2014.03.13

「この回をきっかけに主人公の考えが変わり、ストーリーが次に進みます」

四畳半神話大系 第9話秘密機関 福猫飯店

絵コンテ・演出:横山彰利 / 脚本:上田誠・湯浅政明

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薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時に様々な裏家業に手を染める秘密機関「福猫飯店」に加入する。しかし色々な組織へと配属されるが、失敗ばかりを重ねる『私』。そこで出会った小津は『私』とは対照的に、出世し続けていた。

第9話の主要スタッフ。絵コンテ・演出は横山彰利。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は牧原亮太郎。

以下は核心部分を含みます

久しぶりに勢いのある話。今までの登場した人物のほとんど(ほんわか教祖・ジョニー・景子さんは登場なし)が登場してきます。何度もみていると、6〜8話は飽きてしまうため、第9話まで来るとなんとも嬉しくなってきます。そして今回のレビューも小ネタ集のようになる気がします。しかも合ってるかどうかかなり怪しい小ネタ集。

< 第9話に関して >

もちろん秘密機関・福猫飯店に入った『私』が主人公。そして今までバラバラに登場していた情報が、秘密機関・福猫飯店を通してつながり、謎だった小津の全容が明かされる。またその過程で、描かれていなかった脇役、相島先輩の設定説明もある。

そしてこの回は今までと違い、『私』はどのような選択をしても薔薇色の未来はない、という思考の終着点に行き着き、「あの日(時)に時間を戻したい」という考えを放棄してしまう。つまり、全体の構成としては、第9話の終わりをもって、不毛な選択の繰り返しが終わり、第二幕後半に入る。

分岐点と概略

第一幕概略 「秘密機関・福猫飯店に入った私が」
第二幕への転換点(6m40s) 「出世で小津に先を越される」
第二幕前半概略 「様々な組織で失敗を繰り返す」
中間点(12m50s) 「自転車整理軍の総長になる」
第二幕後半概略 「成功を手に入れるが、薔薇色ではない」
第三幕への転換点(18m50s) 「小津に彼女がいた事を知る」
第三幕概略 「どのような選択をしても自分は駄目だと思う」

第9話を分解

四畳半神話大系 第9話 パラダイム

1.私「私の裏家業は自転車整理軍の総長」
この作品・全11話の中、ある程度台詞がある脇役で、詳しく語られることのない人物が二人いる。一人は自転車整理軍の軍曹。そしてもう一人は、冒頭のシーンで柱にくくり付けられているバードマンクラブの部長。このシーン、部長の脇で縛られている女性のTシャツに「UBC」の文字。多分「Kyoto(この部分は隠れている) University Birdman Club」の略。

2.NA/私「その他有象無象の非公認サークルを引っくるめて〜」
ナレーションで説明があるのは、図書館警察・印刷所・自転車にこやか整理軍の3組織。しかし中華テーブルには8団体のロゴマーク。特定できるのは下記の7団体。

  • 第9話登場の3団体(図書館警察・印刷所・自転車にこやか整理軍)
  • ほんわか(ハチのシルエットに「ほ」の文字)
  • 閏房調査団(「閏」の文字)
  • 詭弁論部(「詭」の文字)
  • 自虐的代理戦争(これは間違いの可能性あり。「代」の文字。後ろのイラストが左右に分かれている。ただ脳みそにも見えなくない)

そして問題は残りの「叡」。自信はないが当て推量で考えると、「偽叡山電車」(後ろにあるイラストが電車に見えなくもない)か? 森見登美彦さんの作品を全て読めば、また別の何かが分かるかもしれないです。

3.NA/私「樋口氏の姑息な逃亡に小津が裏で関与していると〜」
『私』は小津が邪魔をしていると思っているが、多分小津にそのつもりはない。しかし『私』は、小津がなぜそういった事をするのか知らないため、ただ邪魔をしていると思ってしまう。この時の小津の行動理由、2パターンの解釈が出来る。
<A>
小津は樋口師匠の弟子であるため、単に師匠への忠誠が全てに勝っているとの解釈。単純にこれが正解であると思う。
<B>
自虐的代理戦争が福猫飯店の一機関である(福猫飯店の「代」のロゴが「代理戦争」であるとの仮定より)との解釈。小津は『私』の邪魔をしているのではなく、相島が所属団体である「図書館警察」の邪魔をしている……考えすぎかも。

