2014.02.20

「彼氏がいる女性に、主人公がひとりで勘違いをして勝手に盛り上がる話」

四畳半神話大系 第6話英会話サークル ジョイングリッシュ

絵コンテ・演出:夏目真悟 / 脚本:上田誠・湯浅政明

63 89

薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時に一つにしぼるリスクを回避するため、三つのサークルをかけもちすることにする。その中の一つ、英会話サークルで羽貫さんという女性と知り合い親しくなる。ある日、初めて羽貫さんに飲みの誘いを受けるが、『私』は同時に別の女性とも約束をしていた。

第6話の主要スタッフ。絵コンテ・演出は夏目真悟。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は西垣庄子・浅野直之。

以下は核心部分を含みます

ひさしぶりの更新です。というかブログをやってたこと自体忘れてました。

これまであまり詳しい事が語られなかった謎の歯科衛生士・羽貫さんの事が色々と明らかになる第6話。もう一人の『私』であるジョニーもこの回で初めて登場。全11話を通してもっとも卑猥な回であり、全体の構成から外れに外れ、仮のヒロインであるはずの明石さんが全く登場しない回でもある。

< 第6話に関して >

この回は『私』が3人の女性の中から羽貫さんを選ぶという設定で、羽貫さんの人物像が紹介される。羽貫さんの色々な部分が見えてくる度に(それに振り回される形ではあるが)、常に決断をして行動を取るのは『私』である。よってこの話の主人公も『私』である事は疑う余地はない。

下記の補足として、羽貫さんが「親しい人としか飲みに行かない」という前振をしておくことによって、羽貫さんが迫ってくる第二幕後半部分が下品な単発ネタになることを防いでいる。羽貫さんに焦点を当てた際、中盤のお酒を飲むシーンを挟んで、前半と後半の羽貫さんの変化が上手に構築されている。

分岐点と概略

第一幕概略 「3人の女性の中で揺れ動く私が、」
第二幕への転換点(7m10s) 「羽貫さんが悩んでいる事を知る」
第二幕前半概略 「どの女性にするか迷う」
中間点(11m20s) 「羽貫さんに決める」
第二幕後半概略 「羽貫さんに迫られる」
第三幕への転換点(17m50s) 「トイレに逃げ込む」
第三幕概略 「選択を間違ったと後悔する」

第6話を分解

四畳半神話大系 第6話 パラダイム

1.羽貫「Touch my body」
直訳すれば「私の体に触れ」完全に逆の意味です。面白いネタなのですが、何回か見ている時に気づきました。英語が得意な人であれば初見から笑えたのかもしれません。

2.NA/私「小津は私と同回生である」
「工学部で電気電子工学科に所属する〜」と続くわけですが、その時に背景に表示される電子回路の図面。専門ではないので図面を読むことはできませんが一応。一番下「R16 10000000000(G?)GGB」とあり。R(Ω)はそのまま抵抗の値ではないかと。そして中段は回路記号を使い、私(左側)と小津(右側)のキャラクターを別々に表現している(もしかしたら特に意味は無いのかもしれないが……)はず。そして上部。左側にW(私)、右側にOZ(小津)の文字。なんとなく雰囲気だけは分かったのですが、ギブアップです。どなたか詳しく解説出来る方がおりましたら、よろしくお願いいたします。

この後、過去に登場した自転車整理軍・図書館警察に続き「印刷所」の説明が登場。第9話を進める上での必要な情報が出そろう。

3.私「He is my friend, but also my enemy.」
OZニュース。羽貫さんに「それ(小津に対する思い)を英会話で披露してみればいいんじゃない。それぐらい強いパッションがあれば〜」とアドバイスを受けて、『私』は気持ちに身を任せて話をする。さんざん小津の悪口を言うのだが、最後にこの台詞。「He is my friend」とはっきり言っている。認めたくはないと思いつつも、どこかで小津が友人であると思っているのであろう。

4.私「羽貫さんお酒は……」
どうでもいい台詞なのですが、関係を進展させたい時にお酒の力に頼ればなんとかなるかも、などと思ってしまいます。直接デートとかに誘えば良いのですが、僕も女性にもてたことがないので、こんな感じのワンクッション置いた聞き方をしていた様な気がする。結果はおして知るべしなのですが……

この後、羽貫さんは「こんなの(なすびのような顔)」と彼氏がいる事をほのめかす。6話・7話・8話では樋口師匠とのからみはないので、『私』は羽貫さんの「こんなの」が何であるのかは分かっていない。またここの『私』心境ですが、飲みに誘う→断られる、彼氏がいるか聞く→いる、と最悪の答えが返って来た訳なので、もう少しショックを受けて、頭が真っ白になってしまうような表現があってもよかったのではないかとも思う。

