつまは合うと思います。しかし、黒板の字があまりにも汚い。それに誰かに見られるかもしれないのに、そんな恥ずかしい事をするのか?それで友梨が書いたという事を否定出来る訳ではありませんが、そこで似たような別案。

案4.先生が書いた
案3よりは可能性はあると思います。夏休みに勉強をしたかどうかが、受験の結果にもつながってくる、などと高校の先生は必ず言ってきます。授業の終わりにその流れで「Time〜」と黒板に書く。友梨はそれを受験の事ではなく、千昭との仲をどうするかという意味で解釈する。その後の流れは案3と同じです。これであれば字の汚さや、黒板に書いてある不自然さも説明がつくかと思います。しかし、しつこいようですが正解は分かりません。

11.浩介「真琴!前見て走れ」
物語のテーマにも関わる、神の啓示の様な台詞。なぜ突然こんな事を言うのか?ここは単純に、真琴が後ろを向きでしゃべりながら歩道に出ようとしていたため、この台詞を言っただけだと思われます。若干強引な解釈のような気もしますが、唐突な感じを避けるために、演出面でも執拗に真琴を振り向かせながら、功介と会話をさせています。

またこの時、真琴がグランドへ走って向かう理由。決して盛り上げるためだけではなく、自転車が壊れているので、グランドには走って向かわなければならないという、必然性があります。

12.泣き叫ぶ真琴に近寄る千昭。
キスをしてしまうよりは良かったと思います。そしてこのシーン、下記三点の疑問が残ります。

  • 甲.真琴「そんな言い方してなかった」
  • 乙.一度去った千昭が戻って来る
  • 丙.千昭「未来で待ってる」真琴「うん。すぐ行く、走っていく」

まず甲。千昭「帰らなきゃいけなかったのに、いつの間にか夏になった。お前らといるのがあんまり楽しくてさ」を受けての台詞。千昭は帰れなくなった時、ほとんど同じ台詞を言っています。それなのに、なぜ真琴は上記のように答えたのか?当然の事ながら、千昭は真琴に何を話したかは覚えていません。そのことを逆手に取って、カマをかけたという事だと思います。

次に乙。結局、千昭は真琴に告白をせず、追い出されるような形で一度画面から消えます。そしてこの時、真琴は自転車に乗った高校生のカップルに、ありえたかもしれない未来を重ねて大泣きします。そしてこの後に、再び千昭が戻ってきます。なぜ戻ってきたのか?

ここは単純に考えます。自分自身の現実と向き合い、真琴にしっかりと自分の気持ちを伝え、別れを告げるために戻って来たと考えてよいかと思います。しかし、この後の千昭の台詞がどうくるかによって、作品全体の余韻が変わってしまう、かなり難しい流れだと思います。

そして丙。真琴と千昭の台詞。この難しい部分を、見事なまでの台詞でつないだと思います。正直に言えば、会話として成立しているか微妙な面もあります。しかしここで告白をすれば、もう会えないのに何を言っているんだ?となりますし、別れを告げれば、泣いている真琴に追い打ちをかけるような形になり、なぜ同じことをまた言いに来た!となってしまいます。そこで選択された台詞が、決意表明です。

千昭「未来で待ってる」、真琴「すぐ行く、走っていく」。この台詞は、二人が避けてきた今と向き合うという決意を語った言葉です。この決意を、好きな人に聞いてもらい、約束をするという事で、お互いの告白の代わりとした訳です。

ちなみに千昭が待っているのは、絵でしょうか?それとも真琴本人でしょうか?普通に考えて、真琴が物理的に千昭に合うことは不可能です。そのため、未来で千昭が待っているのは、絵ということで間違いないと思います。未来で千昭は、真琴が残してくれた絵を通して、真琴と再開するのだと思います。

13.真琴「やること決まったんだ」
真琴の決めた事が具体的に何であるかに、あまり意味はないのかもしれません。テーマや全体の構成からいえば、真琴が未来と向き合い、やりたい事を決めたという事実がより重要になってきます。それでも一応考察してみます。

もちろん作中ではっきりと語られる事はありません。しかしある程度は示唆されており、絵の焼失を防ぐ、もしくはその原因となる世界の荒廃を防ぐ、などが考えられます。ただ千昭が住む未来に関しては詳しく語られておらず、また現在の世界から荒廃した未来は想像しづらいと思います。そこで千昭と交わした約束から考え、絵を残すための何か、というよりミクロな視点での選択なのではないでしょうか。