4.NA/私「〜偽造レポートを量産している組織である」
どうでもよい小ネタなのですが、上記のナレーション時の印刷所のモニター。映っているのは、今まさにこのシーンのシナリオ。二回目の鑑賞時に「もしかしてシナリオが映った?」と思い確認してみたら、やっぱりそうでした。ちなみにデスクトップには福猫飯店の各機関のアイコン。

5.小津「ちょ、ちょっと、そんなこと急に言われても」
この時の小津の電話。根拠はないが、断言します。相手は小日向さんで「五山の送り火を見るために、お父さんから飛行船を借りて」という内容。その後小日向・父に頼み込むが、断られてしまう。その結果、小津は福猫飯店を動かし、飛行船を盗む事を考える。その目的を達成させるため、相島を失脚させ、トップに上り詰める。そして第二幕後半は、純愛のためにトップに上り詰めた小津と対比させるように、不毛な成功を手に入れた私が描かれる。もう一度言いますが根拠はないです。

6.NA/私「明石さんから尊敬をえるため、城ヶ崎先輩をおとしいれる〜」
この相島の理屈、分かりますか?残念ながら、僕には分かりませんでした。明石さんが城ヶ崎先輩を尊敬しているという描写があったのなら、分かるような気がします。しかし第2話で城ヶ崎が声をかけられずにいたことを考えると、相島は何を思って尊敬を得ることが出来ると思ったのでしょうか。

7.樋口「世の中は薔薇色ではない。実に雑多な色をしているからね」
重要な台詞なので、20分の中で2回出てきました。そしてこの後の10話・11話でも出てきます。この樋口師匠の台詞が、作品全体のテーマになっています。薔薇色のキャンパスライフを夢見、平行世界を何度もやり直す『私』。しかしどんな選択をしても、薔薇色のキャンパスライフを手にする事はなく、今回のラストでは「何もしないのが一番だ」との結論にいたってしまいます。

8.羽貫「いいところで出会った。いっぱい付き合え」
羽貫さんに誘われて飲みに行くのだが、福猫飯店に入っている『私』が、なぜ羽貫さんと知り合いになっているかは、ストーリー上で語られてはいない。消去法で行けば、樋口師匠がらみで知り合った可能性が高い。そしてこの時の『私』、今までと違い、堂々とした態度で女性(羽貫さん)に接している。

これもどうでも良い小ネタだが、小津とよく行く居酒屋は「青ひげ」で、今までに何度か店名の書かれた、ちょうちんが登場している。今回羽貫さんと訪れた居酒屋(そば屋かも)は、千斗屋という初登場のお店。

★.おきにいり / 19m25s (後述・クリックで移動)
ここの冒頭で『私』が相島に拉致されている。細かい事だが、相島「飛行船でデートを計画している」という台詞の後で『私』が驚くカットがあるのだが、カットの切り替えが遅く感じる。多分『私』は瞬時に理解できなかったとの解釈であろうが、もう少し間を詰めてもいいのではないか。

そして、このシーン後半の編集。(1) 小津のアップ → (2) 飛行船の運転席ごしの小日向さん → (3) 塔で小津を待つ小日向さんアップ → (4) 小日向さんと小津の合流失敗 → (5) 落ちていく飛行船を見つめる私 → (6) 小津に恋人がいたの文字、とのカットつなぎだが、(4)から(5)・(6)へのテンポが悪く、若干気持ち悪い。

9.NA/私「どうあがいてもこうなるなら、何もしないのが一番だ」
いつもと同じように選択を誤ったと後悔する『私』。しかし今回は、あの日に戻りたいという台詞はなく、時間の巻き戻る時計台は登場しない。そして、どういう選択をした(選択をしなかった)かが、第10話で描かれる。

相島「打ち落とせ!」

ここは台詞というより、このジブリのようなシーン全体がおきにいりです。相島の台詞回しや、音楽の使い方など、王道ではあるものの、王道の演出ならではのよさがしっかりと出ている。よくできているからこそ、上記した前後の部分が、若干気になったりもしたのでした。

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「四畳半神話大系」各話の考察

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