2013.05.28

「京都観光をして、下らない問題が下らない結末に帰結するだけの話」

四畳半神話大系 第4話弟子求ム

絵コンテ・演出:横山彰利 / 脚本:上田誠・湯浅政明

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薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時に状況に流され樋口師匠の弟子となってしまい、日々修行と称して無意義な言いつけを押しつけられていた。そんな中、師匠に最終試練として「幻の亀の子束子」を探すように命じられる。

第4話の主要スタッフ。絵コンテ・演出は横山彰利。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は伊東伸高。

以下は核心部分を含みます

『私』と同じ下鴨幽水荘に住む樋口師匠が何者なのかが明らかになる第4話。細かいネタがふんだんに散りばめられているが、正直な感想として、あまり出来の良い回ではないと思う。細かいネタが結局本筋にはつながらず、どこか内輪ネタ臭さを感じる。一話完結物としては面白いと思うが、何か違和感を覚える。詳しくは後述します。

< 第4話に関して >

主人公はもちろん『私』です。私のナレーションでも「この胡散臭いチラシの向こうに、いかなる栄光の未来も思い描くことは出来なかった」とあるように、全話を通して最も不毛な回。この回では『私』との関係を通して、樋口師匠の人となりが説明される。そのからみで城ヶ崎先輩や羽貫さんとの関係性などが、徐々に明らかになる。

中間点に関しては『樋口師匠の歌』とも考えたが、その後『私』が弟子を辞めるか悩む原因は、束子を手に入れられなかった事に起因するので、下記の様に解釈した。

分岐点と概略

第一幕概略 「樋口師匠に弟子入りした私が、」
第二幕への転換点(8m00s) 「亀の子束子を探せと命じられる」
第二幕前半概略 「亀の子束子を探す」
中間点(12m30s) 「束子は10万円だと言われる」
第二幕後半概略 「弟子を辞めるか迷う」
第三幕への転換点(17m20s) 「樋口・城ヶ崎の代理戦争に立ち会う」
第三幕概略 「代理戦争を引き継ぐ事になり後悔する」

第4話を分解

四畳半神話大系 第4話 パラダイム

1.NA/私「羽貫さんは樋口師匠の元に出入りしている謎の歯科衛生士である」
羽貫さん、第1話以来の登場。歯科衛生士という情報は出ていたが、この女性の名前が『羽貫』である事はここで分かる。ちなみに首から『歯』のペンダントをかけています。第1話で登場したときは、ペンダントのヒモ部分しか写っていない。

2.NA/私「〜本を返さない師匠を秘密の図書回収組織が狙っていた」
図書館警察が初登場。自転車整理軍の『コートの男』とは違い、言葉で説明していないので忘れがちだが、のちの『私』(第9話)もサーベルを下げ図書館警察の制服を着ている。

3.NA/私「城ヶ崎とは〜樋口師匠と同回生の色男なのだが〜」
代理戦争の仕返しに勤しむシーン。部屋にゴキブリをばらまいた後、城ヶ崎先輩の家の前で張り込んでいる『私』と小津。二階がゴキブリをばらまいた部屋の様だが、城ヶ崎の叫び声で3階の電気がつく。もう何度も書いているが、城ヶ崎先輩が住んでいるの建物は何なのか?もしかしてメゾネットタイプ?

4.私「これまでの師匠は色々な物を欲しがったが〜」
ここで京都の名産品・特産品、そして京都の街並みが次々と出てくるが、結局は単発ネタである。学生時代特有の、不毛なことに時間を使う感覚は分かるし共感できる。それに樋口師匠と『私』の関係性も上手く表現されていると思うが、この後にこれらの物が出てくる事はない。

5.私「師匠は私たちに修行と称して無意義なことをさせたが〜」
ここでも短いインサートカットが2つ。水着姿で外人にビーチの場所を聞くカットと、京都サンガの旗を持って大通りを走るカット。非常に面白いし、大学生の時は馬鹿で無鉄砲だから、こういうことはやるかもしれないと思う。しかしこのネタも結局は単発ネタでしかない。本筋に絡まなくとも、こういう部分を短いインサートでも構わないので回収して欲しかった。(追記:第10話で京都サンガの旗は回収?されてました)

6.小道具屋店主「十万円ほど頂きましょうか」
小道具屋店主の青帽子に「B!」のマーク。どこかで見たことがあるような気がすると思ったら、はてブのマーク。なぜ?と思ったがこの作品、株式会社はてなが協力としてクレジットされている。

7.鴨川で歌う樋口。
雰囲気もすごくいいし、歌もかなり印象的。束子を探していた時に『私』の頭上を飛んでいた鷹が、歌の終わりで遠くに飛んで行くことで、私「師匠がどこか遠い所に行ってしまう様な気がした」という感覚も分からないでもない。