一瞬芸術系かとも思いましたが、冒頭で理系か文系かの選択が提示されている以上、そのどちらかを決めたはずです。予想としては、千昭が数学が得意だったこともあり、真琴も同じく理系に進んだ可能性が高いと思います。ただ、どう役に立つのかは不明です。

そしてこのシーン手前でも、時間文字列が登場します。もちろんこの部分は冒頭と対になっているのですが、背景は黒です。この黒背景の時間文字列が登場する場所は、前半では冒頭の夢・真琴事故・その後の河原、そして後半、功介の事故・ラストシーン手前となっています。

上記の前半・後半の間にはさまっている時間文字列は、全て白背景となっており、これは真琴がタイムリープを出来ると気づいてから行なった部分と一致します。そう考えた場合、若干気持ちの悪い解釈ではありますが、この黒背景の部分は「Time waits for no one」を視覚化した、神の視点的な表現なのかもしれません。

魔女おばさんとは誰か?

本編の情報から読み解ける事ではないので、別に誰でもいいのですが、そうするとモヤモヤした物が残ってしまうので解説します。しかしその前に、予備知識として知っておかなければならない事があります。それはオリジナルの「時をかける少女」という作品です。

すでにご存じの方は飛ばして下さい。また必要上、原作「時をかける少女」と、大林映画版「時をかける少女」のストーリ全体、及び核心部分に触れます。(クリックで原作・大林版映画の解説を飛ばします)

「時をかける少女」の実写映画と原作

ご存じの通り、原作は筒井康隆さんのSF小説で、過去に何度も映像化されています。しかし全てを解説する訳にはいきませんので、この作品以前に映像化された作品から、オリジナルともいえる大林宣彦監督の「時をかける少女」と、筒井康隆さんの原作をピックアップしてみたいと思います。

順番的には原作 → 映画の順で解説すべきなのですが、僕は映画 → 原作の順番でしたので、見てから読むの順で解説をしていきます。

「時をかける少女」大林宣彦 監督版(1983年公開 / 脚本:剣持亘 / 主演:原田知世)
「読んでから見るか、見てから読むか?」というキャッチコピーの元、一時代を築いた角川映画の代表作の一つ。SF映画というよりは、アイドル映画と呼んだ方が適切かと思います。ペラペラな登場人物、なんとも言えない台詞と演技、そしておじさんが夢想したような実在感のない女の子。そう考えると、ある意味SFかもしれません。しかしそれでも、良質な映画として成立しているというのは、さすが大林監督だと思います。

とりあえず書きたいことは山ほどあるのですが、話がそれるので中身の解説にいきます。

<基本情報>
主要な登場人物は三人。主人公は原田知世さん演じる「芳山和子」(以下・主人公)、そしてその友人の深町一夫(以下A)と堀川吾朗(以下B)。またある程度出番がある脇役としては、男性教師と女性教師が登場します。そして主人公の家族構成もアニメ版と同じように、父母、そして少し頭のゆるそうな妹といった感じです。

<ストーリー概要(箇条書き風にします)>

1983年3月
主人公は自身が通う高校のスキー教室に来ている。そこでA・Bと仲良く話をしている。

4月16日 土曜日
主人公は理科室の掃除をしている時に、鍵のかかった隣の実験室から物音がする事に気づく。実験室に入ると割れたフラスコから「ラベンダー」の香りがする白い煙が漂っている。そして主人公はその煙をかいでしまい意識を失う。主人公はAとBに助けられ保健室に運ばれる。主人公はAと一緒に下校。途中Aの家に寄る。そこでラベンダーの温室を見せてもらう。

4月17日 日曜日
朝。目を覚ます主人公。Aと付き合う事を妄想する。

4月18日 月曜日
学校で授業を受ける主人公。夜に地震が起きB家の裏で火事が起きる。主人公はBの事が心配になりB家を見に行く。その時Aと出会う。やはり主人公はAに恋心を抱いている。Aは別れ際に明日植物採集に行くたため学校を休むと告げ、主人公と分かれる。そして家に帰る途中、何者かにおそわれる主人公。