またこの時のメールの着信音が、電話の着信のように感じる。別の音はなかったのだろうか。

5.私「あいつに限ってそんな訳ありません」
小津に彼女がいるという衝撃的な情報を聞いた後の『私』の台詞。テンポ良く羽貫さんとの会話が進んでいるので見逃しがちではあるが、小津に彼女がいると聞いて『私』の表情が一瞬、悪魔(口が牙のようになる)へと変わる。

6.私「しかし事態は急転直下をむかえた(以下略)」
サッカーボールを空振りする子ども。ガラス窓にぶつかる子ども。ものすごい既視感。しかし思い出せない。邦画ではないはず。サイレントか?もしくは60年代のコメディーか?はたまたTVシリーズだったのか?思い出せない。分かる方は情報をいただけるとうれしいです。

★.おきにいり / 11m20s (後述・クリックで移動)
この直前のバーに向っているシーン。『私』は「窪塚の毒牙にかかってはいかん」等と言ってはいるが、実際はそれだけではないような気がする。香織さん、景子さんを後回しにしてまで、彼氏がいる羽貫さんの所に向かったという事は、上手くいけば羽貫さんと一線を越えられるかもという下心もあったのではないのだろうか。

また、勢いで乗り切っているが『私』はなぜ、ホテルのラウンジに羽貫さんがいると思ったのか。『私』が窪塚のメールを見てからは、日付をまたいでいる。(下記は窪塚のメール)

今ホテルのラウンジです。飲みに来ませんか?(^_-)〜☆

そして、『私』は羽貫さんの誘いを断っているので、直接場所を告げるというのは考えにくい。好意的に解釈をすれば、羽貫「毎日これよ」「毎日誘ってくれる男の方が〜」といっているので、窪塚は馬鹿の一つ覚えのように、毎回このラウンジに誘っていたのかもしれない。

7.羽貫「馬鹿野郎ー!どこへでも行っちまえ」
第4話で世界一周の旅に出る樋口師匠に「お前も一緒に来るか」と誘われたとき、羽貫「無茶言わないでよ、馬鹿馬鹿しい」とクールに断っているのだが、こちらが本心。既出のフリを回収しつつ、『私』の立ち位置を変えて登場人物を多面的に見せる。この作品は人物に厚みを持たせるやり方が本当に上手い。

ちなみに第4話で、樋口「君は英語がしゃべれるからな」と言っているのだが、羽貫さんの英語レベルがしゃべれるなのか?そう認識している樋口師匠が面白い。

8.ジョニー「千載一遇の大チャンスだ!」
擬人化されたジョニーの登場。森見登美彦さんの作品としては、ジョニーは「息子」なのですが、この回としては性的欲求と解釈した方がすっきりとします。

ただ「東のエデン」のせいでどうしても、「ジョニー = 息子」というイメージが頭から離れない。 そういえば、くるりの「かごの中のジョニー」にも同じ意味で「ジョニー」が登場しました。京都(関西?)でよく使われる隠語なのだろうか?

9.私「何故〜我々男が支配されているのか」
冷静に自問自答しているようで、目が乳になっている。あえて説明は控えるが、第6話ではジョニーを筆頭に京都タワー、マンションのカギ、ヤカンなど、分かりく馬鹿馬鹿しいメタファーが満載である。またこの後の脳内会議で脳内メーカーが登場。この作品の放送が2009年、脳内メーカーのブームはこの前年位だった事を考えるとかなりなつかしい。

10.小津「羽貫さんは今コンビニの便器を抱えこんで報いを受けています」
(コンビニはファミリーマートの色ですね)個人的にはかなり好きな台詞なのですが、本筋とはあまり関係がないので、おきにいりからは外しました。この直前、小津「今日起こったことは水に流して欲しい」と羽貫さんからの伝言を伝えます。この「水に流す」ですが、シンプルに「忘れて欲しい」の方がニュアンスとして合っているような気がします。あえて「水に流す」を使ったのは、このあとの「便器を抱えて〜」になんとか引っかけようとしたのではないだろうか邪推してしまう。

城ヶ崎「な、なんだお前、持ち場はどうした!?」

『私』は喫茶店で窪塚のメールを見せられているため、羽貫さんが窪塚といるのではないかと勘違いしてしまう。しかし実際に羽貫さんといたのは城ヶ崎。城ヶ崎は突然現れた『私』をみて驚き「持ち場はどうした」と。諏訪部順一さんの声もあいまって、城ヶ崎は『私』の上官か何かよ!と笑ってしまった。このシーン、7話以降にならないと、持ち場の意味、なぜ城ヶ崎と知り合いなのかは明らかにされない。

スポンサードリンク

「四畳半神話大系」各話の考察

スポンサードリンク