2014.03.05

「新しい話は出てくるのですが、なんとなく総集編のように見えるのです」

四畳半神話大系 第8話読書サークル SEA

絵コンテ:清水洋 / 演出:藤瀬順一 / 脚本:上田誠・湯浅政明

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薔薇色のキャンパスライフを夢見る、大学三回生の『私』。入学時に一つにしぼるリスクを回避するため、三つのサークルをかけもちすることにする。その中の一つ、読書サークルで不毛な日々を過ごしていた私は小津から借りた本に女性の名前を見つる。『私』はその女性との文通を始め、自分を良く見せるために嘘に嘘を重ねていた。そんなある日、突然会いたいとの手紙。しかし『私』は同時に別の女性とも約束をしていた。

第8話の主要スタッフ。絵コンテは清水洋。演出は藤瀬順一。脚本は上田誠・湯浅政明。作画監督は伊東伸高。

以下は核心部分を含みます

今回は小ネタ集のような形となってしまい、非常に不本意なレビューです。言い訳がましいですが、第8話は6話と7話のネタを繰り返しながら回収し、新しい出来事が起こりつつ一区切りという内容で、見たままなんですよ。それに(ひさしぶりに明石さんが登場したので点数は高めにしましたが)構成があんまりよくないんですよ。5分の内容に今までの焼き直しを15分付け加えた感じで、主人公の感情の変化も弱いんです。まあ、ただの言い訳ですけど……

3人の女性の中で揺れ動く『私』を通して、景子さんの事が描かれる第8話。ひさしぶりに明石さんがストーリーに絡んでくるので、何となく安心します。しかし、全11話を通して考えた場合、6〜8話はこれでワンセットになっていて、本筋とはあまり関係がない。第6話で描かれた、樋口師匠に対する羽貫さんの気持ちがどこかで描かれれば、3つの話は必要ないのではないのか。まあ11話の放送枠があるので削る訳にはいかないのですが。

< 第8話に関して >

この回は『私』が3人の女性の中から景子さんを選ぶという設定で、景子さんの人物象(というより『私』の勝手な妄想)が描かれる。そして前回、前々回で登場した小ネタを、この回できっちりと回収。

第8話の構造。若干後ろにずれているような気がしたが、景子さんからの合いたいとの連絡を、中間点と判断。主人公はもちろん『私』であり、軸が景子さんである以上、この解釈が順当ではないのだろうか。

分岐点と概略

第一幕概略 「出会いを求めていた私が、」
第二幕への転換点(6m00s) 「景子と文通を始める」
第二幕前半概略 「自分をよく見せるために嘘をつく」
中間点(14m00s) 「景子さんから合いたいとの連絡」
第二幕後半概略 「景子さんに合うことを決める」
第三幕への転換点(17m30s) 「景子さんは小津だった事を知る」
第三幕概略 「選択を間違ったと後悔する」

第8話を分解

四畳半神話大系 第8話 パラダイム

1.私「絶望のサルガッソ」
冒頭の『私』が航海をしている本の海。背景にあるその本にはノーチラスの文字があるため「海底二万海里」であると分かる。その後に出てくる「太平洋ひとりぼっち」も本のタイトルからとった台詞であるはず。上記した「サルガッソ」だが、「バミューダトライアングル」と並ぶ魔の海域・船の墓場。多分迷信。もちろん「海底二万海里」にも(記憶違いでなければ)登場したはず。

そして、図書館には何故か相島の姿。第9話で明かされるが、相島は図書委員長でもある。なぜ図書委員長なのかは、左腕の「図書館警察」の腕章を見れば理解が出来るであろう。

2.小津「愚にも付かぬ青春小説ですが〜」
森見登美彦さんの「夜は短し歩けよ乙女」。一応、読書サークルに入ったらという設定でもあるので、物語のきっかけはちゃんと「本」になっている。

3.私「〜最後のページに美しい筆跡で住所と名前が書いてあった」
第6話では台詞でのみ確認が出来た、景子さんの「樋口」という名字。第7話では、封筒の裏面が写り「樋口」という名字と、浄土時という住所が漢字で確認出来る。そして今回も、本には名前と共に、浄土寺という住所が確認出来る。