4月19日 火曜日
主人公、気がつくとベッドの中。登校時にBと会う。その時、神社の瓦が崩れてきて、二人を直撃しそうになる。

4月18日 月曜日
主人公、気がつくとベッドの中。主人公が登校すると何故か18日。そして一度経験した授業が繰り返される。混乱する主人公。学校が終わり、主人公はAの家に寄り、今日経験したことを相談する。Aはそれはデジャヴだと説明する。

夜、やはり地震と火事が起きる。火事を見に行く主人公。そこでAと会う。Aは主人公の話を信じ、それはタイムリープだと説明する。その時主人公は、Aの手に子供の頃一緒に負ったはずの傷がないことに気づく。

4月19日 火曜日
主人公は登校時に瓦が崩れてくる事を思い出し、間一髪でBを助ける。その時、なぜかAの手にあるはずの傷がBの手にある。疑問を抱いた主人公はAの家に向かう。Aは植物採集に出かけ不在。そしてAを探して温室に入いると、ラベンダーの香りに包まれ気を失ってしまう。

主人公、気がつくとAが植物採集をしている崖にいる。真実を知ろうとAに詰め寄る主人公に、Aは土曜日の理科実験室に戻るように促す。

4月16日 土曜日
土曜日の理科実験室に戻った主人公。そこにはAの姿。Aは主人公に真実を話し始める。

Aは未来から来た薬学博士であり、薬学上必要なラベンダーを求めてテレポーテーション(超能力)で現代に来ていた。本当はAという人物は子供の頃に死んでいて、未来からきた薬学博士が周りの人間の記憶を書き換えて、Aになりすましていた(以下A’)事を告げる。昔から知っていると反論する主人公に、A’は初めて会ったのは一ヶ月前のスキー教室であり、主人公のA’との子供の頃の楽しい思い出は、Bとの思い出を書き換え物だと教える。それでもA’の事が好きな主人公。

しかし、A’は帰らなければならないと告げる。そして関わった人間、またA’自身の記憶も消さなければならないと言う。主人公は二人の思い出を大事にして生きていきたいと頼むが、A’は主人公に薬品の臭いをかがせる。主人公は気を失い、A’は未来に帰って行く。

1994年4月16日 土曜日
時が経ち主人公は大学で薬学の研究をしている。ある日、勤務先の廊下で一人の男に実験室の場所を尋ねられる。その男はA’だったが、主人公はそのことに気づかなかった。

「時をかける少女」筒井康隆 原作(1967年初版)
83年に映画化される15年も前に初版本が出ていること考えると、実はかなり古い作品です。ただ映画化の前に、「タイムトラベラー」という題名でNHKが72年にTVドラマ化しています。余談ですが、僕が持っている物は、1995年に買った文庫本(角川文庫・76年初版)で58版目の「時をかける少女」です。

<基本情報>
主要な登場人物は四人。主人公は「芳山和子」(以下・主人公)、そしてその友人の深町一夫(以下A)と浅川吾朗(以下B)。そして映画版でホットパンツをはいた色物扱いの女教師が、今回は科学の先生(以下・女教師)として重要な役まわりになっています。もちろん「桃栗三年柿八年〜」とかいうヘンテコな歌も出て来ません。主人公の家族は、母と妹が一瞬だけ登場しています。

<ストーリー概要(箇条書き風)>

15日 金曜日
主人公が理科室の掃除をしている時に、誰もいないはずの隣の実験室から物音がする。実験室に入ると割れた試験管から「ラベンダー」の香りがする白い煙が漂っている。そして主人公はその煙をかいでしまい意識を失う。主人公はAとBに助けられ保健室に運ばれる。

18日 火曜日 夜
主人公が寝ようとしていると、地震が起きる。窓の外を見るとB家の近所が燃えている。主人公はBの事が心配になりBの家を見に行く。その時Aと出会う。Bの無事を確認し、家に戻り寝る。

19日 水曜日 朝
登校時、後ろから叫び声が聞こえる。振り向くと猛スピードで暴走しているトラック。後ろにいたBがトラックにはねられる。そして、そのまま主人公の方に向かってくる。

18日 火曜日
主人公、気がつくとベッドの中。主人公が登校すると何故か18日。そして一度経験した授業が繰り返される。混乱する主人公。下校後AとBに、今日の夜、地震と火事が起きると伝えるが、二人は信じない。Bは主人公を精神病院に入院させようとする。Aは一日だけ様子をみようとBを説得。

