2013.05.20

「他愛もなく品のない話なのだが、実は今後の展開と結末が全て暗示されている」

四畳半神話大系 第2話映画サークル みそぎ

絵コンテ・演出:横山彰利 / 脚本:上田誠・湯浅政明

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薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時に映画サークル「みそぎ」に入るが、そこは会長の城ヶ崎先輩の元に独裁体制が築かれ、『私』は会長を持ち上げるために利用されてしまう。そして悪友・小津と城ヶ崎先輩に天誅を下すため、告発映画をつくる事を決意する。

第2話の主要スタッフ。絵コンテ・演出は横山彰利。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は西垣庄子。

以下は核心部分を含みます

ダッチワイフの香織さんが初めて登場し、城ヶ崎先輩の変態ぶりが馬鹿馬鹿しく紹介される第2話。初回鑑賞時は品のない他愛もない内容なのですが、実は今後の展開と結末が全て詰まっている。

第2話のサークル名「みそぎ」は『私』が汚名をそそぐために、不毛な努力をするストーリーから名付けられた物だと思う。余談ですが撮影現場ではフィルムっぽい機材はあまり出てきていない。しかし編集や上映はフィルム(フィルム缶、そして金銭的限界を考えれば16ミリ)で行っている。そして小津や樋口師匠に絡まっているフィルムの量。このサークル、いったいどれだけの予算があるんだろう?

< 第2話に関して >

この回では『私』と小津を軸に、城ヶ崎先輩の設定紹介という作りになっている。もちろんストーリは『私』が主人公なので、その流れに城ヶ崎先輩の設定紹介が上手に散りばめられている。

下記の補足として、第二幕前半では義憤から城ヶ崎を告発しようとするが、小津と樋口師匠がからんで来て、中傷映画になってしまう。そんな流れに疑問を感じていた『私』だが、城ヶ崎に馬鹿にされ(中間点)、中傷映画作りに邁進する事(第二幕後半)になる。若干弱いような気はするが、第二幕の前後半は中間点を挟み、小津達に流されながら行動する『私』と、主体的に行動する『私』の対比になっている。

分岐点と概略

第一幕概略 「映画サークルに入った私が、」
第二幕への転換点(6m00s) 「城ヶ崎に利用された事に気づく」
第二幕前半概略 「城ヶ崎を告発しようとする」
中間点(12m30s) 「城ヶ崎に馬鹿にされる」
第二幕後半概略 「城ヶ崎の中傷映画を上映する」
第三幕への転換点(17m15s) 「城ヶ崎に追われる事になる」
第三幕概略 「映画サークルに入った事を後悔する」

第2話を分解

四畳半神話大系 第2話 パラダイム

1.私「これは!」
香織さん登場。第2話はこの香織さんが城ヶ崎先輩を説明する重要な存在になる。私「これは!」だけでは何だか分からないが、暴露上映でダッチワイフだと分かる。意外に思ったが、2話の中で『ダッチワイフ』という単語は出てきていない。

2.私「〜城ヶ崎先輩の元に忌々しい独裁体制が敷かれていたのだ」
城ヶ崎先輩が本格的に登場。すでに第1話の橋のシーンで1カット登場していた。その時の台詞は、城ヶ崎「この裏切り者が」と一言のみ。11話まで見れば、代理戦争を含めた台詞だと分かるが、第2話終了の時点では中傷映画の意味までしか読み取れない。ちなみにこの時に撮影していた作品のタイトルは『師弟出陣』とカチンコにある。これは想像でしかないが、城ヶ崎が弟子か師匠であるなら、『私』も結構大きい役だと思うのだが……

★.おきにいり / 6m00 (後述・クリックで移動)
ここで『私』が作った映画というのが、実は今後のストーリーと同じ物になっている。どこまでも続く四畳半に閉じ込められるとか『キューブ』のパクリなのだが、あまりのスケールの小ささに笑ってしまう。
・太平洋戦争から続く悪戯合戦〜(4話)
・人の女性の中で揺れ動く〜(6・7・8話)
・どこまでも続く四畳半に閉じ込められた〜(10話)