歌の内容に関して。なんとなく意味が分かったので追記します。下記枠は前に書いた感想です。

しかし、一番首をかしげたのがここ。分かると書いたが、分かる様な気がするだけで、実際はあまり意味が分からない。馬鹿馬鹿しい意味不明なシーンやカットが、丁寧に積み上げられ、最後に一本につながるという所がこの作品の良さではないのか?それに対して、第4話はあまりにもネタに走り過ぎているのではないか?雰囲気だけで押し切ってしまう所に、すごく違和感を覚える。

意外に評判はいいですが、僕には1分20秒も使い挿入する意味が分からず、とても良いとは思えないです。歌詞に関してはなんとなく樋口師匠自身の事をにおわせつつ、実際は『私』がたどる今後を暗示している様な事ではないのかと感じる(第9話で樋口師匠と私が話す内容等も鑑みて)。

まずこのシーンの歌詞を全文引用しておきます。

君と丸になれぬなら さよなら三角 またきて四角
丸バツ三角 いつも四角 とかくは 四画四面の五画六画 七面鳥
丸を探して 丸を探して 丸になれぬの 学ぶため
どこにも無いかも あるいはあるかも 君かもしれぬ この鴨川で 丸を探して 丸を探して

ここで使われる「丸」というのは「薔薇色のキャンパスライフ」。しかし、実際どれだけ探しても「丸」は存在せず「三角・四角」と、世の中は雑多な形をしているいう事。ようするに、前回書いた通り『私』がたどる今後を暗示しているということで間違いなさそうです。ただ、この場合「君」は何であるのか?

ちなみに前記した鷹は、代理戦争のシーンでまた出てくる。鷹が飛び立つような演出をしておきながら(僕の解釈が間違っているかもしれないが)なぜ、後半でああいう使い方をしたのか?そして、その後の話には鷹は一切登場しない。歌の最中に出てくるイカとか将棋駒等も雰囲気もので意味が分からなかった。

★.おきにいり / 15m10s (後述・クリックで移動)
部屋に戻ると謎の軍資金。そしてこの後、『私』が「もちぐまん」に気づく。第3話までは四畳半の電球周りに蛾が舞っていたが、この回からはいなくなっている。つまりさまよっている『私』が通り過ぎた後であるという事が分かる。

8.私「自主破門させてもらおう」
自主破門という決して前向きではない決断なのに、この台詞回し。そして晴れやかな表情。まさにコメディの王道という感じです。そして第3話でも思ったが『私』の妄想(回想ではなく)に登場する明石さんが、実際のキャラクターと違い面白い。

問題はこの次の束子を渡すシーン。樋口師匠の頭の上に(多分鷹の)ヒナが乗っているのだが、どういうことなのか?前回の解釈を捨てて、ただ頭の上で鷹を飼っているというだけの設定(何かの暗示ではなく)であれば、登場する事に大きな意味はないので全く不自然ではない。しかし、それでは歌の終わりに飛び立つ鷹は、あまりに意味深過ぎるのではないか?もし何らかの象徴として出していたとしてら、あまりにも使い方が雑ではないのか。多分色々な考えがあっての事だとは思うが、これではただ思いつきで入れたと思われてもしょうがないと思う。

9.城ヶ崎「これが俺の後を継ぐうちの代理人だ」
橋の上での代理戦争の決闘シーン。小津がスパイだった事が分かり、なぜ城ヶ崎先輩に信頼されていたかが分かる。そしてここの引きのカットでバスが横切り、バスの車体に『あの名作がふたたび劇場で 劇場版 7つ子VSひとりっ子』の広告。こういう部分にストーリーに絡む何かがあれば良いと思った。これだとしっかり作っているとの印象止まりで、驚きや感動はあまり感じない。もしかしたら僕が理解出来なかっただけで、何らかの意味があるのか?個人的にはものすごく内輪ネタ的な気がするのですが……

10.樋口「しまなみ杯の賞金があるからね」
代理戦争の引き継ぎ後のシーン。しまなみ杯の話や、『私』が作った太平洋戦争から続く悪戯合戦映画の話を回収しつつ、羽貫さんとの世界一周・束子・英語・飲みに行くなど、この後への話のフリがしっかりと散りばめられている。

11.私「なにより小津と出会ってしまったのが一番の失敗であった」
小津と出会ったのがなぜ一番の失敗なのかが全く分からない。今回の話では樋口師匠に弟子りしたことが、一番の失敗ではないのか?

N/私「もう何が何だか分からない」

なんでご都合主義的に金が置いてあるのか、もう何が何だか分からない。それはこっちの台詞だよと思ったが、後にこの軍資金の意味は明かされる。この作品の良さは、こういった一見勢いだけと思える馬鹿馬鹿しい設定が、きちんと伏線として回収できている事だと思う。そして毎度の事ながら、CVの浅沼晋太郎さんの台詞回しが非常に上手い。

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「四畳半神話大系」各話の考察

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