夜、地震とB家の裏で火事が起きる。火事を見に行く主人公。そこでA・Bと会う。二人は主人公の話を信る。Aは主人公とBに、これはタイムリープ(作中ではテレポーテーション)だと説明する。

19日 水曜日
主人公は登校時に暴走トラックに襲われる事を思い出し、Bを助ける。主人公もトラックに引かれる事はなく、近くのサラリーマンが代わりに引かれる。

放課後、主人公・A・Bは職員室を訪れ、女教師にこれまでの出来事を相談する。女教師は三人の話を信じ、それは時間跳躍(タイムリープ)だと説明する。そして、それがいつから起こったのかと主人公に尋ねる。主人公は四日前の実験室からだと気づく。女教師はその四日前に戻ると何かが分かるはずだと言うが、主人公はどうすれば時間跳躍が出来るのか分からない。

正門まで三人を見送る女教師。その時、女教師が「上から鉄骨が落ちてくる」と嘘を叫ぶ。

17日 月曜日 深夜
気がつくと真夜中の道路。自宅に向かうが鍵がかかっていて入れない。家に入りたいと強く念じる。

15日 金曜日
目を開けると自宅。時間は10時30分。急いで学校に向かう主人公。学校では主人公が突然消えたと大騒ぎになっている。同じ時間に同じ人間が同時に存在できないため、授業を受けていた主人公は消えたのだった。とりつくろい、そのまま授業を受ける主人公。そして放課後、理科実験室に向かい身を潜める。

するとそこに現れたのはA。説明を求める主人公に、Aは未来人だと答える。詳しい事は人に聞かれるとまずいと言い、小さな機械を取り出す。ボタンを押すと主人公とA以外の時間が止まる。

そしてAは正体を話し始める。Aは2660年の薬学部の大学生。未来では人間の潜在能力(主に超能力)を引き出す薬が色々と開発さていた。優等生だったAは、身体移動と時間移動を合わせた、時間跳躍の薬を研究しており、それにはラベンダーの成分が必要だという事を突き止めた。しかし実証がまだであったため、Aは自分で試して見る。そしてこの時代にやってくる事は出来たが、薬の力が弱く未来に帰れなくなってしまったのだと告げる。理科実験室に忍び込んでいたのは、再びその薬を作っていたためであり、そこにやってきた主人公が、気化した薬を吸い込んでしまい、時間跳躍が出来るようになってしまった、というのが真相である。

主人公はAの事を昔から知っていると言うが、Aは出会ったのは一ヶ月前だと教える。昔から知っていると思っているのは、Aが周りの人に集団催眠をかけたためだと教える。そして、Aは主人公の事が好きだと告白。しかし未来のルールで、帰る際に関わった人の記憶は消さなければならない。別れを惜しむ主人公。Aはきっと会いに来ると約束する。ゆっくりと意識を失う主人公。

同日(15日 金曜日)
理科実験室で目を覚ます主人公。主人公はBに助けられ保健室に運ばれる。

18日・19日
Aが配慮してくれたのか、地震も火事もトラック暴走も起こらない。

その後
通学路にあるAの家の前を通る主人公。しかし何も思い出せない。その家には老夫婦が住んでいて、温室でラベンダーを育てている。ラベンダーの香りに包まれる主人公。その時主人公はいつも思う。いつか素晴らしい人が現れる。その人は主人公を知っていて、主人公も知っている人のような気がする。そしてきっとその人に出会えると。

二作品の比較と総括
基本的な流れは二作品とも同じです。しかし、映画では序盤から主人公がAに恋心を抱いているという設定ですが、原作では終盤にAが主人公に告白。それを受けて主人公はAに恋心を持つ、という流れになります。そのために全体を通すと、作品の印象はかなり変わってきます。

それでは本題に移ります。

魔女おばさんの考察

魔女おばさんこと「芳山和子」とは誰か?すでに答えは出ているのですが、本作の魔女おばさんは、映画・小説どちらの「芳山和子」を踏襲しているのかも、合わせて考察いたします。

とりあえず下図が、魔女おばさんの登場シーンと関連部分。

時をかける少女 魔女おばさん登場部分

(画像はクリックで拡大出来ます)

