2013.05.17

「この癖のある絵で見ることを辞めたとしたら非常にもったいない」

四畳半神話大系 第1話テニスサークル キューピット

絵コンテ・演出:湯浅政明 / 脚本:上田誠・湯浅政明

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薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時にテニスサークル「キューピット」に入るが、ラリーを続ける能力もなく、会話に加わる社交性もなく、居場所を失ってしまう。そして悪友・小津と出会い、人の恋路を邪魔をする「黒いキューピット」として、無意義なキャンパスライフを送る事になっていた。

第1話の主要スタッフ。絵コンテ・演出は湯浅政明。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は伊東伸高。

以下は核心部分を含みます

深夜とはいえ地上波のアニメでこの絵を1クール続けるのかと衝撃だった。実際はすぐのめり込んでいました。とにかく浅沼晋太郎さんの演じる「私」が早口で膨大な量の台詞を喋る。はまると、この台詞回しだけで笑えてきてしまう。そしてこの主人公、名前は明かされず最後まで『私』という一人称でクレジットされている。

< 第1話に関して >

主人公は『私』です。そして基本的には一話完結の短編なので、構造は複雑ではない。謎の人物がたくさん登場するが、全体ストーリーの軸となる私・小津・明石さん中心に構成されている。

分岐点と概略

第一幕概略 「薔薇色のキャンパスライフを夢見る私が、」
第二幕への転換点(5m50s) 「小津と出会う」
第二幕前半概略 「他人の恋路を邪魔しまくる」
中間点(11m20s) 「神様の言葉を思い出す」
第二幕後半概略 「縁結びの神に相談するか悩む」
第三幕への転換点(17m15s) 「明石さんとの約束を思い出す」
第三幕概略 「川に落とされ後悔する」

第1話を分解

四畳半神話大系 第1話 パラダイム

1.女性(声)「あーん」
初っぱな、私のナレーション「高野川と賀茂川に挟まれた三角地帯に位置する下鴨神社」この後ろで、女性の「あーん」という声が入っているのだが……奇っ怪な絵と、この「あーん」から始まり、その後の賀茂建角身神の下りへと続く。馬鹿馬鹿しく品のない知的な作品の始まりとしてはこの上ない。

2.樋口「要するに貴君か小津君かのどちらかだ」
実際はこの台詞は第1話の状況説明。11話まで見て二回目以降は、樋口師匠と小津はグルで、私と明石さんをくっつけるために一芝居打っていると分かるが、初回鑑賞時はそこまでは頭が回らなかった。この台詞と私の説明があったので、小津も同じように彼女がいないと男だと、上手い具合にミスリードされた。

3.明石「(あほ)」
本作のヒロインである明石さんの登場。登場人物は中村佑介さんの原案をもとに伊東伸高さんがデザイン。実際にヒロインだったかどうかは別にして、明石さんが魅力的でなければ、とてつもなく華のない作品になっていたと思う。そしてここのつながりでバードマンクラブの部長が初登場。

4.NA/私「〜小津は〜知らぬ事はないという独自の情報網を駆使して、」
何気ない台詞だが、理由がある。初回鑑賞時に、理由となる小津の秘密には気付きようはない。

5.老婆「さもないと、あなたはまた今と変わらぬ人生を歩むことじゃろう」
老婆「好機はあなたの目の前にぶら下がってございます」に続く台詞。この老婆の台詞で、この物語全体の展開や結末が分かる。話が進むと老婆の台詞が段々短くなり「好機は〜ぶら下がってございます」しか言わなくなるが、全て(11話以外)の平行世界で好機を逃すと後悔する結末を迎える。ちなみにこの後、小津と一緒に酔っ払った羽貫さんが初登場。

6.小津「この好機僕が取っちまおう」
私に明石さんとどうなのかと話す小津。この前に、小津「まさか一回生のときに小日向さんに振られたことまだこだわっているんじゃないでしょうね」との台詞がある。初回鑑賞時には、明石さんが私か小津のどちらかと結ばれるという前振りがあったため、私がどういう選択をするのかに注意が向いてしまう。しかし、二回目以降は樋口師匠と小津が私のために一芝居打っていることが、ここで確定する。ここの小津の表情もそういった物になっている、と思う。

7.小津「大きなカステラを一人で食べるというのは孤独の極地〜」
小津がカステラを持ってきた時の台詞。第1話後半で『私』はカステラを一人で必死に食べ、孤独の極地と戦うことになる。しかし今回は序の口。実は第10話のフリでもある。この台詞を覚えていると、第10話でカステラを食べる『私』がより絶望的に見える。

8.樋口「やーい、引っかかったー」
私の妄想の中で登場する、樋口師匠の台詞。上手い。この台詞回しがいい。ここを第1話のおすすめにしても良かったが、次点ということでおきにいりは、この次の部分。ちなみに1話では『樋口』の名前も『師匠』の単語も出てきていない。呼び名は『神』として登場している。

★.おきにいり / 15m55s (後述・クリックで移動)
何度見てもおかしさを感じる台詞。思わずつぶやきたくなるが、実生活でこんな台詞を使うことはまずない。

9.橋の欄干に立つ小津。
欄干の上に小津が追い詰められているシーン。初回鑑賞時は、私「花火の仕返しか」とあるように、小津の悪事の結果であるとしか読めない。しかし、これがラストへの大きな伏線となっている。ここで城ヶ崎と相島のカットあり。主要な登場人物は第1話で全て(香織さんを人とするなら、香織さんのみ登場していない)登場している。ちなみに小津に銃器のポインターの様な赤い光が照射されているが、11話にはない。

10.時間が巻き戻る
この巻き戻し、何が写っているのか気になり、目を凝らして見て見たが、放送話を巻き戻しているだけでした。この直前の、私「いや私は小津と関係ない」の台詞回しもかなりよいですよね。普通ならさらっと言わず、挙動不審な演技をしてしまうと思う。

私「負けてたまるか。人恋しさに負けてたまるか」

浅沼晋太郎さんの台詞回しが非常に気に入っています。カステラをボロボロとこぼしながら頬張り、この台詞。実際にこの勢いでカステラを食べ続けると、口の中がパッサパサになってしまいます。

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「四畳半神話大系」各話の考察

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