3.私「敵の先鋒、相島先輩は〜」
第一話に続き、相島先輩2回目の登場。しかしここでは城ヶ崎先輩の右腕といった紹介しかなく、おまけ程度の登場でしかない。本格的な登場は第9話まで待たねばならず、第3話からは登場すらしなくなる。

4.小津「それからこれ、城ヶ崎さんの成績表」
城ヶ崎先輩の成績表が出るが、よく見ると体育がD評価になっている。11話通して見た限りは、城ヶ崎は体育だけは得意そうな気もしないでもないが……そして黒く塗りつぶされている所が3箇所。二カ所はD評価だが、もう一カ所は評価自体も塗りつぶされている。もしかしたら、これだけは評価が良かったのかもしれない。そしておっぱいの表。2番あけみさんの備考に書いてあった、テリヤキチキンバーガーって何?あと仏飯とかもあり、大分失礼じゃないですか?

この流れで追記すると、私「それではただのおっぱい独裁者ではないか」と立ち上がった時に、後ろの暖簾から居酒屋の親父が顔を出す。その後小津がゴーヤをくるくると回し、おっぱいお形を作る。細かい所だが、こういった所に気が回る演出は素晴らしい。

5.物干し竿に干されているピンクの浴衣
自虐的代理戦争で桃色に染められた浴衣のワンカットが入る。2話では「相当な個人的確執のある人物」として樋口師匠が登場するが、小津も「師匠」と呼ぶだけで樋口の名前はまだ出てこない。

6.女子「まさか、壁におっぱい」
城ヶ崎はいったいどんな所に住んでいるのか?ママにお金を無心しているカットがあるので、一人暮らしなのは間違いないはず。3話で家の外観が出てくるが、見たところ一軒家のようである。持ち家なのか、賃貸なのか。壁におっぱいを貼り付けたりしている事を考えると、賃貸の場合、退去時にどうするのだろう。実際、室内もかなりの物がそれっているので、その辺は気にならないぐらいのお金持ちという事なんですかね。ちなみに上映作品の冒頭、プトレマイオス役で相島先輩が少しだけ登場している。

7.食い散らかされているカステラ
カステラが食い散らかされているカット。後で意味は明かされるのだが、このカットではカステラを中心に皿が三枚ある。しかし後に独りで四畳半を彷徨うことを考えれば、なぜここで皿が三枚あったのか。『私』が寂しさを紛らわすために、一人で会話をしながらパーティーごっこでもしていたと解釈出来なくもない。しかし10話では、一人黙々とカステラを頬張る『私』しか登場しない。

8.明石「約束ですよ」
第1話では「猫ラーメンに連れて行って下さい」とあるが、第2話では「さっきの映画を実現させて下さい」と、明石さんの約束の内容が第1話とは違う。猫ラーメンの方は分かりやすいので、ラストで回収されている事に必ず気づく。しかしもう一つの約束、映画を実現させて下さい。その映画の内容というのが「運命に結ばれた二人が、立場年齢性別を超えて結ばれるラブロマンス」なのだが、意外にこの約束を忘れていた。これもラストで回収される訳だが「運命に結ばれた」ヒロインは明石さんではなく、小津だという事が暗示されている。明石さんも映画を「完成」ではなく「実現」させて下さいと言い、作り手が丁寧に言葉を選んでいる事が分かる。そしていまさらだが、坂本真綾さんのCVが、明石さんのミステリアスさを消さずに、芯の強さを上手く表現していると思う。

9.私、橋の上で小津と口づけを交わす。
ここも11話・この作品全体のラストを暗示している。その後、私「そんなもんいらんわい」と台詞があり、空の映写が消える。そこに小さくて分かりにくいが、一匹の蛾が羽ばたいている。

画面には劇終の文字

これって元ネタはゴールデン・ハーベストですよね。四畳半を上手く使い、音もそれっぽいのが付けられている。この作品はこれに限らず「ミソギ」「自転車にこやか整理軍」等、サークル・団体のロゴが本当に良く出来ている。

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「四畳半神話大系」各話の考察

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