先に結論から述べます。

いまさら言うまでもないですが、魔女おばさんは、オリジナル版「時をかける少女」の「芳山和子」です。そしてどの「芳山和子」かと言えば、筒井康隆版の「芳山和子」である可能性が高く、原作を継承していると考えて問題ないかと思います。(その理由は下記項目で順を追って説明していきます)

しかしそう考えた時、どうしても核心的な設定で整合性が取りずらい部分があります。それは魔女おばさんの一番最後の登場シーン。

Ⅴ .博物館事務所
魔女おばさんが「高校の時、初めて人を好きになった。〜略〜」と自分の過去を話します。そして、その時、本棚にある高校時代の写真がラベンダーと一緒に写ります。

ここです。小説版の「時をかける少女」(というより過去の全ての作品)では、芳山は記憶を消され、深町(A)と出会った事すら覚えていないはずです。それなのに、なぜ深町の事を覚えていて、なおかつ本棚に写真まで飾ってあるのか?少々強引な解釈で完全な同一人物案を通してみたいと思います。

小説版で、深町が芳山の記憶を消す方法は書かれておりません。書かれてある事は、ラベンダーの香りのする白い煙で意識を失い、目を覚ますと記憶を失っていたということです。深町はどうやって芳山の記憶を消したのか?考えられる方法は二つです。

パターン1.白い煙で記憶を消した
パターン2.深町の催眠術で記憶を消した

パターン1とも思えるのですが、この白い煙というのは、タイムリープするための薬品が気化した物です。冒頭でこの煙を吸った芳山が記憶を失うという事はありませんでした。そう考えると、これ自体に記憶を失わせるという効果はありません。

そこで考えられるのがパターン2。深町は周囲の人間に、自分の事を昔から知っているように思わせるため、集団催眠を使いました。この時の深町も、同じような方法で芳山の記憶を操作した、と考えるのが自然ではないでしょうか。そして「この時代の人はかかりやすかった」と深町も言っているように、歴史を書き換えるたぐいではなく、あくまでもそういった暗示をかける程度の物だったと思います。

そう考えた時、芳山が深町との思い出を話せた理由は、どこかで記憶が戻ったためではないでしょうか。そして深町は、存在しなかったという暗示はかけたものの、その物証までは消せなかった。そのために写真が残っていたと考えられます。

ただこの案でいった場合、千昭が住んでいる未来は、超能力が横行している世界となってしまいます。これに関しては、千昭の住んでいる未来というのは深町がいる2660年ではない、とも考えられますし、登場していないだけで、薬によって超能力が使える世界だったとしてもおかしくはありません。実際、深町は時間を止める時に機械を使っていましたが、本作で千昭は機械を使うことなく時間を止めています。そう考えたとき、千昭がいた未来とは、深町がいた未来より科学の進んだ時代だったのかもしれません。

かなりご都合主義的な考察をしてしまいましたが、実際は原作をベースにした、パラレルワールドの「芳山和子」といった解釈が正解なのかもしれません。

ちなみにラベンダー花言葉は「あなたを待っています」です。

それでは下記。

魔女おばさんの言動から小説ベースと思える部分を考えていきます。また、魔女おばさん関連の項目も補足しておきます。

Y.母「これ帰りに魔女おばさんのとこ持ってって」
真琴に桃を渡す母。そして「いつになったら結婚するのか聞いといて」と続きます。まだ魔女おばさんは登場しませんが、真琴には魔女おばさんという独身の叔母がいる事が、冒頭で語られます。

そして、なぜ「魔女」と呼ばれるのか?そう呼ばれそうな出来事は、筒井版で登場します。芳山が最後にタイムリープをした際、二重存在の否定により、教室で授業を受けていた芳山は消えてしまいます。筒井版で明確に「魔女」という言葉が出てくるわけではないので、確証は持てないのですが、この出来事により「魔女」とあだ名された可能性が大きいと思います。

Ⅰ .博物館(初登場シーン)
東京国立博物館本館正面の実景から入ります。もちろん実在します。2014年の台湾『國立』故宮博物院のポスターをめぐって、一騒動起こした所です。ちなみにこのシーン中盤、真琴が魔女おばさんに駆け寄る場所が、本館エントランスホールになります。またこの博物館シーン、毎回真琴は首から入館パスをさげています。