★.おきにいり / 4m50s (後述・クリックで移動)
居酒屋で話をしている『私』と小津。小津はお酒が飲めない(羽貫さんの情報)ので、ソフトドリンクのような物を飲んでいる。このシチュエーション、お酒が飲めない小津が居酒屋に誘うという事は考えにくく、『私』が居酒屋に誘った(もしくは場所を決めた)のだろう。そう考えると小津の『私』への想いより、『私』の小津への依存の方が大きいような気もする。

4.景子「実は私も、子供を元気づけるヒーローは大好きなのです。〜お恥ずかしいのですが」
景子さんの手紙は、小津はすぐに飽きてしまい、明石さんが代筆していた。また三幕で、明石「もちぐまんは本当に好きなのです。お恥ずかしいですが」と語っていたので、この頃のやりとりは明石さんが書いていたのは間違いない。今までの回では、明石「これはもちぐまんと言って〜」と説明はしたが、その後に「恥ずかしい」とは言わなかった。しかし、今回初めて「お恥ずかしい」と付け加える。そう考えると、かなり丁寧に台詞を組み立てていると思う。

5.羽貫「浄土寺の〜砂糖菓子のようなマンション」
羽貫さんから教えられる小津の住んでいるマンション。景子さんの住所が浄土時である事は、すでに2回画面に写っている。食い入るように見ていた人は、景子さんの正体はここで完全に分かったはず。

6.私「明石さんではないか」
浄土時のマンションから出てくる明石さん。初回鑑賞時に僕は、明石さんと小津が付き合っていると勘違いしてしまった。その理由は、第1話の、樋口「明石さんとの縁を誰かと結ぼうと〜貴君か小津君かのどちらかだ」。第6話の、羽貫「小津君、彼女が入るらしい」。この2つの台詞から、勝手に勘違いをしたのです。

7.壁に貼られる『私』の様々な設定
映画ネタが張ってあったので抜き出し。

1. 8 1/2
2. 突撃
3. ノスタルジア
4. ブリキの太鼓
5. バグダット・カフェ
6. パリ・テキサス
7. ストレンジャー・ザン・パラダイス
8. 船艦ポチョムキン

これが何だったのか思い出せない。確か90年代の後半に、これと似たランキングを見た記憶がある。なぜそんなことを思ったかというと、フェリーニの「8 1/2」が1位に来ているから。何かのランキングで「8 1/2」が1位に来ていて、へー?と思った強い記憶がある。ただ定番の作品が入ってないので、スタッフの誰かが選んだランキングという可能性もある。まさかとは思うが、眠くなる映画とか不名誉なランキングだったりして⋯⋯

8.私「最悪のルール違反ではないか。断じて出来ない」
この台詞の次カットで浄土寺のマンション。こういう勢いのあるカット割は好きです。そしてここで出てきたジョニー。いったい何を期待していたのだろうか。

9.私「小津とどこまでも落ちていく運命なのだ」
第1話では日本海溝だったが、今回はマリアナ海溝。そして「そう思うと〜ほっとしてしまう私がいた」と続く。しかし、ほっとするのは小津も『私』と同じように無為な日々を過ごしていると思っているため。この部分が、この後の第9話・三幕部分にかかってくる。

小津「この桃色筆まめ野郎」

「筆まめ」という単語が気になったので。米TVドラマ『The West Wing』の吹き替え版で「どうして嫌な奴ほど筆まめなんだろうな」という台詞がある。その時は「筆まめ」は「ペンだこ」的な意味だと思っていた。しかし、ふと正確な意味は何なのか疑問に思う。辞書で調べてみたら「筆不精」の対義語、まめに手紙等を書く人のことらしい。漢字で書くと「筆忠実」。「筆不精」はたまに聞くが、年賀状ソフトのイメージが強く「筆まめ」はあまり日常では聞かないような気がする。

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「四畳半神話大系」各話の考察

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