博物館実景の次カット、魔女おばさんのアップ。電話がなり、職員が魔女おばさんの事を「芳山さん」と呼びます。ここで魔女おばさんの名字が「芳山」である事がわかります。

その後、真琴との会話でタイムリープという言葉を出し、真琴の話をそのまま信じます。この時の魔女おばさんの態度を、冗談と取るか本気と取るか。話の流れから(また魔女おばさんの設定から)考えれば、本気で「よくある事」と言っていると思われます。もしかすると、この部分からも、魔女おばさんが深町の事やタイムリープが出来た事を覚えている、と読んでもよいのかもしれません。

Ⅱ .博物館事務所
魔女おばさん「アテスウェイね」
本編にも魔女おばさんの考察にも全く関係はないのですが、知らないと何を言っているか分からないので、一応拾っておきます。

アテスウェイ。東京女子大前のケーキ屋さんです。なぜそんな事を知っているかというと、この映画が話題になっていた頃、職場の女の子が東京女子大出身で、ここのケーキを買ってきてお昼休みに配っていたからです。その時に得意げに話していました。有名なお店らしいです。ちなみに僕の分はありませんでした。

魔女おばさん「真琴がいい目を見てる分、悪い目を見てる人がいるんじゃないの」
今後の展開を暗示させるこの台詞、当て推量で言っているとも思えます。しかし「芳山和子」で考えたときはどうでしょか?「芳山和子」が経験した、暴走トラック関連の出来事。この時、芳山はタイムリープをして、トラックに引かれるはずの友人を助けます。しかし近くを歩いていたサラリーマンが、代わりに引かれてしまいました。魔女おばさんはこの体験があったからこそ、上記のような事を言ったのではないでしょうか。

それならばなぜ、もっと強く真琴に忠告をしなかったのか?魔女おばさんが体験したトラックの出来事は、再びタイムリープをして全てが終わった後には、それ自体が起こりませんでした。そう考えれば、なるようになる程度に考え、強く真琴に忠告をしなかったのかもしれません。

Ⅲ .博物館作業室
魔女おばさん「真琴は千昭君が好きなんだと思ってたけどな」
真琴が時間を巻き戻すたびに、言っている事が変わる台詞。小説でも同じように芳山は、同級生の女の子(神谷真理子)から「芳山さんは深町さんの方が好きなんだと思っていたわ」と言われます。そう考えると、オマージュ的な台詞なのかもしれません。(ただし小説ではタイムリープするたび台詞が変わったりはしません、登場も一度きりです。)

魔女おばさん「好きって言われて好きになっちゃう事もあるのに」
この台詞も、筒井版からの継承だと思われます。上記しましたが、小説では深町の告白を受けて、戸惑いながらも、深町の事が好きになるという構成だからです。

Ⅳ .博物館展示場
ここでの魔女おばさんは「真琴は功介君が好きなんだと思ってた」と言います。千昭君から功介君に変わっています。これについては、次のシーンでまとめて解説します。

Ⅳ .博物館事務所
魔女おばさんは「真琴は千昭君とも功介君とも、どちらとも友達のまま〜」と、ここでも違う内容です。真琴が選んだ今に対して、それに沿った形で毎回言っている事が変わります。単純に考えるとかなりいい加減な台詞なのですが、核心に近い部分です。「Time waits for no one」です。魔女おばさんは、真琴が選択した今の中で、常に今の自分と向き合え、という事を促しているのだと思います。前出の二回は、真琴は逃げてしまいますが、最後は自分の気持ちと向き合います。

Z.キャスト部分のエンドクレジット。
魔女おばさんはクレジットで「芳山和子」となっています。しかし真琴の両親に名前がなく、父・母とだけクレジットされています。

その理由。当然の事ながら、魔女おばさんは真琴の叔母です。「芳山和子」に妹しかいなかった事を考えると、真琴の母の姉である事が推測されます。その妹は映画では良子、小説では名前が出て来ません。実際は小説を意識していたと思いますが、良子以外にすると映画版が完全に無関係になりますし、良子にすると映画版が強く意識されてしまう。そこで妹(真琴の母)の名前を出さずに、過去のどの「時をかける少女」かに限定されるのを避けたのではないでしょうか。

父に名前がないのは、母だけ名前がないとそこを意識しすぎるため、母とセットで名無しにされただけだと思います。

以上、魔女おばさん関連の考察でした。

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参照・引用(外部リンク)

『時をかける少女』 筒井康隆 著 / 1967
『時をかける少女』 監督:大林宣彦 / 1983
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